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第4話  ことの始まり4

 それでは、どのダンジョンの召喚師を訪ねようか、という段になって、師匠の福ダルマ人形と我・沙悟浄さごじょうは顔を見合わせ、首をひねることになる。――厳密にいうと、師匠は首をひねることはできないのだが――そもそも、首がない――その気持ちは十分に察しうる。何せ、一人とて知り合いがおらぬ。


 こんなときに頼りになるはずの新運営使者たる猪八戒ちょはっかいは、自ら言っておった如く、まさに物見遊山ものみゆさん気分でゆっくり各ダンジョンを経めぐっておるのだろう、帰って来ておらぬ。


 ただ人見知りを自任する我である。こうした窮地に追い込まれることもしばしば。なので、苦手とはいえ、どう解決して行くかについては、多少の経験もあれば知恵もある。といって、想いついた案は1つのみ。そうはいっても、0と1では大違い。早速、それを師匠に提案する。


「ほら。お守りを作ってもらっていたでしょう。戦のときに身につけた。あれのお礼を、ということで、どうです。確か運ゲー野郎の召喚師だったと想います」


 師匠は、まさに入れ食い状態で、それに食いついた。後日、我らは、そこを訪ねることにした。




(以下、視点は道夫です)

 今日は、珍しいことに、女神様にお客さんがあった。更に珍しいことに運営政府の方たちという。いつも通り、俺と女神様で地上で出迎える。


 あの戦いのあと、鉄チンが来て、いろいろと教えてくれた。なので、現在の運営政府をになっているのが、我々ダンジョン連合側についてくれた方々であることも知っておった。それゆえ、当然、大歓迎である。


 ただ、その姿を見て、多少、驚くことになる。1体は何とも恐ろし気なカッパ、もう1体は何とも可愛らしいダルマ。それも小さめである。お馴染みの赤を主体としたデザインであるが、腹のところにしっかりと福との文字がある。


 長話になるかもということなので、敷物の上に女神様と俺が並んで座り、対面側に運営政府の方々が座るという格好である。


 ところで、カッパさんからは、沙悟浄との名乗りがあった。そういえば、お猿と想われた方は孫悟空であったな。ただ、その名乗りが遅れたので、皆にお猿さんと呼ばれることになってしまった。この方は最初に名乗られたので、そうした悲劇とは無縁であろうと想ったのだが。


 ただ女神様の得意技、『安易な名づけ』が発動してしまう。


 訪ねて来た理由を説明しようとして、この方が経験したところの苦労を語るにおいて、

「子供たちにとても怖がられましてね。尻子玉しりこだまを抜かれるって。尻子玉って何なんですかね」


 それを聞いた女神様、いわく

「私も良く知りませんわ。でも、そんなに怖がるなんて、きっと大事なものなんでしょう。先生にいい二つ名を想いつきましたわ。『尻子玉先生』と今後はそうお呼びすることにしますわ」

 福ちゃん――初めに、この方自身が、そう呼んでくれと言って来ておった――からは、「良かったな。尻子玉先生」と言われ、カッパさんは嬉し気である。


 おそらく、皆、尻子玉について良く知らぬのだろう。俺も詳しくは知らぬ。ただ、キャンタマではないが、それみたいなものだろうとは分かる。なので、そんなに良いものではないと想う。ただ、女神様の前でキャンタマなどと言える訳もなく、俺は黙っておった。女神様の『名づけ』の新たな被害者の誕生かと恐れながらも。

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