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第8話 ことの始まり8

「どうも寝ておったらしい」


 とのダルマさんの声が聞こえて来て、ようやくカッパさんは押すのを止めた。


「なぜか、めまいがするのだが、気のせいか?」


「師匠。しっかりしてください。召喚師の方が教えてくれている際中ですよ」


「おお。そうじゃったな。で、何の話をされておったのかのう?」


「皆さんが召喚するのは難しそうですねと。確証はないんだけど、多分、召喚術というのは召喚師の0アビリティなのよ」と桃先輩。


「0アビリティ? 格好いいけど、どういう意味」と俺。


「持って生まれた能力ということね」


「なるほど。俺の0アビリティって、何だろう?」


「負けることじゃない?」

 女神様のカウンターがきつすぎるぜ。もしかして桃先輩の桃先輩に興奮した俺へのお叱りモードか?


「ダンジョン・マスターの0アビリティは、モンスターのレベルを上げられることね。そして、それによるアビリティ解放もそう。ただ、勝てばという条件がつくみたいだけど」と桃先輩。


「そうだ。そうしてみると、ダンジョン・マスターってすごいんだな。俺には、まったく実感がないが」


「それは道夫がすごくないからよ」女神様の追撃の一打が飛んで来る。


「この世界は、召喚師とマスターを中心に成り立っている。運営政府のかたには悪いけど、そう想えて仕方ないの」と桃先輩。


「気にせんでください。わしらはわしらで、生きる場所があれば十分なんで。それにあなた方との共存は、今は無き前運営使者からのたくしごとともいえること」


「もう、あの方とは会うことはできないの?」


「まことに残念なことであり、寂しいことではありますが。ただ、今回の学校の件もわしらが協力してなすならば、まさに彼への供養になるのではと」


「そうね。その学校のことで提案があるの。私たちが――つまり、蓮華と私ね――直接、教えるというのはどう?」


「おお」これは隣のカッパさんである。やがて、涙があふれ、喉から漏れ出るのは嗚咽となる。


「ダメなの?」と桃先輩。


「できたら、私も教えてみたい」とは女神様。


「そうではありません。是非、お願いしたい」


 何とか、カッパさんは、嗚咽交じりに言葉を絞り出した。


「良かったわ。OKなのね」と桃先輩。


「嬉しさのあまり、つい取り乱してしまいました」


「そんなに喜んでいただけるなら、がんばらなきゃね。蓮華」


「はい」女神様はほがらかな笑顔で答える。楽しみなんだろうなというのが伝わって来る。


「レベル0のモンスターの世話があるから、2人同時というのは無理。最初は私。次に蓮華ね。ところで、私の娘のウラもいるのよね。ずいぶん、会ってないけど。あなた方は学校に行かれたのよね。会わなかった?」


 カッパさんは、体をブルっと震わしただけで答えない。何か、嫌な想い出でもあるのだろうか?


 ここでお開きとなった。




 大事そうにヤタガラスを胸に抱える女神様に話しかける。


「すげえな。神将候補だってよ」


「へへ」女神様は得意げに笑い、ヤタガラスに頬ずりする。


 女神様は居室に戻り、俺はマスターの間の椅子に腰かける。そうして、神将候補ということから、鉄チンが持って来た依頼を想いだしていた。


 地獄巡りのマスターからとのことで、将来の神将を私の下で育てたいので、育ち盛りのモンスターを数体、送ってほしいとのことであった。条件としては、属性効果の恩恵を受けられる者をと。鉄チンが付け加えるには、そのうちの一体を雷公の代わりとしたいというのが、マスターの想いですとのことであった。


 雷公は俺たちのために亡くなったも同然。否はなかった。なんなら、俺のダンジョン最強の鎌次郎を差し出してもいい。そう伝えても、鉄チンは首を振り、なら、クラゲンゲを戻そうかと言っても、やはり首を振る。そして、言うには、「マスターはとても頑固な方ですから、条件を満たさぬ者は受け入れぬでしょう。鎌次郎に属性の恩恵があるとは想えませんし、クラゲンゲは育ちざかりとはいえますまい。無勝堂の方からは、ピヨ丸で良いと、マスターはおっしゃっています」


 結局、運ゲー野郎から送ったのは『焼けぼっくり』と『ミイラ蛇』。条件に会うのが、この2体のみだったのである。ヤタガラスを送れたら、まさに恩返しなんだけどな。


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