第38話 拠点造り1(第6人格1)
尻子玉先生は、中継基地に至り、その簡易人格に本体を呼び出してもらう。そうして出て来た第6人格――かの決戦には阿修羅王の機体に換装しておったが――にこう言われてしまう。
「ずいぶん、風変わりな姿をしておるな。そなたの好みか」
「いえ。あのクソ・ダルマが」と言いかけ、止める。この者があの方と親しかったのを想い出したのだ。
「福ダルマのことか? 師匠筋と想うたが?」
「いろいろあるのですよ」
そうして桃の姉さんから依頼された拠点造りについて、説明する。
「わしにそれをなせと」
全部説明するまでもなく、察したのか、そう言う。
「お願いできますか?」
「そうじゃのう。召喚師学校が運営政府の手を離れ、召喚師たちの下へというのも大きな変化なら、それに伴って、本来、地下世界の住人たる彼らが地表へというのも、また、大きなる変化となろうからのう。是非、関わりたいものよ」
「ならば、赴いてくれますか?」
「うむ。こちらからお願いしたいくらいだ。わしが幼生との交流を大事にしておるのは、彼らがやすらぎや思惟への深き沈潜など得難きものをもたらしてくれるというのもある。ただ、この幼生のときこそが、我ら本来の在り方なのではと想いもあるのよ。未だにそれが正しきかは分からぬが。ただ、母海、そして現在のわしらへの進化は正しかったのかとの疑念がのう。よこしまなる進化ではなかったかとのう。
そして地表はまさに幼生の世界。そこでの新たな出会いと交流、それに伴う思惟はわしにとってより意義深きものとなろうからのう」
中継基地が歩き出す。ヒトデの如くに平べったく伸ばしておった器官――これに幼生が頭を突っ込んで映像のやりとりをしておったのだが――今やそれを下方向に折り曲げ、それを足として歩き出す。あえて類似する生物を探せば多足のタコとなろうか。
その頭の上に乗る尻子玉は見晴らしの良い眺めを満喫しながら、第6に話しかける。
「風が心地良いですね。あなたが地上が好きというのも分かる気がします」




