第13話 桃先輩15
小屋が見えたところで、護衛について来てくれていた呪々(じゅじゅ)とおむすびヒジキが、ここまででよろしいですか、と言って来たので、いいわと告げる。彼ら2体は少し尻子玉先生が苦手なのかもしれない。
ポチだけが付いて来る。道夫君によれば、このモンスターはただの犬かもしれぬとのこと。私が『ただの』とはどんな意味と問うても、考えあぐねるばかりで、ちゃんとした答えが返って来なかった。
この世界が派生したゲームで遊んだことがあり、それゆえ特別な知識を持つ彼には一目置いているのだけど、ときどき、こうしたところがある。蓮華から道夫君に対するグチを聞くことは珍しくなく、どうせのろけだろうと聞き流しておったが、多少は実のあるところなのかもしれない。とりあえず、ポチは『蓮華、よく聞いておいてね』案件とした。
小屋に至るまでもなく、尻子玉先生が駆け寄って来て、珍しくまくしたてる。『遊園地』『運営使者』『女王』『会った』『ヒュプノスとタナトス』『館』『校内』『亡者』。いろんな語が出て来て、私の頭には?マークが飛び交うこととなった。
特に話の前半は謎めいており、整理すると『遊園地の見知らぬ館で運営使者や女王と会った』とのこと。死んでなかったの?と尋ねると、『滅塵』『母海』『析出』などと、?マークがより一層乱舞する語が出て来てしまい、私は理解するのをあきらめた。
後半は『校内に館が現れ、亡者がおり危険ということであった』。こちらは、話の八割がたは理解できた気がする。
そして尻子玉先生が急ぎ拠点に行き第6人格と相談したいと言うので、私は学校のことは任せてと応じる。
それから、ポチには拠点に戻るように言う。途中から合流し、私の左右の肩の上で行ったり来たりしておったピヨ丸は、校門の手前で舞い上がる。それを見て、飛べるっていいわねとふと想う。
とにかく、その館というのを見に行く。皆が挨拶に来てくれる。わざわざいいからと言うも、結局、皆をぞろぞろ引き連れて館の前に至る。壁を覆うツタといい、突き出る彫像の禍々(まがまが)しさといい、おどろおどろしさ満点である。
扉が大きく開かれており、ドキドキしながら、そこから中をのぞく。そのとき、左足になにかがしがみつく。私は心臓が止まるほど驚き、あやうく蹴り飛ばすところであった。
「おばさん。中に入っちゃダメだよ。危ないから。はい。虫さん」
との聞き覚えのある声と台詞を聞き、なんとかそうせずに済んだ。
やはりサンゴである。虫を差し出し、にんまりしておる。再会の挨拶代わりということだろうか。とりあえず、虫をもらうと、満足げな笑顔となる。えっ? 何かあるの? 私、プレゼントをもらうようなこと、したかな? そういえば、ウラは? その姿を捜すと、遠巻きにしておる年長組の中におり、私の視線に気づき、急ぎ隠れる。すると、その行動を無にする如くをサンゴがしでかす。ウラの方に駆けだしたのだ。さては、あの2人。入ったのか? 問いただし、きつくしかりたい衝動に駆られるが、なんとか抑える。
サンゴは分からないが、ウラはそうしても効果がない。それどころか、却って、ということになりかねない。聞かん気なところは、私そっくりだ。そんな私でも大人になれたのだから、彼女たちもやがてはと想い、気持ちを落ち着かせる。
扉は閉じても、勝手に開いてしまうということで、冊を作ることにした。とりあえずそんなに頑丈な必要はなく、生徒たち――特に年少組を想い留まらせる程度であれば十分だった。皆に手伝ってもらう。召喚師はダンジョン内で工作をなさねばならぬので、技術を習得しており、案外、すぐにできた。




