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第98話 南の湖の森アゲイン


「なによ、ゴブリンなんて出てこないじゃないの」


 そう言いながらも楽しそうに採取に勤しむ海坊主さん。



 俺達6人は臨時パーティーを組んで南の平原を進んていった。因みに俺が《《ちょっとだけ》》歩くのが遅いせいで、他のみんなは採取や狩りを楽しみながらの移動となっている。


 全然ゴブリンが出てこないもんだからなんか俺が気を遣って、前に来た時に発見してた【毒草】や【毒毒草】の群生地を案内していったのだ。


 くそ、俺だって採取したいのに。



「あ、あそこの緑のとこ群生地ですよ」


「え、あそこ? やったー」



 俺は【遠見】【採取Lv10】【採取者の勘】のトリプルコンボで群生地を探しては教えてやってる。くそ、配達中なら俺も参戦できるのに。


 で、前に来た場所を遡って移動してるということは、あの南の湖の森へ向かっていると同義な訳で。しかし慣れない団体行動中の俺はそんな事にも気が回らず…



「あれ? げ、そうだった」


 【遠見】で見覚えのあるぼんやりとした森を見つけてようやく思い出すのだった。



「なあに、なにか見つけたの、スプラちゃん」


「あ、いえ、ちょっと危険なエリアの近くに来ちゃったみたいで」


「まあ、危険ってことは、ゴブリンがいるってことよね」


 いやいや、確定でいる訳ではないぞ。



「行っちゃいましょうか。ねえ、あんたたちってどれくらい戦えるのかしら!」


 海坊主さんが採取に励んでいる見守り団達に声を張り上げる。



「ポーションさえあれば、トレントくらいまでなら余裕です!」


「え、そうなの。やるじゃないのあんたたち」



 マジかよ。あのトレントを「トレントくらい」だと? 俺が死ぬ思いで逃げ帰ってきたあの恐ろしいトレントを。…そうか、じゃあ、ここは頼っていいってことだよな。俺は契約物担当ってことで。



「ポーションならありますよ。1人5個ずつでいいですか?」


 自分用に9個残して後は皆に配る。



「すみません、何から何まで…あの、これ品質8…なんですけど」


「はい、そうですけどなにか?」


 皆して俺を見てくるんだが、今はそれしかないし。



「スプラちゃんのご厚意よ。ありがたく受け取りなさい。その代わりバリバリ討伐するのよ」


「あ、はい! 団長!」



 団長ね。ちょっと前からなぜか見守り団の4人が海坊主さんを団長として祭り上げてるんだよな。気にしないようにしてきたけど、ここは一言俺から言ったほうがいいのか?



「(スプラちゃん、こういう臨時パーティーじゃノリが大事なの)」


 耳元でささやいてくる海坊主さん。…へえ、さよですか。



 まあ、海坊主さんがいいなら俺はいいんだけどね。



 と、まあそんなこんなでみんなであの南の湖の森へ移動していく。



「あ、因みに、森の中にリザードドッグが出ますんで気をつけてくださいね。連携したり仲間呼んだりしますから」


「「了解です、キャプテン」」



 …俺は乗らんぞ。




「そっち2匹行った!」

「了解」


「ウィンドカッター使うから討ち漏らしお願い」

「りょ」


「こっち1人ヘルプ、囲んじゃうから」

「わたし行く」



 海坊主さんは一人で当たり前の様にリザードドッグを圧倒しているが、団員たちの動きもそれはそれで凄かった。特に連係が凄い。お互いの事をよく知っていて指示があるとすぐに対応している。あのずる賢いリザードドッグを連携で凌駕するなんて…ちょっとズルい。



「やっぱりリザードドッグ辺りだと戦闘も楽しいわ」

「今までリスばっかりだったもんね」

「キャプテンのポーションのおかげです」


「はい、どうも」



 一頻りリザードドッグを狩って満足げな団員たち。リザードドッグのドロップの【ドッグ皮】が欲しかったらしい。なんか、みんなでお揃いの防具を作るんだとか。


 いやあ、そんな楽しみ方もあるんだな。そっか、じゃあウェイブにも…って、いやいや、なんでいちいちウェイブが出てくるんだよ。



「みんなポーションはまだありますか?」


「はーい、まだ1個しか使ってないでーす」



 なんか先生と生徒みたいなんだが。



「じゃあ、皆さん、ここで休憩しててください。俺はちょっと上から湖の様子を覗いてきますんで」


 海坊主さんに後を任せて、俺は近くの太い木にスルスルと登っていく。それを見て団員たちから歓声が上がる。うん、悪くない。やっぱり持つべきものは【木登り】スキルだよな。ステータス補正万歳。



 これまで移動で足を引っ張ってきた鬱憤を晴らす勢いで木に登っていく。そして、森の木々の上に出ると、遠くに湖が見えた。


「ん? なんだあれ」


 なんか湖の近くに大きなオブジェが建っている。前に来た時はあんなのなかったのにな。それに湖の周りがなんか黒い。



「ちょっと失礼をば」


 スキル【遠見】を発動し拡大して様子を確認する。



「うん、ゴブリンだな。無数の…」



 湖には岸を埋め尽くす様にゴブリンがひしめき合っていた。その数、計測不能。野鳥の会の人たちでも数えられんだろう。なんか蠢いてるし。で、その中に2体の巨大なオブジェが建っている。



「あれ? あのオブジェ…なんか動いてね?」



 俺が見てたら突如、片方のオブジェか動きだし首がこっちに向く。その凶悪な顔に赤く光る目が【遠見】越しに俺に視線を合わせてくる。いや、めっちや迫力あるな。なんかのイベントか?




