第38話 進み行く協力5
鉄チンが来て言うには、無勝堂でもレベル0モンスターを預かると決まったとのこと。そして、鉄チンはそのことを伝えに、このまま地獄巡りに赴き、再びそこに留まるという。
「そうなんだ。連絡係も大変だね。ご苦労様」と俺。
「大事な役目ですから。何か伝えたいことがあれば、おっしゃってください」
「『地獄変』について、ありがとうと伝えておいて欲しい。とても感謝していると。まずは、それだけだね」
「もし、追加で何かありましたら、三助君を送ってください。私はスライムの言葉も分かりますので、マスターに通訳します」
「お心遣い。ありがとう。そうさせてもらうよ」
久しぶりに話した鉄チンはどこか自信ありげに感じられた。三助の場合は戦闘で役立ってくれた。最初に鉄チンが来た時、そのことを伝えると、鉄チンは戦闘で自分を活かす場を見だせなかったと、少し寂しそうに悔しそうに言っていた。そこら辺はマスターの戦い方との相性もあるからと、一応、慰めてはみたが、あまり納得している風ではなかった。ようやく、彼女の多言語のアビリティを活かせる場を見つけられたということなのだろう。
鉄チンの報告を受けて、女神様が『地獄巡り』所属のレベル0モンスターのおよそ半数を連れて、『無勝堂』に赴くことになった。彼女いわく「桃先輩に久しぶりに会いたいし、あの子たち各々(おのおの)の癖や注意点なども伝えなきゃいけないし」と。
以前、桃というのは名前なの? と尋ねると、あなたの運ゲー野郎と同じ二つ名よ。私がつけたの。まるで桃みたいなオッパイをしているからとのこと。
俺は、その桃先輩に未だに会ったことがない。しかし、その刺激的な由来を聞いて以来、ついつい良からぬ妄想に頭がうつつを抜かしてしまう。まあ、そもそも俺が付けた二つ名ではないし。意外なことに、彼女いわく、「そう呼ぶと、とても喜んでくれるの」とのこと。自慢のオッパイなのだろうか? 見てみたい。俺って、やっぱ、おっぱい星人?
残された俺は、地獄変でのテストに戻る。いろんなモンスターを入れてみて、何かの能力が顕現しないか、このところ、試している。
そもそもまったく顕現しない者もいる。
最初の日の鉄チンがそうであった。
他には、催眠魔法を使う『瞑眠』など。部屋の中でも相変わらずあくびが出る程度であった。恐らく、そもそもが無属性の魔法だと、こうなるのだろう。
また、顕現があっても、すぐに戦闘には役立ちそうにないものばかりであった。ミイラ蛇はその体に巻く包帯が余るほどに伸びた。シャクトリンゴは体中からキノコが生えた。
何はともあれ、根気強くやるしかない。