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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

砂漠の国の物語

作者: 扇鈴千鶴

 砂漠の国のスルタン王は、とても美しい夜伽の姫を寵愛していた。


 夜伽の姫、シェラハザードは歌が上手く、スルタン王を夢中にさせる。


 姫の切ない旋律から語られる物語は、男女の悲しい愛の歌。聞く者は心打たれ、涙を流す。


 スルタン王は毎夜毎夜、姫に歌を歌わせ、その声に涙を流し愛おしむ。


 しかしそれを面白く思わないのは、スルタン王の側室たち。スルタン王がいない間に、姫を亡き者にしようと側室たちが動いた。


 騙されて劇薬を飲まされた姫は、命こそ助かったものの、喉は焼けただれて二度と歌を歌えないしゃがれた声になってしまった。


 それを嘆き悲しんだのは、スルタン王。姫の声を取り戻そうと、彼女を連れて旅に出る。


 砂漠の熱い熱風が吹き荒れる中、二人は東の国を目指した。東の国には、世にも珍しい人魚というものが取れるらしい。


 その歌声は、この世のものとは思えない、美しい旋律を歌うという。


 東の国に着いた二人は、さっそく人魚の声を手に入れる。人魚の声を食べて、喉を潤わせた姫が、愛するスルタン王に向けて歌を歌った。


 その歌声はまさしく、姫のあの美しい旋律だった。


 最後まで歌い切った姫はしかし、この世の終わりを目にする。姫の愛するスルタン王は、事切れていた。


 泣きつく姫に、心配した東の国の人々が教えた。


 人魚の歌声は、聞く者を夢見心地にするが、最後まで歌声を聞いた者は死んでしまうのだと。


 姫は三日三晩泣き続けた。


 そして砂漠の国に帰り、魔法使いに生き返りの術を聞く事にした。魔法使いは、一人を生き返らせるのに、百人の命が必要だと言った。


 それを聞いた姫はまず、砂漠の国のスルタン王の側室たち全てを、自らの歌声で死なせた。側室たちの数は二十人。あと八十人の命がいる。


 姫は旅に出て、出逢った人々を歌声を聞かせて殺していった。そうして百人の命を奪った時、噂を聞いた砂漠の民たちに殺されてしまった。


 スルタン王は生き返った。しかしすぐに、自分の傍にいない姫を探して旅に出た。そこでスルタン王は、噂を耳にする。


 なんでも、素晴らしく美しい旋律の歌声で人々を虜にする、首があるのだと。しかし、最後までその歌声を聞いてはいけない。死を運んでくるからと。


 スルタン王は、すぐにその噂の場所へと向かう。


 そこは見世物小屋で、あの美しいシェラハザード姫の首があるではないか。スルタン王はすぐに、見世物小屋の者たちを皆殺しにして、姫を連れ出した。


 人魚の声を食べた姫は、首だけになっても生きていた。悲しみに暮れたスルタン王は姫の首を抱き、東の国の海に沈んだ。


 それからというもの、東の国の海では、シェラハザード姫の悲しくも切ない歌声が、波の狭間に聞こえてくるのだという。






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― 新着の感想 ―
なるほど危険な姫ですね
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