第14話 桃先輩16
(視点は桃先輩です)
それから、地下にある実の生育状況やモンスターの世話の具合を見て回る。召喚術については明日からやる気だったが、見て欲しいとせがむ生徒たちの熱意に負け、その求めに応じる。
中には、この短期間でずいぶん上達した者もおり、よくよく聞くと、出て来る名前は白蓮もしくは蓮華。蓮華のやつ、皆の前で召喚ができなかったとしょんぼりしておったが、教える方はちゃんとできているじゃないか。今度、褒めてやらなければ。
そうしてスミレの件。蓮華によれば、私に話があるとのこと、そして直接話した方が早いとも。
夕食のあと、3階にある彼女の部屋の扉をノックする。
「ああ。来てくれたの」
との応えとともに招き入れられる。ただ、ともに先のケンカというか行き違いをひきずっておるからだろう、次の瞬間には2人押し黙る。その沈黙を嫌うように、スミレは弥生を呼びに行くからと部屋を出る。一人残された私は想わずため息をつく。
(何の話だろう。蓮華に話してくれていたら)
弥生を連れて来たあと、そのまま立ち話となる。一応、椅子は2脚あるのだが。スミレと弥生が部屋の奥側に並んで立ち、私は扉側のまま。つまり、入ってほとんど移動していないのだ。
「その後、二人で相談したんだ。そして明日菜の手伝いをすることにした」
(作者注 明日菜は桃先輩の本名です。桃先輩は蓮華がつけた通り名)
「そうなの。うれしいわ」
意外な展開に驚きつつも、素直に感謝の言葉が出る。
「言ってたでしょう。召喚術はたまたまできたのって。明日菜はズケズケ言う人だから、本心からだと想うの」
(これって褒められてる)
「それで言うと、私たち――私と弥生はたまたまできなかったと、そうなる。それに縛られて、いつまで待っていてもしょうがない。それで行動に移すことにしたの。二人でその結論に達したの。もう、運営政府の先生方もいないし、反対する人はいないだろうから。そして明日菜たちの協力も必要なのよ。だから、まず私たちが手伝うことにしたの」
「行動?」
「学校から出ようと想ってるの」
「出る? 出て何をするの?」
「何をするかは、私たちが決めるわ」
「スミレ。怒鳴らないで」
これまで黙って聞いていた弥生が、スミレの体に手を添わせて言う。
「まったく。このバカは。あんたなんかに口を出させる気はないのよ」
その言葉とともに、スミレは私を部屋の外に追い出し、すごい音をさせて扉を閉める。
たしかに、話は早く終わった。こんなことなら、蓮華に言っておいてくれていたら良かったのに。どう考えても、『蓮華、よく聞いておいてね』案件だろう、これは。しょんぼりしつつ、私は上層への階段を上る。




