第31話 進み行く協力4
「でも、ずいぶんとよく向こうに行くね。そんなに楽しい?」
いつも通りに負けて――
このところ敵が初戦から不動明王を採用することが増え、勝率はぐっと下がっておった。ミーたんが活躍して、初戦、勝つを得たとしても、再戦時、敵が魔法使い以外のキャラ――弓使いが最も多かった――を採用した場合、こちらにはもう勝ち筋がなかった。
――そうして、復活をし、くじを引いて残念の結果が出たあとのこと。少し気になっていたので尋ねてみたのだ。相変わらず近いな、としか想えぬ距離にいる彼女。その見つめ返す黒瞳のまっすぐさにドキドキしてしまう。
「学校の先輩なの」
「学校?」
「召喚師を育成するための学校よ」
「案外、ちゃんとしているんだね」
彼女は腑に落ちなかったのか、小首をかしげてみせる。とても可愛らしい。俺を惚れさせるために、わざとやっているとしたら犯罪だぞ。何せ、俺はもう惚れてるから。その己の口に出せない戯言まがいに呆れつつも、一応、まともなことを言わんと努力してみる。
「俺の前の世にも学校があってね。同じような制度がこちらの世界にもあるんだと想って」
「それはそうよ。生まれながらにして召喚師なんて人はいないわ」
「とすると、市とか町とかが運営しているの?」
「し? まち? 運営政府よ」
運営政府と聞くと、どうしてもあの巨大猫の阿呆振りが想い出されていけない。少し前まで、その超小型版ともいうべき『屁こき野郎』(見た目は白い子猫そのもの)が、彼女の接近禁止令にかかわらず、隙あらば少しでもその間合いを詰めんとこちらをうかがっておったが。今では誘惑に耐え切れず、コップに頭を突っ込んで抜けない状況となっておった。
まあ、でも学校があるからといって、ちゃんとしている訳でもないか。想い出したくもない先生や同級生の顔がちらつき、急ぎ話題を変える。
「向こうで、どんな話をしているの?」
「ほとんど、あの子たちについてよ。分からないことばかりなの。お互いの話をすると、なるほどと想う
ことも多いし、新しく知ることも多いの」
うーん。ここでも俺は先を行かれているのか? 情報交換の重要性は分かっているし、だからこそ三助を発したのだが。しかし、マスターだけはダンジョンを離れられぬとなれば、いかんともしがたい。