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第97話 ピエロっち見守り団

「じゃ、行きましょっか」


 ルンルンの海坊主さんと横並びで街中を歩く。これからいよいよゴブリン討伐に向かうところだ。契約物があるからか、海坊主さんのオネエ声がいつも以上に軽い感じがする。よっぽど楽しみなんだろう。



「あのう…!」



 すると、俺たちの行く手を遮るように4人のプレイヤーが現れる。



「あら、なにか御用?」


 ルンルン気分を妨げられてちょっとだけお兄を見せる海坊主さん。ちょっと、これは荒れる予感? 街すら出てないのにまだ早いっすよ、海坊主さん。



 だが、そんな海坊主さんの迫力にも負けず、4人のうちの1人が一歩前に出る。


「あ、いえ、わたしたち、ピエロっちに用があって」



「…だって、スプラちゃんとうする?」



 そう言って俺を見る海坊主さんの視線はちょっと殺気立ってる。でも、ここはちょっと待ってもらおう。だって、目の前の4人に見覚えがあるからさ。いろいろ思い出したわ。



 1人は恐慌状態で蹲った俺を見て、迷惑プレイヤー達を押しのけて逃走の道を作ってくれた人。


 1人は畑の入り口にいたストーカープレイヤーを追い散らしてくれた怖くていい人。


 残り2人は、先の2人と一緒に一角亭で騒いでた人たち。


 先の2人にはちょっと恩があるような、ないような。いや、あるな。



「急いでるんで、手短にお願いしてもいいですか?」



 そう、時間は既に午後7時過ぎ。少し前のアナウンスでは討伐率75%を超えていた。今だともしかしたら80%超えてるかもしれない。



「ありがとう。わたしたち、ピエロっちに謝りたくて」


「謝る?」


 はて、謝られるような事なにかされたっけ?



「わたしたち、ピエロっち見守り団なの。あ、わたしたちで勝手にやってるだけなんだけど…」



 見守り団? なんそれ。



「ああ、あなたたちだったのね」


 それを聞いた海坊主さんから殺気が消えていく。殺気が消えて今度は「困った子たちね」の雰囲気に。



「わたしたち、ピエロっちの追っかけみたいなことしてて、それを掲示板であれこれ話してたんです。特にピエロっちがNPCと仲がいいことを自慢したくて、あちこちの掲示板で話しちゃってて」



 掲示板かあ。そういや、ウェイブどうしてっかな。本当にやめちまったのかな。



「今回の騒動はわたしたちの軽はずみな行動が原因なんです」


「はあ…は?」


 そこからは海坊主さんも入って色々と説明してくれた。



 簡単に言うと、この子たちはなぜか俺のファンなんだそうだ。凄く意味不明なんだが、ま、そこは置いといて。で、俺の推し活として、俺がNPCと交流してた様子を掲示板で吹聴していた。そこに今回のイベントがやってきた。契約物が星獣ゲットの鍵。そこまでならよかったが、契約物にも格があることが知れ渡るやいなや、自分たちが吹聴してたピエロ情報によって俺に注目が向いてしまった。それで大騒ぎになってしまって、この子たちはこの子たちなりに何とかしようとGMに掛け合ったりしたが、俺本人若しくはパーティーからのコールがない事でGMの動きは消極的だった。


 それで仕事と授業だった2人も急きょログインして事態の収拾に動いていた。で、ある時に掲示板に新しい情報が上がった。なんでも街中で俺に付きまとっていたプレイヤーが全てのNPCから総スカンを食らったと言うことだ。一角亭とトカゲの尻尾亭は入店すらできず、その他の店でも軒並みふっかけられたり、アイテムの買取料が8割も安くなったらしい。唯一ギルドは普通に使えたが、受付の態度は氷のように冷たくなった。


