第31話 3つのアビリティ2
(視点はタナトスです)
そして、動き出したダンジョン蓋も、あの退場騒ぎはどこへやら、あっさりヒュプノスの1等を認めた。
「よう。何かあったのか?」
気になり、俺は尋ねてみる。
「ペロペロという者に出会った」
ペロペロ? 名に聞き覚えがあった。
「女王は知っているのか?」
双六の盤面上にいる俺とその外におる女王とは離れておるが、あの遠話という奴で聞いておるはずだった。盗み聞きされるばかりでは面白くない。こちらも使わせてもらう。
「我らが侵攻したダンジョン中のマスターの一人だ。確かランダム配置という厄介なアビリティを持っておったはず。恐らく旧第3はそれを活かそうとして呼んだのであろうが、ヒュプノスが浮かんでマス目の効果を無としたので、その必要もなくなり、別用に、つまりダンジョン蓋封じに急遽用いたとか、そんなところだろう」
「双六にランダム配置が使えるのか?」
「一種の近道だからな。例えば、あの経路が3つに別れておるところ、その遠路になっておるところにこれを置けば、一見、遠路ながら、近道となりえる。しかも、遠路の途中に1マス、ゴールに1マスとランダム配置を置けば、なお、一層となろう。ただ、運の要素が入り込むのは否定できぬな。遠路中のそのマスに止まる確率は6分のⅠ。遠路に置くマス目を多くすれば、止まる確率は上がるが、これはこれで問題がある。ゴールの方に飛んでくれれば良いが、遠路の他のランダム配置のマスに飛んでしまうこともありえる。どこまでいっても100%にはならぬ。
それにそなたらにどうやって遠路を選ぶべきと伝えるかの問題がある。旧第3は喋れぬからな。いくら、我が1を知って10を知るタイプだといっても、さすがに事前にそれを察するのは無理よ」
結局、こいつ、自慢したいだけなんじゃねえのと想いつつ、気になることを尋ねる。
「やっぱり旧第3は話さないのではなく、話せないのか」
「そうだ。我がそなたらと話せるのは、3つのアビリティのうちの1つとして、これを選択したからだ」
「もう1つはあれだったな。確か、俺たちがこれに関われるようにしたと」
「そうだ。我らの世界は、派生元のゲームに従属しておる。これは理である。通常なら、理は理の次元で変えなければならぬ。そんなことは通常、無理である。それで、これを勝負の形式へと変換し、そなたらの参戦を可能とし、勝てば独立を果たしうるとした。我としては『理の顕現』とか、そのような表現を好むがな」
なんか、偉そうなんだよなとの想いは口に出すのは控え、代わりに聞く。
「最後のは何なんだ。確かに1番目も2番目も重要と想えるアビリティだ。となれば、3番目はより重要ものなんだろう
「知りたければ、勝ち抜いてみよ。そなた自身、どうなるのか、楽しみと言うておったではないか」
「お楽しみは、最後まで取って置くという訳か。なるほどね」
「それより、今回はヒュプノスの策――そう呼んで良いかは確証はないが――それが、旧第3の仕掛けを上回ったということであろう。弟を褒めてやれ」
「えへへ。やった」
いつの間にか、かたわらにヒュプノスが来ておった。何せ、褒められるの、大好きである。敏感に嗅ぎつける。
「タナトス。褒めてくれないの?」
上目遣いに甘えてくる。
「お前のおかげで勝てたよ」
そう言い、金色の巻き毛をなでてやる。
「わーい」
可愛らしいヒュプノスの顔が喜びに崩れた。




