65番地 レイド8
「うふふ。簡単。簡単」
ヒュプノスが嬉し気な声をあげる。
ダンジョン『運ゲー野郎』の属性アップの間「地獄変」にては、相変わらず雷は鳴り続けておったが、そこで迎え撃つべきクラゲ似のモンスターはぐっすり眠っておった。
「第3の記憶によれば、こいつがこのダンジョンの中ボスらしい。ラス・ボスには多少なりとも歯ごたえが欲しいところだな」とは、タナトスの裏返りがちな声。
「ふふ。無理だよ。僕らどちらか1人だけだったら分からないけどね。でも、こいつ、うるさいね。上書きしちゃうね」
「好きにしろ」
ヒュプノスは翼をはためかせると、宙に浮かんだまま眠っておるモンスターに近づき、その頭と想われるところに、手を押し当てた。
「痛っ」ヒュプノスが想わず悲鳴をあげる。
「大丈夫か?」
「まったく、タナトスは心配性なんだから。やっぱ、直接だと、威力が増すようだね。でも、これくらい、平気だよ。えいっ。上書き」
そして、やはり先頭をヒュプノスが翼をパタパタさせつつ――半ば飛び半ば歩く如くに――軽快に進み、
次にどこか物憂げなそして翼はしっかりと閉じたまま歩くタナトスが続き、
まるで内心のイヤイヤが反映している如くの遅れ気味の不動明王が最後尾をつとめた。