ピンポーン

『ゴブリンの群れに遭遇しました。これより遭遇戦が開始されます』



 はい? ………おい、おいおいおいおいおいおいおーい。待てい。ちょっと待って。なに、今のアナウンス。



 ステータス画面をチョイチョイしてアナウンス履歴を読み直す。うん、ゴブリンの群れの遭遇戦って書いてある。



 え? なに、俺、【遠見】で見ただけだよな。なんで戦闘開始になるんだ? いや、そんなこと聞いてないぞ。


 これまで【遠見】で確認して【狙撃】してたけど、こんな事なかったし…。


 ん? あ、でも戦闘中だから【狙撃】できてたってことか? …おい、だとしたら【遠見】って危険すぎるだろ!




「GYAOOOOOOOOOOS!!」


 俺がグダグダ考えていると、それを一喝するように辺り一帯にとんでもない咆哮が響き渡った。


 再度【遠見】で湖を見ると、俺と目が合った方の巨大なオブジェがどでかい大斧を振りかざしている。


 え? もしかして、あれモンスターなの? オブジェじゃなくて? ってかデカすぎるんだけど? あ、モンスター名が出た。えっと、ゴブリンジェネラル? ジェネラルって日本語で将軍様だよな。…って事は、ボスじゃねえかよ!



「これはマズイことしちまった。皆に報告しないと」



 急いで木から降りてみんなの元に戻る。


「あ、スプラちゃん、なに、さっきのアナウンス。それに、すっごい大きな叫び声だったけど」


「すみません、湖確認したらゴブリン遭遇戦始まっちゃいました」



「え、そうなの? じゃ、ゴブリン討伐できるってことね」

  

 討伐…あれを? できるのか?



「はい、ただ、相手は何百…何千かもしれないゴブリンの群れとゴブリンジェネラルです。ジェネラルめちゃくちゃ大きかったです」



「え、それってボス級って事? じゃ、もしかしたらのこのイベントの主役になっちゃうってってこと? え、やだ、どうしよ。プロモーションに使われちゃうじゃない」


 海坊主さんがなせかすごく嬉しそうだ。



ドゴーーン


「きゃっ」

「うわっ」

「うおーっ」



 海坊主さんの浮かれた言葉をかき消すような轟音が湖の方から響いてくる。そして、地面が揺れる。


 なんちゅう音と衝撃だよ。

 


「スプラちゃんは危ないから木の上の方がいいわね。取り敢えず、状況が確定するまでは降りてこないほうがいいわ。わたしはこの子たち連れて討伐に回るから」



 海坊主さんには前もって俺が紙耐久のHP10って事は伝えてあるから、ここは遠慮なく木に移動させてもらう。


 

 再びスルスルと登って湖を確認する。


 すると、ゴブリンジェネラルは振り上げていた大斧をもう一つの大きなオブジェに叩きつけていた。


 しかしすっげえなあの斧。ゴブリンジェネラルの上半身くらいあるんだが?


 叩きつけられた大斧を腕のようなもので防いでいるもう一つの大きなオブジェ。こっちはジェネラルのようにはっきりと姿が見えない。なんかもやっとした影に見える。その影は大斧を受け止めて崩れかける体勢を何とか立て直そうとしているようだが…あれ? 今、影の方と目が合わんかったか? …んー、気のせいか?



「異世界の者よ、汝は我を助けるか否か」


 

 …はい? えっと、どなたでしょう?




❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖


あーあ、作動させちまった。


マジで【遠見】の仕組みわかってなかったのかよ。

安全圏から一方的に攻撃できるスキルなんてある訳ねえだろが。


どうすんだよ、この状況。

大型レイドボスに6人で勝てる訳ねえだろ。


せっかくカメラ視点を限界まで用意したのに。

ちっ、無駄になっちまった。


あーあ。プロモーションどうしよ。参ったな。

もうコリンズに任せるか。

300人もいれば何とかなるだろうし。


――――――――――――――

◇達成したこと◇

・討伐メンバーを南の湖の森に案内してしまう。

・メンバーに【HPポーション】を配って変な目で見られる。

・木登りして調子に乗る。

・【遠見】スキルで遭遇戦を開始させる。

・だれかに話しかけられる。




◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 肩書:マジョリカの愛弟子(EX)

 職業:上級薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+3)

 敏捷:1(+13)

 器用:1

 知力:1

 装備:ただのネックレス

 :悩める道化師のトルピード

 :仙蜘蛛の道下服【耐久:+3、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気)】

 :飛蛇の道下靴【敏捷+13】

 :破れシルクハット

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【正直】【薬の基本知識EX】【配達Lv10】【勤勉】【逃走NZ】【高潔】【依頼収集】【献身】【リサイクル武具】【採取Lv10】【採取者の勘】【精密採取Lv3】【調合Lv10】【匙加減】【投擲Lv10】【狙撃Lv2】【鍛冶Lv9】【調薬Lv10】【団粒構造Lv2】【農地管理Lv4】【農具知識EX】【料理Lv1】【広範囲収集】【遠見】【工作Lv1】【釣りLv1】【木登り】【よく見る】【自動照準】【下処理】【火加減】【創薬Lv4】

 所持金:約1045万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]


◎進行中常設クエスト:

<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

〇進行中クエスト:



◆契約◆

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★☆☆☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【氷華草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】



《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ


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