第99話 スキル【献身】
第97話 ピエロっち見守り団 と第98話 南の湖の森アゲイン が順序逆に投稿してしましました。訂正してお詫び申し上げます。
…えっと、どなたでしょうか?
【遠見】を解除して周りを見渡すが近くには何もいない。
『我は汝が木の上から見ていた存在である』
え? ってことは、ゴブリンジェネラルに大斧を叩きつけられてたオブジェ…って事でいいのか?
『我は窮地の中にいる守りし存在。再度問う。異世界の者よ、汝は我を助けるか否か』
問いかけられたんで、【遠見】を使ってさっきの影を見る。…うん、確かに目が合ってる気がする。影だからよくはわからんけど。
いやあ、助けるかって言われてもな。このゴブリン地獄とゴブリンジェネラルからってことでしょ? …無理じゃん。ゴブリンジェネラルなんてあんなのちょっとしたビルだもん。10階建てくらいはあるでしょ。無理です。
「最後に問う。我が直属の眷属との契約を持つものよ、汝は我を助けるか否か」
ん? 眷属の契約……契約物の事か? 星獣を眷属にってことは…え、この影も星獣ってことか? あ、表記が「???」から「星獣???」に変わった。
ピンポーン
『スキル【献身】が発動可能です。発動しますか?』
はい? 【献身】? そういやそんなスキルあったな。存在すら忘れてたけど、どんなスキルだっけ?
【献身】
対象の身になって親身になって行動する力。
対象との特別な関係を築くことが可能となる。
出た、漠然としてよくわからん表記。特別な関係ってなんだよ。結婚でもするのか? だったらエリゼさんみたいな癒し系がいいんだが?
まあ、冗談言ってる場合じゃないか。うーん、折角発動するって言うんだし、発動せん理由は…ないよな。
『発動』
俺がそう言うと、木の上にいる俺の周りに等身大のスクリーンがいくつも現れ、俺を囲むようにして回りだす。
そして勢いよく回るスクリーンの内の一枚が俺の目の前に移動して光ったと思ったら、次の瞬間、俺は見覚えのある風景を上から見ていた。
「ここは…南の平原だよな。あそこが湖の森かな? うおおー」
高いところから夕日に照らされた平原を見ていると思ったら、そこから急に俺の視界が急降下。で、地面に衝突寸前で水平方向に向きを変える。そこからはもの凄いスピードで地面スレスレを飛ぶように移動していく。まるでツバメにでもなった気分だ。
そして視界の変化が緩やかになり移動が終わると俺は湖のほとりにいた。目の前には「巨大な影」と「小さな光」。影の方はわかる。俺に話しかけてきたオブジェだ。光の方はよく分からん。で、その2つが向かい合っている。
巨大な影が小さな光に頭を垂れると、小さな光は巨大な影の額に手を置いた。
「わたしはこの世界を守る者。君はこの平原を守ってくれるかい?」
「はい、わかりました。わたしはあなたの要望に応えるために存在するもの。この平原を守ります。与えられたこの命に代えて」
「ありがとう。感謝しているよ」
小さな光がそう言うと、俺の視界は再び眩しい程に白くなった。
そして木の上に戻った俺の目の前に次のスクリーンが移動する。
スクリーンは光り、その光が再び俺を包み込んだ。
光が収まると、そこはさっきと同じ湖の畔。だがいるのは影の方だけ。小さな光はいない。その代わりに巨大な影を囲むように、大小さまざまな大きさの影たちがいた。
巨大な影が優しい声で話し出す。
「我が眷属、我が子らよ。我は我が子らを守る。子らは我の使命の一端を担え」
「はーい」
「承知した」
「あいよ」
「ママが言うならいいよ」
「……御意」
「しょうがないな~いいよ」
……
……
そこで再び視界が白くなる。
そして次のスクリーンが目の前に現れて光る。
今度は薄暗い平原だ。俺はどんよりとした空の下、重苦しい雰囲気の平原に立っている。
「ん? あれは…さっきの影か?」
遠くをゆっくり動いている影が見える。遠くても分かる。あれはさっきの巨大な影だ。
巨大な影はあちらこちらとフラフラ彷徨っているようだ。その姿からはさっきまでの力強さは全く感じられない。
「嗚呼、大切な我が子、我が眷属はどこだ」
「嗚呼、我が子、我が守ると誓った子はどこへ行った」
彷徨う巨大な影の前に無数の人型の魔物、ゴブリンの群れが現れる。
巨大な影はそれを見て地響きのような咆哮を上げる。
その空気の振動によって弾かれた多数のゴブリンが宙を舞うように飛ばされていく。
それを見たゴブリンの群れは恐れるようにして巨大な影から距離を置く。巨大な影の周りの空間だけがぽっかり開く。
そこへ今度は巨大なゴブリン、ゴブリンジェネラルが現れた。
巨大な影はゴブリンジェネラルを見ると瞬時に襲い掛かる。巨大な尻尾がジェネラルの真上に落とされる。
ゴブリンジェネラルは両腕を交差させ巨大な影の一撃を受け止める。が、打ち飛ばされてゴブリンの群れの中に突っ込んだ。
