第20話 遊園地10
(視点は女王です)
またタナトスが怒鳴っている。ただ、滅尽(作者注=滅塵)など、己に憶えはない。タナトスたちが心当たりなく、己にもないとすれば、残りは1体しかおらぬ。
「そなたか?」
それに相手はコクコクと首を上下に振る。
「どうやら、旧第3らしい」
それに対する直接の返答はなく、代わりに次の如くが聞こえた。
「変な奴が出て来たぞ」
その声につられ、女王は視覚を闘技場に戻す。聴覚同様、視覚においても自由が効き、まるでかたわらにおる如くにそいつを見られる。すらりとした人型であるが、体のところどころに、木の年輪の如くの模様の的を有する。
「あれも、そなたの仕業か」
再び相手はその大きな白頭をコクコクとする。横に伸びた髯の可愛らしさが鬱陶しい。
「それも旧第3の仕業だ。そいつは無勝堂のマスターだ」
「こいつと一緒に戦えということか?」とのタナトスの声。
「何を期待しておる?」との女王の問いに、
相手はやり投げの如くの動作を最初にしてみせ、次にその槍が胸に深々と刺さった如くのポーズをする。もちろん、槍など無く、ただ、それを想像させるジェスチャー・ゲームの如くが目の前に展開されたのである。
先の決戦での、まさにその滅尽の武器をあやつるこやつとの戦いが苦々しく想い出され、腹の底から怒りが湧き出ずるが、それに呑み込まれることはこらえた。ただ、あの尻を押し付けられるを許したは余計だったとは想い知る。
「そいつのアビリティはカウンターだ。その的に敵が撃ち込むとアビリティが発動する。なので、その7種の滅尽を的に撃ち込ませよ、ということのようだ。それで、敵を倒せるはずだ」
「それはいいとして、なんで俺たちがその手伝いをせねばならぬのだ。こちとら、命がけだぞ」
そのタナトスの言葉をそのまま旧第3に伝える。すると、相手は片手を差し出す。
「何だ? そなたの肉球で我を癒したいとでもいうのか?」
すると相手は一端手を閉じ、再び開く。そこでようやく2本の指が開き、他が閉じられておることに気付く。
「まぎらわしいんだよ。そんな短い指で」毒づいた後、「タナトス。2だ。何か分かるか?」
「俺とヒュプノスのことか? そんな訳ないよな」
「僕たち、一人ずつに武器をくれるってこと?」
ヒュプノスであった。彼にも遠話は聞こえておった。
女王が問うと、相手はうなずく。
「どうやら、そうらしい」
「なら、僕、やるよ。その代わり、選ぶ権利付きだよ」
女王を介して認められると、
「分かった。僕がやる」
「ヒュプノス。危ないって」
「何で? 目をつぶるだけで消えるんだよ」
そう言われたタナトスもさすがにそのチートぶりを認めざるを得ないようで、引き下がる。実際、ヒュプノスは、無勝堂のマスターの前でパタパタしてみせては、敵の撃ち込む寸前で姿を消す。武器がマスターの的に吸い込まれる如くに当たる。「的必中のおまけ付きアビリティか」タナトスのかすれ声がそうつぶやく。敵は消失し、武器のみ虚空に残る。
その様を見て、女王いわく、
「まるですべてを見て来た如く、手際が良いのう。我らはそなたの手のひらの上で踊っておるに過ぎぬのか?」
旧第3へ向けてであった。




