第4話 始まり4
ヒュプノスとタナトスが入った向こう側。
天地の区別もない、暗黒の虚空。
少しばかり離れたところに何か見える。近づいて行くと、徐々に形がはっきりする。
「うわー。乗り物があるよー」
ヒュプノスの嬉し気な声があがる。箱の如きものの下に車輪がついており、それが四個。その各々が連結されている。
その手前で、女王が待っておった。
「なんで、これだけあるんだ?」
「文句言わないでよ。タナトス。ほら、乗ろうよ。きっと楽しいよ」
そう言うヒュプノスは先頭の箱に乗り込もうとしておった。
「我のアビリティゆえだ。この世界をそなたらが分かりやすいよう、変換しておる」
と女王。
「なるほどね。ところで、こっちに来ても、あんたはその姿なんだね」
とタナトス。
「わざわざ変える必要もあるまい。正体を隠したい訳ではないからな」
「なら、あいつは何なんだ。隠れておるのか? ただ、姿は昔のままだぞ。なら、正体は知られたいということか? それに、なんで、あいつがおる」
ヒュプノスが乗る箱。その向こうから頭半分だけ出しておる者がおった。ヒュプノスが既にその猫の顔をいじっておる。
「追い払うか」とタナトス。
「嫌だよ。たくさんの方が楽しいよ。ねえ、運営使者さん」
その声を聞くや否や、ちゃっかり2番目の箱に収まる。
「旧第3がおるのは、恐らく我と同じ理由」タナトスが見やると、女王は言葉をつづけた。「連れて行こう。我同様何らかのアビリティを授かっておる可能性が高い。役に立とう」
そこで、女王は三番目の箱に入る。
「やれやれ」とぼやきつつ、タナトスが最後の箱へ。
「出発進行―」
とのヒュプノスの甲高い声が虚空に響く。
しばらくしても、タナトスには進んでいるようには感じられなかった。ただ、周りには何も無いので、そもそも判別しがたいだけかもしれない。
「女王。これは進んでいるのか?」
「言うたろう。そなたらに分かりやすくするのが、我のアビリティと」
「なら、進んでおらぬということか?」
「そうだ」
「進まなくて良いのか?」
「良い訳あるまい」
「なら、どうすれば良い」
「何のために、そなたが最後の箱に乗っておる。押してくれ」
「やれやれ」
タナトスは降りると、その後方から箱を押し、勢いがついたところで、飛び乗った。




