第5話 ことの始まり5
運営の方々の訪問目的が召喚の術についていろいろと教えて欲しいと分かると、女神様いわく、「それなら、桃先輩を呼ぶべきね。私よりずっと詳しいんだから。私もたくさん教わったのよ」となり、俺はそのためにリス吉を無勝堂に発した。その大きな耳は本任務においては役に立たぬが、ちゃんと言葉が喋れるのである。
待っている間、女神様がお茶を入れてくれることになった。地上は風が心地よく、まるで元の世界に戻ったように感じる。いや、そんなことねえか。だって、目の前にいるのは、ダルマさんにカッパさんだろう。そして好きな女の子が俺にお茶を入れてくれるなんて、前の世界じゃ考えられない。
ただ、万、良しとは残念ながら、ならなかった。お茶をもたらしたのは、シャクトリンゴと共に来た神農であった。それまでは、このダンジョン内では湧き水をそのまま飲んでいたのである。神農がどうのこうの言いたい訳ではないが、このお茶がとんでもなく苦いのである。
「これって毒じゃないの」と文句を言った俺に、当時、訪れておった神農は「良薬は口に苦しですよ」とどこかで聞いたようなことを言う。それを聞いた女神様は、その薬効を信じたようで、何かといえば、お茶を飲ませたがる。ただ、自分もおいしい顔で飲む訳ではなく、すんごいまずそうに飲むのである。
今回も今回とて、4人ともすんごい顔となる。いや、ダルマさんのみ、すまし顔だ。ただ、ゲロっとばかりに吐き出した。いや、そうまでして伝えなくていいから。
「蓮華。運営政府の方が来てるんですって」
潤いを帯びた声が乾いた風に乗って伝わって来る。
振りむいた俺に待っていたのは――否、全オッパイ星人にとってそうにほかならぬ――即死級の必殺技。桃先輩の桃先輩――まさの、その名のごとし、たわわになった2個の桃――が薄物越しに透かし見えている。竜の脱皮のその着こなし、素晴らしい。いや、正しい。何せ、それはあらゆる属性攻撃を無効にする最強の防具にほかならぬ。一歩、部屋を出れば、攻略者がおらぬとは限らぬのだ。
でも、俺、死ぬのかも。この前、蓮華ちゃんの蓮華ちゃんにホッペが触れたし、今日は今日とて、この眼福。