表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運ゲー野郎のモブ転生――ダンジョン連合vs運営政府  作者: ひとしずくの鯨
最終部 そこが地獄の一丁目な件
109/129

69番地 レイド12

 ダンジョン『運ゲー野郎』を目指す第23人格Cであったが、未だその目的地への手がかりを見つけられずにいた。その機体である孫悟空が乗る筋斗雲――全てはこいつのせいであった。何せ、こいつがとんでもなく使いにくい。1回飛ぶたびに宙返り――これはまだ許せるが――その次の瞬間には、どことも知れぬところに至っておる。何か、見知った建築物なり地形なりが現れるまでと想い繰り返しておるが、延々と見だせぬ。


 ついには、これは無理だと想いなし、筋斗雲に寝転がってぼーっとしておった。空か。空はやっぱり高いな。上空には雲がたなびいておった。雲もあんなに上にある。地上から見上げるのと、そんなに変わんねえ。でも、何で、あんまり変わんねえんだろう。ああ。そうか。筋斗雲に乗ってるから、想い至らなかったが、そんなに高く浮かんでる訳じゃあねえんだ。


 なら、より高く浮かべば……どうなる? より遠くが見渡せるんじゃねえか。そうしたら、手がかりとなるものが見つかるかもしれねえ。なら、試してみねえ手はねえな。


 筋斗雲を上に向け、己はずり落ちそうになりながらも、まさに雲のにつかまり、ひとっ飛びする。


 視界が暗転し、何も見えなくなる。あまりに高く上り過ぎたせいだろうか?


 〈析出個体が迷い込んだ〉

 声が聞こえた。というより、声ならぬ声が意識の中にひらめいた。


 〈個体は必然の呪いにかけられておる〉


 〈我らは祝福されたる偶然に留まるべきだ。なればこそ、永遠の非在のうちに安寧を得られる〉


 〈母上は、非在の持つ永遠性に耐えられなかった〉


 ふと想う。もしや、ここは母海ぼかいなのか? これまで母海が具体的にどこにあるかなど、考えたことはなかった。自らが至れるようなところにあるなどとは想いもよらなかった。しかも、それが我らの頭上にあろうとは。


 〈異物はあるべきところに戻せ〉


 〈呪われたる必然の世界へと〉


 〈不幸なる存在の時空へと〉


 頭にひらめく言葉は永遠に止まぬと想われたが、やがてまったく聞こえなくなり、代わりに眼下に大地が見え出した。どうやら少しずつ落ちているらしい。


 何となく、地上の木々などが見定められるほどに降りたころ――それでもまだ最初飛んでいた高度よりずっと高い――目立ち、加えてよく見知っているものをついに見だした。第6人格が換装していた基地である。結局、最初のところに戻っちまってるじゃねえか。


 彼ははやる心を抑えつつ、飛び降りても大丈夫な高度まで下がるのを待つ。孫悟空の機体に乗り慣れていないので、最悪、落下の衝撃に耐えられずということもありえたが、そこは一か八かでやるしかなかった。ここで時間を浪費しては、運ゲー野郎と敵の戦いに間に合わぬとなりかねぬ。


 そして、そのあと基地へと向かい――そこには己が乗り換え前に乗っておった猿もどきがあるはずであった。再度、それに乗り換え、運ゲー野郎に向かう気であった。


「呪われてるのは必然の世界じゃねえ。この孫悟空に乗る俺だ。そして不幸なのは存在の時空じゃねえ。今の俺だ」

 心中の想いが、想わず口をついて出ておった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