第40話 進み行く協力6
地獄変における属性アップを有効に活用できるモンスターが未だいない。これは俺が見出せていないともいえるし育てられていないともいえた。なので、俺の責任でもあるのだが。
そんな状況だったので、鎌次郎が『地獄巡り』に赴くに際し、モンスターを貸してくれることになった。『無勝堂』における鎌次郎の存在も知れ渡ったようで、プレイヤーが不動明王を連れて来ることが多くなっておった。鎌次郎にとっては、新たな活躍を求めてであった。
連絡係をしてくれておる鉄チンによれば、『地獄巡り』のマスターは、そんなの無しに貸すよと言ってくれておるようだが。俺としては、そこはこだわりたかった。互いに対等な関係でありたいのだ。
鉄チンが連れて来た『地獄巡り』所属のモンスターといえば、まんまクラゲだった。色も無色透明である。ただ、空中に漂っているのだけが、異なる。頭から垂れ下がる足の一本がちょうど良い位置にあったので、「よろしく」と言って、その足を握る。
「待って」と鉄チンの声が聞こえるのと、俺の体を痛みが貫くのは、ほぼ一緒であった。電気? あのゲームの属性に電気などなかったぞ。
「電気って、属性だっけ」
「雷よ」
「おお。そうか。鉄チンって、そんなことまで知ってるんだな」と納得する。鉄チンが得意げに見えるのは気のせいか。
地獄変部屋に案内し、扉を閉める。先ほど懲りた俺は入らぬし、鉄チンも入らぬ。鉄だからな。俺以上に電気通っちゃうよな。
たいして時を置かずに、ゴロゴロと鳴ったと想うと、強烈な音と衝撃に見舞われる。まさに、すぐ近くで雷が落ちたのと同じ。俺、シッコ、チビったかもしれん。遠くに『ポチ』(見た目、まんま柴犬)の悲鳴が聞こえる。
「あのとき、触ってて良かった。あれが無かったら、俺、部屋に入っていたかもしれない」想わず、独りごちていた。
女神様がつけた二つ名はクラゲンゲ。そして、そのクラゲンゲは俺のダンジョンに新たな勝ち筋を加えてくれた。
それは良かったのだが、一つ、問題というか、あれっと想うことがあった。本来、勝つと、レベル1モンスター1体のアビリティ・アップ、加えてレベル0モンスター1体が新たにレベル1になる。それが無かった。
強い効果を持つ地獄変ゆえのしばりと考えられる。鉄チンに聞いて来てもらう。すると、地獄変ゆえではなく、マスターが部屋の中でともに戦う必要があるとのこと。
ああ。そうか。確かに、俺、いつも一緒に戦っていたな。
女神様や他のレベル1モンスターの視線が厳しい気がするが。いやいや、雷は無理だって。だって、俺、子供の頃から怖くて、すぐシッコ、漏らすし。誰しも苦手なものって、あるだろ。
との内心を抱えつつ、こわがり仲間のポチと互いに慰めあうのだった。