第3話 ことの始まり3
「そなたが教えるしかあるまい」
校長も教師も母海に戻ったと報告した沙悟浄への、福ダルマ人形の指示であった。
正直、2度と学校に行きたくはなかったが、仕方ないかとあきらめ向かう。ただ、待っていたのは、先にもまさる状況であった。
「尻子玉を抜かれる~」
「私の尻子玉を取らないで」
などと連呼しながら、少女たちは逃げ惑う。
「尻子玉とは何だ」
ついつい癇癪を起こし、我は怒鳴ってしまう。
「尻子玉を抜かれた」
「私も」
「私もよ」
ついには、少女たちは既に抜かれたと錯覚し、パニックにおちいり、阿鼻叫喚の大騒動となる。
こうなっては引き返さざるを得ず、やはり師匠たる福ダルマ人形に報告する。
「なぜ、尻子玉を抜いたのじゃ」と訳の分からぬ質問をされ、「抜く訳ないでしょう」と半ば逆切れ気味に返したあと、「我はもうダメぽ」との言葉でしめくくる。
「なら、わしがやってみよう」
我のあまりの意気消沈ぶりに、これ以上無理強いしてもしょうがないと察してくれたのか、師匠はそうおっしゃってくださった。
次の日、2人して向かう。
「きゃあ、かわいい」
迎えたのは、かまびすしいまでのあまたの歓声であった。そして、少女たちは我先にと師匠を取り合う。
「さすが、師匠。既にして、少女たちを魅了しておる」
想わず、賛嘆の言葉が口をついて出る。
そうして、ときが過ぎ行くほどに、師匠は少女たちに投げられ、蹴られ、棒で叩かれと、好き放題されるのだが、我と異なり、癇癪一つ起こさぬ。
「これで、ようやく一件落着か。我の解任は決定的だな」
とほっと一息つく。
少女たちは遊び疲れたあと、ようやく師匠を解放した。我は師匠の隣に行き、地面に直に座る。師匠の体は土埃にまみれておったが、少女たちと存分に遊んだ証でもあり、それは勲章の如くに輝いて見えた。
「師匠の体って、柔らかかったんですね。少女たちが蹴っているのを見たときはケガをしないかと心配しましたが、痛がりもしない」
「次元術の応用よ。体の周囲を別次元で覆うのじゃ。別次元に入るには、わしの許可が必要で、それが無ければ、わしの体に当たる前に跳ね返されるという寸法よ」
「さすがは師匠。彼女たちの身を第一に考えてのことですね」
「ただ、なぜか、あの娘たちを次元牢に閉じ込めたい。そんな欲求が心の内から湧き上がって来てのう。なぜだろう」
(前言撤回。この方もダメぽ)
そんな声に出すことのできぬ我の心中を察したのだろう、師匠、いわく
「ダンジョンの召喚師に教えを請うしかなかろう」