第13話 運ゲー野郎
俺は、何とか物想いの泥沼から自分を引き上げると、
「そういえば、相談したいって言ってたけど?」
「そうそう。実はいつ奧の方に引っ越そうか迷っていたんだけど。食べ物の件もあれば、今が一番いいのかもと想ったの。この新しいところの手前側に私が引っ越し、奥側に新たに畑を作るわ。今の私の部屋と畑は、あなたたちが自由に使っていいわ。どう想う?」
「女神様が引っ越すのはいいと想うよ。ただ、畑は今あるのを皆で使えばいいんじゃないの?」
「それはダメよ。レベル1のモンスターがいるところまで、敵は来れてしまうの。私とレベル0だけなら、そこは敵にとっては、存在しないも同じ。だから、絶対に混ぜてはダメなの」
「そうなんだ」
納得したというか、何というか。ただ、俺が彼女の部屋に入るのを望んでいないというのは、何となく伝わっていたので、なるほどと、ある種、符に落ちる部分もあれば、また、俺を嫌いだからという訳ではなかったのねと少しホッとする部分もあった。そして、好き嫌いといえば、
「ついでと言っては何だけど、こっちも相談したいことがあるんだ。ミーたんのことだけど。ミーたんはやはり俺を嫌いなのかな?」
「嫌っているかどうかまでは分からないけど。残念ながら、多分、好きではないわね」
「俺。どうすれば、いいんだろうか?」
「モンスターは育ちも性格も違うから、一概にこうすれば、とは言えないわ。あなた自身がモンスター個々とのつき合い方を見つける必要があるんじゃないの?」
「そう」
俺の不安を感じ取ったのか、彼女は言葉を続ける。
「確かに、三助みたいになついてくれれば、やりやすいだろうけど。でも、ミーたんだけじゃないわ。これからも、あなたを好きじゃないっていうモンスターは召喚されて来るわ。でも、あなたはダンジョン・マスターなのよ。他のモンスターとは違うわ。ときには我慢も、そしてときには配慮も必要よ。相手が自分を好きじゃないからって、邪険にしてはダメよ」
「そうだよね」俺はため息をついて答える。「何となくは、分かっているんだけど」
「それに、モンスターの側に立ってみれば、望んでこのダンジョンに召喚された訳ではないし、望んであなたをマスターとした訳ではないわ。それでも、彼らは彼らで幸せになる権利はあるわ。私もそうなればいいと想っているし、そうなるよう心がけているわ。何せ、彼らを召喚したのは私なのだから」
女神様が召喚師との呼び名にこだわる理由が分かった気がした。
「女神様もいろいろ考えているんだね」
「だって、レベル0モンスターは私だけが頼りなのよ」
レベル0に限定しなくても、とは想うが、そこはやはりかたくなな彼女であった。
「分かったよ。レベル1のモンスターは俺がまとめてみるよ。いろいろ、試行錯誤してみる。何せ、俺は運ゲー野郎だからね」
「運ゲー野郎?」
「ああ。俺の・・・・・・」あだ名と言おうとして、次の如く言い直した。これくらいの格好つけは許してくれよ、と想いながら。「俺の二つ名さ」