第28話 お遊戯1
ヒュプノスは、既にスタート地点でうずうずしておる。どんだけ遊びたいんだと想わざるを得ぬ。タナトスはそこに向け歩いて行く。動いてみれば、連れ添うように影も従い、それで己の体を青白き光が照らしているのに気付く。あらためて上を見上げる。
「あれは残ったのだな」
とかたわらの女王に言う。闘技場の中天から煌々と照らしておった月である。
「ふふ。我の趣味じゃ。それくらいは楽しませてくれ」
「あれを見ると、血を想い出す。まったく、どんな悪趣味なんだか」
「いやか。ならば、これでも我は良いぞ。これはこれで興趣がある。自発光モードだ。ほれ」
すると、己と女王の体が点滅する。
「タナトス。見て見て。僕の体、ピカピカしてる」
ヒュプノスの喜びにあふれた声。
「どうじゃ。ほれほれ」
なぜか、こっちも喜んでいるようで、それが伝わって来る。
「止めてくれ。下品すぎる」
「そうか。残念じゃのう。ヒュプノスは気に入ったようだがな」
その相手をする気もなく、あとは黙して歩き、スタートに立つ。どうやら、敵さんはブロッコリー君4体らしい。そのブロッコリーそっくりの頭を見下ろす。そこは肌も触れ合わんばかりのすし詰め状態であった。これ幸いとヒュプノスはその頭を触ろうとして、怒られておる。
「へい。みんあ。俺は人気DJ(作者注;昔はラジオで話す人をDJと呼んだのです)転じてレフリーだぜ。さあ、ゲーム。スタートだぜ」
ダンジョン蓋であった。いつの間にか、両手が蓋の両脇から生えておった。その手に持って差し出すは、サッカーボールならぬ同じくらいの大きさのサイコロ。
「ねえ。僕が1番でいい。ねえ」
と言いつつ、ヒュプノスはそれを受け取る。他の者の答えを待つことなく、両手でえいとばかり投げる。サイコロはコロコロと転がり止まる。
「わーい。5だ」
そうしてパタパタ5マス分、進む。
するとピッピーとの笛。これまたダンジョン蓋。どうも飛んでいるのがいけないらしく、戻ってもう1回やり直しをさせられる始末。
戻りかけるその背中に向けイエローカード。更には「もう1回やったら、退場だからな」とはレフリー気取りのダンジョン蓋。
ふてくされ顔でもう1回、サイコロを投げるヒュプノス。
「ちぇ。1だ」
ただ、ここで仕方ないから歩くとはならぬのがヒュプノス。当然の如くパタパタと1マス目に移動。浮いておる。
ピッピー。笛が鳴る。ヒュプノスの目の前にイエローカードが出される。ダンジョン蓋はそれをレッドカードに替え一言。「退場」
俺は想わずブロッコ―リー君たちを押し分け、前に出る。
「待ってくれ。それは無いだろう。こっちはそもそも数が少ないんだ。1人減ったら、4対1だぞ。それに浮いてたっていいだろう。進むマス目の数は守ってるんだ」
すると、相手はヒュプノスに向けていたレッドカードを俺に向け、やはりひとこと。「退場」
「おいおい。冗談はよせよ。これで敗北なのかよ。撤回してくれよ」
怒鳴るのは嫌いだが、声は自ずと大きくなる。
相手は何かを言い返そうとしたが、そこで動きが止まる。何だと想い、女王と旧第3の方を見る。女王に動きはないが、旧第3がコクコクしておった。




