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第16話 桃先輩3

 最初になすべきことは、全生徒の無事の確認であった。ここに来る途中で出会った子たちに対しては、学校に戻るように伝えたが、まだ、外で遊んでおる者も多いと想われた。


 年長組の生徒たち――彼女たちは安定して召喚できるようになりさえすれば、卒業・独立となる――に2人1組となり、捜してもらった。学校から見える範囲から外に出ないように注意して。


 その外側は、私と尻子玉先生で捜す気でいた。ただ、人手が足りないのは明らかで、といって学生たちに捜させるのは、ためらわれた。私も生徒の頃は外で遊ぶことも多かったので、そんなに危険はないとは想うが。年月を経て、状況が変わっておるかもしれない。道夫君はダンジョンの入口が危ないと言っておった。ならば、その有無が確認できればとも想うが、そのためには、どうしても時間がかかる。何にせよ、用心するにこしたことはない。


 それに代案が無い訳ではなかった。私はモンスターのいる地下へと案内してもらう。彼らはここの生徒たちが召喚したものであり、当たり前だがレベル0である。敵との戦いは無理だが、生徒を捜すことはできるのではないか? そう考えたのである。


 やっぱり、スライムばかりね。そう想いつつ、見て行くと、見慣れた姿があった。


「なんで、あんたたちがここにいるの?」


 との私の問いに、一方は尻を上げ、他方は「ピヨ」とののみ鳴いた。前者の動きを止めようと、手を伸ばすも、間に合わず、ブヒッとの音とともに密閉空間に臭気が満ちる。


 私はあまりの臭さに頭がくらくらしながらも、屁コキ野郎をむんずとつかみ、「ピヨ丸、付いて来て」と言い、外に出る。


「お前たちは、レベル1以上なんだから、ここにいてはいけないの。敵が寄って来るかもしれないでしょう」


 返事はやはり「ピヨ」。


 もう一方は再度の放屁を狙ってか、腕の中であがいているが、そうはさせない。ただ、こいつを抑えていては、私の方も動きが取れないことも確かで、


「いいかい。屁コキ野郎。放してやるから、学校の外に出な。無勝堂に戻っても良いし、地獄巡りに行っても良いし。好きにしな」


 そう言いつけ、放すと、2度とつかまるものかと想ってか、少しばかり距離を取る。そうして、尻を上げて放屁するが、昼下がりということもあってか、あまり風も吹いておらず、己がその臭気の最大の犠牲者となったらしく、足元がおぼつかない。ただ、ふらふらとしながらも、校門の方に歩いて行く。


「まったく懲りない奴だね。あいつは。それで、ピヨ丸。あんたに頼み事があるんだよ。蓮華に届けて欲しいものがあるんだ」


 返事はやはり「ピヨ」。


 私は学校に備え付けの小木片に刃物で文字を刻むと、それをピヨ丸の首に結び付けた。


「さあ。ピヨ丸。頼んだよ」


 それから、私と尻子玉先生で捜した。まだ見つからない3人の子供の各々の仲の良い友人――彼らに普段行きそうなところに案内してもらいつつ。


 それとは別にモンスターたち――たくさんのスライムとそれ以外が少し――には、見落としがないよう、学校を中心にして四方八方に広がるように捜してもらう。


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