第16話 遊園地7
外側にはデカブツが多いようである。力自慢の振るう武器は、当たればこちらの体が壊れてしまうという破壊力なのだろうが。あくまで当たればである。彼我のスピードの差は明確にあった。まずは、こいつらを倒すとするか。そうして、血しぶきをまき散らしつつ、ほふって行く中で、どうにもタナトスには気になることがあった。ヒュプノスが周りをパタパタ飛んでおるのである。その半裸の上半身も翼も月光の下では、凄惨に青白い。
「おい。ヒュプノス。向こうに行ってろ」
「僕、タナトスを守るよ」
「そんなの望んじゃいない。行けって」
ただ、ヒュプノスはやはりパタパタとタナトスの周りをうろつく。下手をすると、敵の武器どころか、己の腕刀で傷つけかねない。
「おい。女王。何とかしろ」
「これこれ。どなるな。そうせずとも会話できる」
「心話ができるのか? なら、こちらが何を考えておるか、丸分かりということか?」
「はは。我もそこまでは悪趣味じゃない。ただ、遠くにいても近くにいる如く聞こえるというだけだ。心話というより遠話が妥当だな」
「要は盗み聞きじゃねえか。結局、悪趣味なんだよ。まあ、今はそれはいい。ヒュプノスを何とかしろ」
タナトスは、左右に横跳びしつつ、両隣の敵をほふる。
「まったく、心配性のお兄ちゃんにも困ったものだ。ヒュプノスの運動性能がタナトスに劣るものでないことは、そなたが一番知っていように。それで、どうするのがお好みじゃ?」
「武器を与えるなり、アビリティを与えるなり、何とかしろ」
タナトスは正面の敵が己の首をはねるべく横にはらった剣を必要以上にしゃがんでよけると、伸びあがりざま、股間から切り上げる。
「ヒュプノス。ウインクできるか」と女王。
「できるよ。ほら。ほら」
巨漢の振り回す大斧をからかうようによけながら、タナトスに向け、してみせる。
「両目つぶりならできるようだ」
とタナトス。背後から振りおろされた剣を、半身ずらしてかわし、その両腕を切り落とす。
「告げ口しちゃダメだよ」
「これで満足かな。目をつぶってみよ」
と女王。
ヒュプノスのとろんとした丸い目が閉じられる。次の瞬間、姿が消えた。ただ、また、すぐに現れる。しばらく、ヒュプノスは点滅する如く、現れたり消えたりするのに夢中になっておった。そして、その度に敵の武器は空を切った。やがて勘所を得たとみなしたか、敵が密集しておる方へ、わざわざ飛んで行く。
「やれやれ。俺を守るって言ってなかったか。まったく、遊び足りないガキはこれだから」




