第29話 お遊戯2
ダンジョン蓋は見えているものが変わったのを知る。目の前の有翼の2体は消失しておった。そればかりか、ブロッコリー君たちも、そして双六をなすべきマスが描かれた地面そのものも、天の月も。
周りは漆黒の虚空に戻っておった。そして無数の球が浮かんでおる。その各々の球から更にたくさんの球が湧き出る。球はさまざまな色の光を帯びておった。その光球がかたわらを過ぎるとき、その表面にもその内部にも、無数の動くものが見えた。
やがて、己はその一つに呑み込まれた。その光球が伸縮自在なのか。それとも、遠近感が喪失しておるために、小さく見えただけなのか。呑まれてみれば、案外、大きい。中にも光が存在するが、表面がもっとも輝いて見える。ただ、己がその中心に引きずり込まれておるのか、表面はどんどん遠ざかって行く。様々な姿の動くもののかたわらを通り過ぎ、果たして中心に至ったのか、最早、光球の表面は判別できない。ただ、『無限』との言葉が心のうちに浮かぶ。
また見えるものが変わった。己は再び漆黒の虚空の内におった。そして、見えているものは自分自身――蓋の姿であった。持っておったカードは失われておったが、生えた両手は未だ残っておった。その両手から光球が出て来た。両手のみではない、頭に当たる部分――つまり上から、そして尻に当たる部分――つまり下からも。そうして、己の体それ自体は、光球を出しながら、くるくると回転しだす。ゆえに、出て来た光球群は渦をなした。
更には、己の姿が増殖して行く。ただ、その体から出ているものは同じではない。明確な形――三角錐や立方体――を持つものもあれば、ぐにゃぐにゃの不定形なものもあった。やはり、『無限』という言葉が己の内に浮かびかけるが、それを邪魔するように、いきなり声がした。
「お客人。楽しんでいるかな」
「誰?」
「ぺろぺろ」
「今、見えているものはあなたが造り出したのか?」
「半分は我。半分はそなた」
「俺が半分? 自覚はないのだが」
「己の本質というものは、ときに自分自身にとって最も理解したがきものゆえだろう」
「あなたには分かるのか? 分かるなら、教えてくれ」
「これはあくまで我の見立てであるが、『派生』もしくは『派生による世界の生成』」




