第26話 三つのアビリティ1
「レディース&ジェントルメン。みんなの大好きなダンジョン・ブタだぜ。こっから、新たな段階に突入するぜ。遊園地からお遊戯へと。みんな、準備はいいかい?」
そうがなる者は、確かにダンジョンの蓋の姿。
彼の言葉通り、遊園地ともども派手な電飾も消え去る。ただ、その明るみの余韻の中で会話をする2体がおった。
「なんか、あいつ、復活したみたいだぜ」
とタナトスのかすれ声。
「我の預かり知らぬところ」
とは女王の男女2声。
「なら、やっぱりあいつか」かたわらの巨大白猫が頭をコクコクさせるのを見て、「コクコクマンとでも改名した方がいいんじゃねえか」
タナトスのひきしまった体と閉じられた黒翼を汚しておった血は、闘技場を出ると共に消えておった。敵の血が消えるは当然としても、己の血が消える道理は無いから、あれだけの戦闘をしてキズひとつ負わずに戦い得た証でもある。にもかかわらず、彼の顔にかすり傷が残り、うっすら血を滲ませるは、あえてギリギリでかわすを楽しんだゆえである。
「やめてくれ。そんな名前。まぎらわしくなるだけだ」
と、ずっと黒いのっぺらぼうのスライム姿のままの女王。
「でも、あいつ、なんでもできるのか? 死んだ奴を生き返らせたのか?」
やはり、旧第3がコクコクとする。
「ほれみろ。そなたが変なのを付けるから、調子に乗って、やっておるわ。我と同じなら、奴が選ぶことができたアビリティも3つのはず。恐らく、奴がなしたのは復活ではなく召喚。これについては、他の者も呼んでおるから、できることは明らか」
「死んだ者もできるのか?」
「下界で召喚師がやっておるのが、まさにそれよ」
「なるほどね」
「ただ、そなたの勘もするどいところはある。奴がこれまで呼んだ4体はいずれも下界の生者。蓋はあれらとは存在の位相が異なる。それに加えて、死んだ、もしくは上書きされた者とすれば…」
タナトスが口をはさむ。
「自説にこだわるのは止めなって。死んだでいいじゃねえか。そっちの方は話がすっきりする。それに上書き上書きって連呼されては、俺とヒュプノスが過去の行いを非難されておるようで、どうにも気分が悪い」
「そうか。我にそんな気はなかったが。とりあえず、ここはそなたに譲るとしよう」
「ありがとよ。先を続けてくれ」
「下界の生者の召喚を通常の召喚とすれば、あの蓋の召喚は例外中の例外といえよう。なので、旧第3が何かをやった可能性はある」
「そんなものなのか」
「我も似たようなことをしたからな。下界の召喚師が呼び出すは、通常は異世界の者。ただ、この世界の者を召喚するとすれば、しかもその者が我らの先祖の形態たる修復子とくれば、まさに例外中の例外。それゆえであろう。我は干渉するを得た。我の3番目の人格を上書きした者を、召喚させ得たのだ」
「なんだ。あんたも上書きやってるじゃねえか。なんで俺たちだけが『偽』とか付けられて、母海の底に沈められていなきゃいけないんだよ」




