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第37話 希望2

 しばらくして、鉄チンが帰って来た。無勝堂に戻るという。女神様が出迎えなかったのを不審に想ったのか、蓮華様はどうされましたと尋ねて来る。


「レベル0モンスターがいきなり増えたからね。3~4倍近くって言ってたかな。まさに、てんてこ舞いというところらしい。なので、出迎えは俺に任せるとのことだったよ。もちろん、鉄チンに会えないのは残念と言ってたよ」


「レベル0モンスターの受け入れについては、無勝堂でも分担できないか、召喚師様に相談しようと想っています」


「そうしてくれるとありがたいな」


「そう。そう。あちらのダンジョンからプレゼントがあります。それを預かって来ました。マスターはレベル0モンスターを引き取ってもらったことを何より喜んでおりました。そのお礼とも言えますし、これからの末永き友好のためとも言えましょう」


「何か、すげえもの、くれるのかな?」

 想わず、俺はそう口に出していた。


 鉄チンに一本の腕が生じ、体に生じた穴から、二体の像を取り出した。変形自在なスライムゆえだが、いつ見ても、ドッキリしてしまう。


 見ると、人の前腕くらいの大きさで、牛頭人身と馬頭人身が一体ずつ。何か変なのくれたな。さすがにそれは口に出せぬ。


「どこか空き室はありますか?」


「それを飾るのかい? あとは俺がやっておくよ」


「違いますよ。空き室にこれを設置すれば、そこに向こうのマスターのアビリティが及びます」


「俺の『隠し通路』みたいなものか?」


「向こうでは、『地獄変』と呼んでおりました」


「ずいぶん、物騒そうなアビリティだね」


 俺たちは地下2層の空き室に移動した。まあ、地下3層をのぞけば、空き室ばかりなのだが。鉄チンは部屋のほぼほぼ中央に2体の像を置く。何も起きない。


「これで終わり?」


「説明を聞いた限りでは、そうですわ」


「何の効果が生じてるんだ?」


「モンスターの能力が向上するそうです」


「そうなのか? 鉄チンはそれらしき変化を何か感じるの?」


「何にも感じませんわ」


 俺が変化を求めて部屋を見回しているとき、ピヨとの声とともに、鉄チンが悲鳴を上げた。見ると、鉄の肌の一部が赤熱している。どうやら、犯人はピヨ丸らしい。あいかわらず、鉄チンの上がその居場所だ。


「ピヨ丸のアビリティもレベルアップしたんだね」


「そんなはずありませんわ。向こうにいる間も、ずっといい感じで、私の体をあたためてくれていましたから」


「とすると、この部屋の効果ということか? 属性アップか? えっ? さっき地獄とか言ってたよね。もしかして、ダンジョンの名前って、『地獄巡り』?」


「その通りですわ。ご存じですの?」


「属性アップで有名な、難関ダンジョンの一つだよ。三助の奴。よくそんなところに入ったな」


「すごいんですのね。すると、その効果もすごいのかしら?」


「効果はまさにモンスター次第だよ。属性純度の高いモンスター。例えて言うなら、火そのもののイフリートや、風やかみなりの化身たる風神雷神。こいつらが入ったら、まさに手に負えない」


「なるほど。そうしたモンスターがいるならば、ということですね」


「そうだね。俺のダンジョンはすぐにこれだという奴はいないな。この部屋に入れて、様子を見てみるしかないな」


「私の方でも同じように試す必要がありますね」

 そう言い残して、鉄チンは去って行った。無勝堂も同様に地獄変を1セットもらったとのことだった。


 モンスター次第とはいえ、俺はワクワクしたものを感じずにはおれなかった。モンスターの貸し借りだけではない、何かダンジョン連合のもう一つの形が見えて来た。ダンジョン・マスターのアビリティの共有。


 己自身を省みて明らかなのだが、マスターのアビリティは制限されている気がする。俺って、未だに二つだし。硬化と隠し通路のみ。


 しかし、こうやって、他のマスターとアビリティの共有というか――共同使用と言ってもいいが――それができれば、そこの制限を大きく崩すことができるはず。

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