第24話 ダンジョン『箱入り娘』1
三助がダンジョン『箱入り娘』に来てすぐに、マスターと共に箱車を見つめておった訳ではない。
10日ほど過ぎておった。初日、地走りと共に隠し通路添いに『箱入り娘』に入ると、まずはということで、マスターと召喚師様にごあいさつ。それから、三助はこのダンジョンの最初の間へ、地走りは地上へとなった訳である。大体において、隠し通路はマスターの間に直結、もしくはとても近くに設けられており、箱入り娘も例外ではなく、なので、この順路となった訳である。
ところで、三助がこの間、まったく進歩が無かった訳ではない。その変形自在の体を活かして平べったくなる。そうすると、これまでよりほんのちょっと高くへ飛べた。まだまだ工夫が必要と、三助が頭を悩ましておるところに、突然、箱車が現れたのである。
何だろうと想う。箱車そのものは、天板の無い空き箱の下に小さな車輪が4個ついた簡素な造りであるが、車輪は床についていない、則ち、宙に浮いておる。考えても分かるものではなく、なので、最下層に降りマスターに報せる。マスターは己を置いてきぼりにして急ぎ足で上階へ向かい、そうしてやっと己が追い付いて冒頭の場面という訳であった。
これは、三助が最初の間に入り浸っておるため、まったく気づかなかったことであるが、彼の滞在中にマスターは旧第3に虚空の遊園地に呼ばれ、箱車に乗り、そうして帰って来ておったのである。
まずマスターが箱車に乗る。ちらと三助の方を見る。この2体、共に言葉は喋れるが、通じない。つまり、通訳として召喚師様が必要なのであるが、ある程度は状況から伝わるようで、三助も乗り込む。最初はあぐらを組んで座るマスターの膝の上に乗せてもらったが、まったく前が見えない。なので、両腕を出し、それで箱の縁に宙ぶらりんとなってしがみつく格好となった。
まるでそれを合図とする如く、箱車が動き出す。最初の間と次の間の境には扉があった。このままでは正面衝突というところで――マスターが「おおい」とか三助が「ウキャ」とか叫んでいるところで――扉がおのずと開く。
「これはこれは。なかなかの優れものだ」
そうして次々と部屋を抜けて行き、階下に降りる。その間にも、箱車はどんどんスピードを上げ、更には途中で回転技まで繰り出し、2体に落下の恐怖を味合わせる。そうして、最後はマスターの間へ。天井からぶら下がる飾りヒモの下を通過。奥にある召喚師様の居所に入る扉にぶつかる直前で、最初の間に戻る。
「なるほど。この箱車はダンジョン仕様をわきまえておるわけか」
このダンジョン世界では、特定条件をのぞいて、敵(プレイヤー側)は召喚師には触れ得ない。
そこでなぜか2体でハイタッチ。いや、お前ら何もしていないだろうとの空耳突っ込みが聞こえて来そうである。




