第2話
とはいえ、そちらの方も己の目で確認すべきだろう。このダンジョンに深層があるか否かを。俺は、下に降り、彼女の部屋の扉をノックする。すぐに出て来そうな気配はない。
「女神さま~」
呼んで、しばらく待つ。そうしてみると、やがて扉が開いた。少し下――彼女の身長は俺より十センチばかり低い――そこから、かわいらしい口をとがらせて言うには。
「私は召喚師よ」
ただ、俺はその返答より他のものに注意を引かれざるを得なかった。彼女の背後、部屋を埋め尽くすほどに無数の生き物がいたのだ。
「これ。全部。あんたが召喚したのか?」
「そうよ。他に誰がするのよ」
俺は見回す。色んなのがいる。
「ああ。ダメよ。この子たちはレベル0なの。まだ、バトルには参加できないわ。今のところできるのは、サンスケだけ」
(サンスケ? ああ。数字の3ね。あのスライムか。分かりやす過ぎる。でも、スケって何だ? まあ、いい)
そんなことより、彼女の口ぶりから一つの疑問が湧いてきた。それを問う。
「なら、いつかは、こいつも戦えるのか?」
俺はその中の一匹を指す。その先には、まさに小さなドラゴンがいた。
「そうね。いつかはそうなると想うわ」
正直、頼りなげな返答であったが。何であれ、いつまでも子供ということはあるまい。
「そうか。そんなら待つぜ」
これなら俺ツエーも夢物語じゃあねえよな、そう想いつつ、とって返す。そうして、俺は寝床に座って、空想にふける。巨大なドラゴンとともに戦う姿を。想わず、顔がにやけてしまう。
やがて、何のために彼女の部屋に行ったのかを想い出す。想わぬものを見て、肝心なところを、し忘れちまったな。どうするか? もう一度、訪ねるか? それとも、彼女の方から出て来るのを一端待つか? 今すぐ、やらなければならないってことでもないだろう。何度も訪ねて、迷惑と想われても嫌だな。決めあぐねているうちに、斜め上から音がした。
さっきのぞいたハシゴのある方であり、俺は立ち上がり、そちらに向かう。敵はすぐにも来るかもといった彼女の言葉が、苦々(にがにが)しさとともによみがえる。とりあえず、扉が開かぬよう、体重をかけて押さえつけるつもりであった。ただ、そうする暇もなかった。
扉が勢いよく開けられ、そこには、革よろいに戦斧をかまえた男がいた。
「プレイヤーか?」それから、『ちょっと待て』との言葉を付け加えようとしたのだが、その間も与えられず、斧が俺の脳天に振り下ろされた。
俺ヨエー。そして俺の第二の人生。ミジケ~。