第9話 遊園地4
「しかし、本当にこの世界は独立なんかできるのか?」
とはタナトスのかすれ気味の声。
「なら、聞いてみるか?」
答えを期待しておった訳ではなかったが、軽快に女王が応じた。
「誰に?」
「相手に決まっておる」
不意にポツンとそれが虚空に現れた。
「また、ダンジョンのフタなのか?」
「そう文句ばかり言うな。そなたらにとってもなじみがあって良かろう。それに不必要なところに力を使えば、我のなしえることが減るだけだ」と女王。
「しかも口だけ描いてあるとはな」
「口があれば話せよう」
「それで、フタさんよう。どうなんだい? 俺たちの世界は、あんたらの世界――ゲームだっけ――それから分離・独立できるのか?」
「矛盾するものは共存できぬ。どちらか一方に定まろう」とフタ。
「何だって? 分かりにくいな」
「不安定さを退け、安定した状態へと至るべきである」
「分かりにくいな」
「そなたらの侵入により、この世界は不安定なものとなっておる。より厳密にいえば、そもそも存在した不安定要因――分離独立問題――が励起されておる状況である。そして、その不安定さの解消のためには、不可逆的な過程が必要。何ゆえならば、不安定な状態に戻らぬためにな。その過程の結果、得られるものが分離・独立であっても、我らは拒まぬ。ひるがえって、真逆の結果となっても、そなたらは拒めぬ」
「要はどちらの目が出ても、それに従いなさいということか。コインの裏表、あるいは丁半ばくちといったところか。なら、いっそのこと、我らの独立を認めてくれぬか。そしたら、話が早い」
「それは不可逆的な過程とはなりえぬ。ゆえに応じられぬ」
「まったく面倒なやつらだ。どいつもこいつも」




