第5話 始まり5
箱列車は先ほどからガタンゴトンと揺れてみせている。
(なるほど。これが分かりやすくという奴か。しかし、どうにも安っぽいな)
先頭のヒュプノスが上機嫌に歌う声は先ほどから聞こえておるが、白猫の大きな背に隠され、その姿は見えない。そのことに多少いらつき、それが己の変声期特有のかすれを更に増していることを自覚しつつ問う。
「ところで、女王様よ。あんたとあの2番目に乗ってる奴は、前からいがみあっておったろう。決戦では派手にやりあったのかい?」
「そうさな」
「決着はついたのかい?」
「旧第3との間に限れば、ついておらぬ」
「なら、その続きを見せてくれよ。折角の機会だ。ここなら、存分にやれそうだぜ。何せ、だだっ広く何もねえ」
「我らにそれはなしえぬ」
「どういうことだ?」
「言うたろう。存在の位相が異なると。我らはもはやこの世界に関われぬ」
「何だい。そりゃあ」
「分かりやすくいえば、触れぬ。姿が見えておるだけだ」
「ヒュプノスはあれを触っていなかったか?」
「本来なら、触れぬはずだ」
「ふーん。まあ、ヒュプノスは……まあ、それはいいや。要はあんたら同士、互いに最早触れることもできねえと」
「そういうことだ」
「なるほどね。平和なことで、結構。結構」




