60番地 レイド3
第3人格はまったくやる気を失っておった。昇格の望みがまったくなくなったのだ。当たり前である。加えて、召喚師殺害を最終目的とするなどと訳の分からぬことを言い出す始末。正直、女王はおかしくなったとしか想えぬ。
ただ、『運ゲー野郎』の攻略に向かうことそのものはあらためる気はなかった。下手に『地獄巡り』に同行して、己が身を危険にさらしたくはなかった。また、『運ゲー野郎』なら、他の部隊の目もない。さぼり放題である。適当に時間をつぶして戻れば良い。
そう想いなした彼は当然不動明王に換装しておる。
『地獄巡り』の入り口から入っては、目当ての『運ゲー野郎』の最初の間には飛ばされず、地上に戻る。そのたびに、付き従う2体――偽7の乗るヒュプノスとタナトスを電磁ムチにてうちすえ、己のなぐさみとする。
「どうだ。犯罪者ども。罰をくだしてやるぞ。喜びにうちふるえよ」
上半身裸の有翼の美少年の背にムチがふられるたびに、血にまみれ朱色まだらとなった白い羽が宙を舞う。2人の少年神が体を震わせるは、痛みにさいなまれるゆえであった。
そして、ようやく『運ゲー野郎』に至ると、そこでもまた少年にムチをふるう。そこに至れるを祝うごとく、うちすえる回数を増やして。2人の少年が度々互いを見かわしておるのに気付かぬままに。