76番地 レイド19
握る大槌に白猫は確かな手ごたえを感じた。ただ、その直撃を受けた母上の体は、無傷に想われた。
他方で彼の握る大槌はぼろぼろと崩れ行き、ついには、白猫の体も崩れ始める。
漂うは、取り残された7連のお守りのみ。不意にその7連は強烈な光を放つ。その光を浴びた陰・陽の体には無数の穴が開き、その穴へと内破する如く、崩壊へと至る。
共に体は崩壊しつつあるも、その魂の消失には未だ少し余裕があるらしかった。
「母上。占いは凶と出たようです」
「そなたは未だ想い至れぬか。我は吉凶の占いなどしておらぬ。我かあの子か、それを占うのみ。そして、出た結果が我ではなく、あの子というのみ。あとはあの子がなせば良い」
「あの子とは誰だ?」
「我と同じく永劫の滅びに陥るそなただ。もはや、何の関係もあるまい」
それを最後に、両者の魂も体を追う如くに消え去った。
地走りは、頭に中に膨大な記憶――しかも、己のものでない記憶が流入し、まさにそれに圧倒されておった。もし、己の心を引き留めるものがなければ、ヨダレを垂らし、小便を漏らし、放心しておったに違いない。己の中の一心。三助も道夫も己が守る。
1度姿を消し、その後、不意に姿を現した者たち、かれらが、三助たちにとてもひどいことをしようとしている――具体的にどんなことかは分からなくても――ということは分かった。
「なんだ。こいつ。邪魔をする気なのか。それに、なんで体が動くんだ。そもそも何で僕らのご先祖様がこんなところにいるのさ」
可愛らしい少年の熟れたサクランボのようなおちょぼ口は、最後に残酷な言葉を発した。
「でも、ここで会ったが運の尽き。お前から上書きしてやるよ」