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第6話 ことの始まり6

 ただ、そんな桃先輩も、女神様によりダンジョン内に連れ戻された。先の件もあって、どうもあの着こなしはやばいと気付いているらしい。やはり喜びというのは、つかの間であるのだな。


「やっぱり蓮華のだときついわ」


「我慢してください」


 そんな会話とともに再登場した桃先輩であったが。


 パッツンパッツンじゃねえか。


 召喚師の服――白いワンピースみたいなの――に着替えているのだが、サイズが合わないのか、却って、胸のたわわさが強調され、形も丸分かりである。


 ご褒美を目の前にぶら下げられたアホ犬の如くに喜んでいる俺であったが。ふと女神様のことが気になり、そちらをうかがうと、上機嫌に笑顔を浮かべて桃先輩を見ている。何せ、女神様の憧れである。間違いなく、大好き度でいえば、筆頭である。筆頭が俺じゃないことについては、あきらめている。そして、その方が女神様にとっては、楽しいのかなとも想う。モンスターもおれば俺もおるので、孤独というわけではないだろう。しかし、親密な召喚師というのも、彼女にとっては是非欲しいものだろうから。


 俺の望みは、第2位の確保だ。三助には絶対負けねえ。




 安全のために、場所をダンジョン内に移しませんかと俺が提案したところ、福ちゃんことダルマさんいわく、

「心配は無用。わしの次元牢でどうにでもなる。攻略に来たものを閉じ込めることもできるし、わしらがそこに避難することもできる。どちらが、お望みかな」


「どちらでも。いや、敵を閉じ込めてください。でも、強いんですね」


 ここでカッパさんがぼそり。


「可愛くて強いなんて、そりゃあ、ずるいっすよ。師匠。我も風神のままだったらな」


 ちなみに、折角だからというので、俺も教えてもらうことになった。召喚できるようになるだろうか? わずかではあるが、期待はある。俺は、運営のお二方の横に移り、そこに座る。




 まずはお手本ということで、目の前で召喚してもらえることになった。


 最初は桃先輩。伸ばした手を頭の上で合わせ、その態勢ですっくと立ちあがる。更にはつま先立ちになり、湿り気を帯びた歌声を響かせながら、離した両腕を横に開いて行き、円を描くようにゆっくりと降ろして行く。現実なのか幻想なのか、腕の軌道にしたがい、たくさんのしずくによる半球が現れる。それは、最初、桃先輩の頭部のみを隠したが、胸、胴と拡大して行き、足元まで至ると、桃先輩の全身を覆う球となる。その外側をあまたのしずくにより構成し、中は空洞らしく、透かし見える桃先輩に苦し気なところはない。


 やがて、彼女は片膝をついてしゃがみ込み、今度は、すくうように手の平を上にして両腕を添い合わせる。すると、あまたのしずくは、その手の平を満たすように集まり、小さな球となる。彼女がそれを敷物の上に置くと、それはしばらくプルプルと震えておったが、やがて強烈な光に包まれ、見えなくなる。


 そうして現れたのは、ぺらぺらの体。紙製なのだろうか? それを木の棒で支えている。糸を付ければ、まさに空に飛ばすたこである。しかも、なんと、その上に、海に住むタコが描いてある。明らかに、これ、ゲーム開発者がふざけて作った面白枠であろう。そう想って見ていると、近くにおったリス吉が近寄るのが分かった。桃先輩を呼んで来てもらって以来、そばにおったのだ。そして、リス吉はなぜかにらみ合いの態勢に持ち込まんというのか、己の顔を、相手の顔にくっつけんばかりに近づける。


「こら。リス吉。分かった。分かった。お前は強いよ。そして、相手はレベル0の生まれたばかり。お前はレベル1以上。ダメだよ」


 俺が制そうと、立ち上がりかけると、相手の口から黒いものが出て、リス吉の顔にかかる。リス吉は走って逃げるが、よく見えぬのだろう、ところどころにある木にぶつかり、止まる。すると、立ち上がり、何事かを大声でわめいている。


「見た目によらず、戦闘力あり……か」

 カッパさんがやはりぼそりとつぶやく。


 そして、俺は女神様の気配を感じ、見ると、明らかにうずいている。『安易な名づけ』発動のときだ。

「タコタコー」高らかなその声の提案に、


「それにするわ」と桃先輩がやや低く応じる。


 次は女神様。やはり両手を高くかかげる。しかし、組まずに、手首のちょっと下で両の手を交差させて、手の平は外。そうして、ゆっくりと円舞しつつ、高音でやさしく歌う。


 すると、これも現実か幻想か分からぬが、彼女の両手のさらに上から、7色の細帯が彼女に体の動きに合わせる如く円舞しつつ、下に伸びて行く。そうして、その7本の細帯は互いに編み込むように一つに合わさり、7色の絢爛豪華な球となる。やがて強烈な光に包まれ、そのあとに一体の姿が見えた。


 黒い鳥だ。カラス? でも3本足だ。


「ヤタガラスよ。将来の神将候補よ」


「すげえ」俺はそう言うも、ふと想い至る。


(俺が転移してすぐに女神様の部屋で見たドラゴン。未だにレベル0のままらしく、出て来ていない。そうなんだよな。どのモンスターがレベル1になるのかは、まさに運ゲーなんだよなー)


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