第37話 桃先輩13
扉が開き、中の人が顔を出す。
「ねえ。スミレなの」との私の問いに、
「そんなの。見れば分かるでしょう」とのつっけんどんな答え。
「ねえ。どうして、ここに」
「あなたと違って、召喚できないのよ」
「私はたまたまできただけど」
「なら、私ができないのもたまたまね」
「でも、ちょうど良かった。教える人が足りないの。召喚師の先輩として手伝って欲しいの」
「なんで、召喚できない私が教えられるのよ」
そこで扉をバタンと閉められてしまう。
学校の金属製の廊下を戻る。カツンカツンと足音が響く。ここは建物の3階――尻子玉先生によれば宇宙船とのことだけど――ずらり、個室が並んでいる。入っているのは、いずれも年長組だ。
気付かぬうちに会話が大声になっていたのかもしれない。部屋から顔を出してこちらをうかがっている者が何名かいたけど、いずれも私が通り過ぎる前に部屋に戻った。
私は自分がやらかしたことに気付いた。スミレがいる驚きとなつかしさのままに、彼女の様子や心情に配慮することができなかった。そりゃあ、そうだよな。嫌だよな。ほとぼりが冷めた頃に謝りに来よう。それのみ決める。何となく、ここまではうまく行っていたと想ったけど、やっぱり全部が全部、うまく行くなんてことはないんだよな。
私は自室に戻るべく、階段を上がる。心は沈み込まざるを得なかったが。




