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第11話 第1部完

 カマ次郎(鎌いたち)が迎撃に加わってからは、負け無しの4連勝となった。俺たちの動きも少し変わった。三助を投げ、右腕を硬化するのは、これまで通り。ただ、突撃は止めた。


 三助が敵の顔に当たったり、あるいは敵が慌てたりして、敵にすきができれば、その時点で、カマ次郎が仕留める。


 俺が狙いを外したり、敵がうまく対処したりして、俺に打ちかかってきたならば、硬化した腕でこれをふせぎ、やはり、鎌次郎が仕留めた。




 そして4体が新たに加わった。


 包帯ぐるぐる巻の『ミイラ蛇』。


 足では無く腕でつかまる『あべこべコウモリ』。


 離れた空間からにょっきり二本の腕を出す『腕自慢』。ちなみに、顔も体も足もない。


 見た目普通の犬――柴犬っぽい――『ポチ』――本当にただの犬かもしれない。


 そして体数が増えてみると、大変なことが一つあった。食事の準備である。




 ただ、その段に入る前に、まずは、俺と三助のみだった時の話をさせてほしい。


 これまでの食事は全部彼女が用意してくれていた。といって、料理を出されたという訳ではない。まん丸いものからいびつな形のものまで、大小様々、色も様々、それが食事の度ごとに何個か皿の上に並ぶ。


 連想するのは果物である。そして実際食べてみると、確かに前の世界と同様に甘くておいしい。ただ、不思議なことに、魚や肉の味に近きものもあった。正直なところ、うまけりゃあ後は何だっていい。


 ただ、不思議に想い始めたのは、彼女が外に取りに行っている姿を見ないためだった。とにかく、扉の向こうは彼女の世界よろしく、そちらにほぼ引きこもっている。しばらくは、取り置きしているのだろう、くらいに想っていたが、その量にも限りがあるはずであった。


「向こう側にも扉があるの?」


 彼女が食事をたずさえて来たき、俺は尋ねてみた。


「出口?」


「ほら、いつも、持って来てくれるじゃない。でも、こちら側から出て行ってはいないみたいだし」


「ああ。これね。ダンジョンの中で育つのよ。知らないの?」


「いや、前の世界じゃ、日光が必要だから。ねえ。見せてくれない?」


 むっ。彼女は一瞬警戒の色を見せる。どうも、俺が彼女の大事な召喚獣を狙っていると想い込んでいるふしがある。まあ、まったく見当ちがいではない、それどころか、鋭いとさえ言って良い。正直、当てにできるものなら、そうしたいところだが。


「君のこどもたちには触れないから。それに百聞は一見に如かずというじゃない。食い物のことで、あれやこれや君に問いかけるのも迷惑だろう」


 これは決して口からでまかせではない。正直なところ、まともな戦果を挙げておらぬ。その俺に対して、彼女は態度を変えることもなく、また非難するところもない。できれば彼女をあまりわずらわせることなく、と想うのだった。


「子供? 私が生んだのでないわよ」


 とそこはかなくなに否定しつつも、


「でも、そうね。見せてあげるわ」

 

 そうして彼女の部屋を素通りし――まるで彼女は召喚獣たちを背後にかばうようにして、俺をそこへと導いた。入ってみると、そんなに広い空間という訳ではないが、まさにびっしりとであった。木のごとくのものもあれば、珊瑚のごとくのもの、そして、もっと幾何学めいた形のもの――想い浮かんだのは、教科書で見た雪の結晶であった――まであった。


「そういえば、聞こう聞こうと想っていたことがあるんだ。ここって、行き止まりみたいだけど、この下や向こうにも部屋はあるの?」


「ないわ。あなたの部屋と私の部屋、それにここだけのとても小さなダンジョンよ。せっかくだから、味見してみたら。気に入ったものがあったら教えて。持って行くときの参考にするわ」


 俺は早速、三助スライムとともに味見を始めた。


「おう。こいつはうめえぞ。どうだ?」


 そういい、下を見やると、あぐらをかく俺の膝の上で三助はぺろりとばかりたいらげる。まさに、体に小さくない穴が開き、そこに入れるのだ。決してうまいという答えが返って来る訳ではないが、その想いが伝わって来るから不思議なもの。まさに以心伝心という奴である。

 ここまでお読みくださり、ありがとうございました。ここで第1部完です。次から、第2部、『ダンジョン経営篇』が始まります。引き続き、お楽しみいただければ幸いです。

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