第29話 6番目のダンジョン8
リス吉を発したあとも、三助はなかなか戻って来ず、女神様は心配しておった。
「もしかして、また捕らえられたのかしら」
「地走りは、はめ合い手形の三助の分も持って帰って来た。なので、2人の使者の務めは無事、果たされたと考えていいんじゃないかな」
はめ合い手形は、三助と地走りの両者に持たせているもの。各々のものを合わせれば、一個の手形となる。今回の如く、三助が他のダンジョンに残って隠し通路開通を求める場合、それを地走りに渡すよう、三助には伝えてあった。俺は続けて言う。
「三助のあの派手な姿は同族にはたまらないらしいから、恋路の方で忙しいのかもしれないよ。それに、こっちでこんな事態が起こっているなど、想像もしていないのかもしれない」
リス吉が戻って来ても、三助は戻って来なかった。リス吉いわく、お取込み中のマスターもいたので、とりあえず伝言を頼んで来たとのこと。
ただ、ダンジョン巡りとはいえ、隠し通路を使ってのリス吉の足なので、半日もかかっていない。ヒモのことがなければ、待ってもいいのだが。こうなれば、リス吉を迎えにやろうかというところで、ようやく、三助が帰って来た。
疲れきっており、俺はどうしたと尋ねるが、珍しく三助は答えにくそう。
「恋わずらいなの?」との女神様の問いかけにもはっきりしない。
ただ、ヒモの危険性については教えてくれた。特にそれが飾りヒモだと非常に危ないとのこと。ただた、ウルトラ・レアなので、滅多に出ないとのこと。
アレっと想い、確認のために天井を見ると、やっぱり飾りヒモ。ウルトラ・レアなのかとゲーム好きの心は喜ぶも、正直、肝を冷やす。危なかった。
すると、下から悲鳴が聞こえた。三助であった。飾りヒモを見たのであろう、普段ありえぬ速さでいなくなった。
「私、地走りを捜して来る。謝って来なくては」と女神様。
銀髪をなびかせ、上へと向かう女神様を見ながらの俺の想いはといえば。
(あっさり自分の誤りを認めるなんて、またまた惚れちまうな)




