第3話
ただ、俺はまた目覚めた。やはり、彼女が上からそのつぶらな黒い瞳で見つめている。しかし、今回は額へのキスは無いらしい。そして、俺は頭に手をやる。どこにも怪我らしきところは無い。その様を見てであろう。
「大丈夫よ。殺されても、生き返るわ」
「おお。ありがてえ。そこはやっぱりゲーム世界だからか」
なら、今度はこちらが動く番だ。そのために、彼女に聞くことがあった。二つ。まずはこちら。
「このダンジョンは一階なの? できるだけ、深いところで迎え撃ちたいんだけど」
「この下は無いわ」
そうか。想わず、ため息が出そうになる。とても残念ではあるが、ある程度は予想していたことではある。まあ、そこは仕方ないと、己を納得させてから、もう一つの問いへ。こちらこそ、プレイヤーを迎え撃つために必須といえるもの。
「武器はあるんだろう。見せてくれない」
「無いわ」
なんと、俺の希望のあっさりと打ち砕かれることか。
「それより、これを引いて」
そう告げられ、八角形の断面を持つ壺のごときものが目の前に差し出される。確かその中にはたくさんの細い長棒が入っていて、一本引けばいいんだな。そう、これって、プレイヤー側にはなじみのもので、ステータス上昇やアビリティーが獲得できるクジだ。
手を壺の中に差し入れ、一本の細い棒を取り出す。すると、そこには記号が刻んであった。残念ながら俺には読めない。ただ、ワクワクは消えない。俺はそれを彼女に手渡す。
「攻撃力」
おお。いいぞ。
「一%上昇」
何だ。それ。プレイヤー側なら、最低でも十パーはあったぞ。何だ。この絶望的な設定。圧倒的な不公平は。
彼女が部屋に戻った後。そうして、たいして時も経ずに、斜め上方から音がした。
俺。また死ぬのか?
今度はわざわざこちらから動く気もしない。
そして扉が開かれ、そこにはやはり革よろいの男が。ただ、違いはあった。その手に持つ獲物は長槍であった。
これって、最悪じゃねえか。俺って、殺されるために復活するようなもんじゃねえか。結局、何でもプレイヤーのためってことかよ。
やはり俺は死んだ。