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第24話 6番目のダンジョン3

 地走りは今見上げるヒモが、先のダンジョンで見たものと異なることに気付いた。先のヒモは白色であったが、こちらは極彩色ごくさいしきであった。


 自ずと三助のことが想い出される。こたび、その使者の任に赴くに際し、あでやかな極彩色で臨んだ彼も、召喚師の膝の上で撫でられておるうちに、色を減らし、名の由来となった3色となっておった。残して来たが、大丈夫であろうかと想うも、何か、害意があるなら、己を帰したりしないだろうとは想う。


 しかし、このヒモは何だ? 何で、生じたのだろう? 天井が高いこともあって、他の者は気付いていないようだ。1番近くにおるミーたん、そればかりか目線の高さと言っても良い彼女であったが――彼女は壁に据え付けられたバッグに入っておった――下ばかり見ておるため、やはり気付いておらぬ。


 やがて三助が戻るはずだ。彼なら話せるので、これの危険を訴えることができる。それまで見張っていよう。


 しばらくすると、上を何かが漂って来た。ペラペラの薄い体に、見知らぬ生物が描かれておる。道夫も気付き、立ち上がる。最前まで何やら手を動かしつつ、「「臨兵闘者皆陣列在前りんぴょうとうじゃかいじんれつざいぜん」と唱えておった。何かの練習なのだろう。繰り返し、それをなす。強くならんとしておるのだろう。良い心構えだと想う。己もそうだが、ダンジョンの皆がまず頼りにするのは道夫なのだから。


 たいして時を置かず、蓮華様が出て来た。

「タコタコー。降りて来て」と呼びかける。


「どうしたの?」と道夫。


「逃げちゃったの。桃先輩から預かっていたのに」


 その平ぺったいものは、道夫が手を伸ばしても届かないところを飛んでおる。やがて、大きな円を描きつつ、上り始める。もしかして、あのヒモに向かっておるのか? 徐々に近づいて行く。途中で何を想ったか、反転して、描かれている方を上にしようとした。ただ、90度ほど回転したところで、浮力を失い、落ちてしまう。


 蓮華様が無事受け取る。その際、彼の描かれた口が開いたり閉じたりしておるのが見えた。


「さあ。部屋に戻りましょう。あなたは転生して来たばかりで、レベル1にもなっていないでしょう」


 その声を聞きながら、己はほっとする。


 ただ、これらすべてを見ておったのか、風切り音とともに、動く者が現れた。あべこべコウモリだった。蓮華様が彼のために部屋のそこかしこにしつらえた棒を飛び回る。


 いつもの運動なのか、それともこの者もヒモに至ろうとしておるのか。良からぬことをなさねば良いが。


 己は再び緊張に包まれた。


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