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運ゲー野郎のモブ転生――ダンジョン連合vs運営政府  作者: ひとしずくの鯨
最終部 そこが地獄の一丁目な件
106/131

66番地 レイド9

「母上は本当のことを言っておると想うか?」


 そう阿修羅王が問うのに対し、巨大白猫が答えるには、


「はったりに決まっておる。渾身こんしんの一撃を放てば、滅塵めつじんが壊れるというのは、母上も知っていよう。それを防御力が高いで防いだに過ぎぬ。無論、母上自身が選んでとわしはみるが。

 仮に母上が言う如く、運任せで卦が出るとすれば、わしらに有利になるだけ。もっともわしらは陰陽あれについては良く知らぬ。それゆえの警戒はおこたるべきではなかろう」


「なるほど。何にしろ、こちらが攻めれば、母上は何らかの卦で受けざるを得ぬ。そなたの滅塵は切り札ゆえ、いて用いるのは望ましくなかろう。ここは、まずわしが露払いと行こう。それにこの属性アップの間が、阿修羅王の術にどう感応するのか、楽しみでな」


 そのすらりとした体、更には面立ちもほっそりとし、見ようによっては女性の姿かとも見まごう。そして、その6手もやはりすらりと伸びる。これに乗る第6人格は攻撃を命じるだけで良い。あとはオート・モードで阿修羅王がやってくれる。右上手と左下手が結ばれ、その両の手指にて複雑な印をなす。


雨神権現うしんごんげん


 その柔和な笑みをたたえておる口元が開き、生命の息吹の如くの声を出す。雨がどっと振り出し、風神のなす風と混じり合う。たいして時をおかず、巨大な渦となり、陰・陽を呑み込む。


 阿修羅王と距離を取った白猫は福ダルマ人形のかたわらへ。今や、2体して宙に浮かんでおった。


「しかし、あれがオートの戦い方とはなかなか信じられぬな。最初の攻撃からして風神との連携を図るとは」

 と福ダルマ人形。


「そなたも知っていようが、オート・モードには上書きにまつわる伝承がある。ああした優れた機体には、部分上書きされた戦闘狂の偽・人格が埋め込まれており、オート・モードはその人格が担っておると。それが本当なら、わしらよりうまく戦えたとしても不思議ではない」


「上書きか。種族の黒歴史にほかならぬものに、今のわしらが助けられておるかもしれぬというのも、何とも皮肉なもの」


 ただ、やがて荒れ狂う渦の奔流とまったく無縁という如く、陰・陽が浮かび上がって来て、まるで、あえてという如く、その渦のわずかに上――そのスライムの体が触れるか触れぬかのところに留まる。


「64卦の1たる『同人』を得た。大川たいせんをわたるに利あり」

 男女の二声が告げる。


「あれが偶然に出た卦と想うか。どう見ても選んでおるだろう」と白猫。


「わしらの意思など偶然と同じようなものということかもしれぬ。万物を貫くことわりと比べれば」


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