第29話 進み行く協力2
隠し通路が通じたので、行き来するモンスターのためのルール作りが必要と考え、どうするのが最善であろうかと頭を悩ましていた俺であったが。いそいそと向こうに赴いていた女神様から事後報告があった。あちらの召喚師と話して決めて来たとのことで「あの子たちは自由に行き来させることにしたわ」と。一応、次の如く付け加えてくれた。「もちろん、敵と戦うモンスターについては、マスターの許可を前提としてね」と。
俺はそれで文句がある訳でもなかったが。ただ、ダンジョンの本当の主って、マスターではなく召喚師なんじゃないのとの常々抱いている疑問がやはり頭をもたげる。まあ、たとえ、そうであっても、やはり文句がある訳でもなかったが。
ということで、向こうのモンスターを見かけることが、めっきり増えた。今も食事に用いるテーブルの上にちょこなんと一匹おる。あの運営政府の使者様そっくりで、大きさだけを子猫サイズにした感じ。というか、見た目はまんま白の子猫である。果たして、これが成長したら、あれになるのか。それとも近い種というだけなのか? そこは定かではないが。
穴を見つけては頭を突っ込んでみて、抜けなくなるところまで、そっくりである。そして、ひと騒動のあと、何とか、自力で――時には他の者の手助けのおかげで――抜けるのだが。さすがに、まだ、小さいゆえか、それとも、あれも一種の獲得アビリティなのか、ホールが何たらの下品ムーブはしておらぬ。ただ、しばし屁をこいてみせるので、油断大敵である。
というか、既にその兆しはある。そのモフモフを楽しもうと顔を近づける女神様――その鼻づらに、わざわざ尻を押し付けて、見事、直屁をかましてみせた。果たして、『屁こき野郎』――ねえねえ、何でそこで野郎ってつけるの? 女神様――との二つ名をたまわり、更には本ダンジョン初の接近禁止モンスターに指定されるに至っておるのだから。