濛々と立ち込める土煙の中、ゴブリンジェネラルは立ち上がると何度か首を振り…笑った。さも嬉しそうに。そして、ゴブリンたちに合図を送る。
すると、ゴブリンジェネラルの後方から何かを担いだゴブリンたちが現れる。
ゴブリンたちに担がれているその存在を確認した巨大な影は天高く首を突き上げる。そして悲痛な叫びが平原に響き渡った。
ゴブリンジェネラルはその様子を見て、悠々と巨大な影に近寄っていく。
そして影の直前まで来るとその拳を振り上げ、殴る、殴る、殴る。
巨大な影はその猛攻を避けようももしない。ジェネラルが叩きつけてくる拳をすべてその身に受け続ける。
ゴブリンジェネラルは先の打ち飛ばされた怒りをぶつけるかのように影を殴り続けた。しかし、散々殴った後にひたと殴るのを止める。そして後ろで見守るゴブリンたちに右手を差し出した。
すると100体を優に超える数のゴブリンの一団が巨大な黒斧を担いで運んでくる。巨大なジェネラルの上半身ほどもある大斧。ジェネラルがその柄を握ると、漆黒の斧刃からは赤黒い炎が噴き出す。
その様子を満面の笑みで確認したゴブリンジェネラルが巨大な影に振り返る。
そして振り返る勢いそのままに、赤黒い炎を纏った漆黒の大斧が巨大な影に向かって振り上げられた。
大斧は全く動こうとしない巨大な影の頭に向けて叩きつけられる。
巨大な影は朦朧とする意識の中、今にも自分に叩きつけられようとしている漆黒の斧を見る。巨大な影は最後の力を振り絞ってそれを受け止めた。しかし、その漆黒の斧刃は無情にも巨大な影を両断せんとばかりにジェネラルによって押し込まれてくる。最後を覚悟した巨大な影。だがその朦朧とする心にあの小さな光との約束が過る。最後の力を集中させる巨大な影は落ちかけた視線を強引に持ち上げる。赤く染まった視界に映る紫の空。その空に向かって突き抜けんとする大木。そこにはこちらを見下ろす風変わりな容貌をした異人の姿があった。その懐から発せられる心強い気配と共に。
「異世界の者よ、汝は我を助けるか否か」
❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖
あれ、【献身】作動した? 嘘?
確かに条件は「窮地に立ったNPC」ではあるが…
え、でも、Z相手に発動するの?
一文字AIだぞ。
一文字AIをNPCとして一括りでいいのか?
マジで?
――――――――――――――
◇達成したこと◇
・大きな影から話しかけられてビビる。
・【献身】を発動する。
・大きな影の背景を知る。
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
肩書:マジョリカの愛弟子(EX)
職業:上級薬師
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1(+3)
敏捷:1(+13)
器用:1
知力:1
装備:ただのネックレス
:悩める道化師のトルピード
:仙蜘蛛の道下服【耐久:+3、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気)】
:飛蛇の道下靴【敏捷+13】
:破れシルクハット
固有スキル:【マジ本気】
スキル:【正直】【薬の基本知識EX】【配達Lv10】【勤勉】【逃走NZ】【高潔】【依頼収集】【献身】【リサイクル武具】【採取Lv10】【採取者の勘】【精密採取Lv3】【調合Lv10】【匙加減】【投擲Lv10】【狙撃Lv2】【鍛冶Lv9】【調薬Lv10】【団粒構造Lv2】【農地管理Lv4】【農具知識EX】【料理Lv1】【広範囲収集】【遠見】【工作Lv1】【釣りLv1】【木登り】【よく見る】【自動照準】【下処理】【火加減】【創薬Lv4】
所持金:約1045万G
称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】
従魔:ネギ坊[癒楽草]
◎進行中常設クエスト:
<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>
〇進行中クエスト:
◆契約◆
名前:ネギ坊
種族:瘉楽草[★☆☆☆☆]
属性:植物
契約:スプラ(小人族)
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1
敏捷:0
器用:1
知力:5
装備:【毒毒毒草】
:【爆炎草】
:【氷華草】
固有スキル:【超再生】【分蘖】
スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】
《不動産》
畑(中規模)
農屋(EX)
≪雇用≫
エリゼ
ゼン
ミクリ