 なるほど、それで付きまとう奴らがいなくなったのか。



「この度は本当に申し訳ありませんでした。反省の意を込めて、見守り団は解散します。そしてわたしたちの全財産を譲渡させてください」

「…」


 うーん、それってなんか違うよな。別に迷惑掛けようとした訳じゃないんだし、むしろこの子達はこの子達なりにFGSを楽しんでたわけだし。それに…。



 実は俺も同じ事をした事がある。高校の時に好きだった同級生の事を褒める投稿を匿名でしたのだ。目立たない子だったけど、人知れず花壇の世話をしていたり、学校周りの掃除もこっそりしていた。それを俺が投稿しちゃった事で、その子は暫くの間、偽善者扱いされてしまった。それが辛くてリアルに心臓が破れて血反吐吐くかと思うくらい思い詰めたっけな。3週間くらいしてその子へのヘイトが収まり始めた頃、俺の頭には10円ハゲが1つできただけだったが、あの時は本当に毎日生きた心地がしなかった。俺があの子の代わりにヘイトを受けられたらと何度も思ったがコミュ障の俺にできる訳もなく…。



 それに比べたらこの子たちは偉いもんだ。ちゃんと自分たちで償うために行動してるんだから。


「そんなの全然いいっすよ。譲渡も要りませんし、見守り団だって解散しなくてもいいんじゃないっすか? あ、なんなら本人公認でもいいっすよ。4人でFGS楽しんでくださいよ。それが俺の要望です」


「え…。いいんですか? 本当に?」


「モチのロンです」


「え、餅? ロン?」


「もちろんいいですってことよ。そこは流してあげて」



 照れ隠しに出てしまう俺の癖を海坊主さんがフォローしてくれる。



「え、本当に? マジで?」


「スプラちゃんがいいって言ってるんだから、そう何度も聞かないの。あんたたち、そんなことより、契約物は手に入れたの?」


「え、そんなの無理だし、諦めて…」

「じゃ、わたしたちについてきなさいよ。わたしたちこれから討伐に行くのよ。2人とも契約物持ってるからあなたたち次第で加護貰えるかもよ。間違いなく高ランクよ、高ランク。どう?」


「え、でも、そんな図々しいこと…」


 いや、そこで俺を見られても。ここで俺が「お前らなんかと行くのなんてお断りだ!」なんて言うと思うのかよ。この流れでそれはないだろ。



「嫌じゃなければご一緒にどうですか? 沢山いたほうが楽しそうだし」


 コミュ障の俺が言うセリフじゃないんだけどな。まあ、この4人なら多少緊張するくらいで何とかなるだろ。



『ゆら〜♪』


 お、ネギ坊も賛成か。



「あー、今、聞こえた。ゆらって。やったー、やっと聞けたー!」


 おそらく学生であろう元気っ娘が声を上げる。それにつられて他の3人も肩の力が抜けたのか、徐々に口数が増えてきた。


 ゴブリン討伐か。なんか楽しくなりそうだな。



❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖


ほお、この4人なかなかやるじゃんよ。

これなら品格スキルの1つくらいなら習得できるかもな。


ま、俺の担当じゃねえしどうでもいいんだけども。


――――――――――――――

◇達成したこと◇

・騒ぎの全容を知る。

・見守り団を公認してしてしまう。

・見守り団も一緒にゴブリン退治に誘う。




◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 肩書:マジョリカの愛弟子(EX)

 職業:上級薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+3)

 敏捷:1(+13)

 器用:1

 知力:1

 装備:ただのネックレス

 :悩める道化師のトルピード

 :仙蜘蛛の道下服【耐久:+3、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気)】

 :飛蛇の道下靴【敏捷+13】

 :破れシルクハット

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【正直】【薬の基本知識EX】【配達Lv10】【勤勉】【逃走NZ】【高潔】【依頼収集】【献身】【リサイクル武具】【採取Lv10】【採取者の勘】【精密採取Lv3】【調合Lv10】【匙加減】【投擲Lv10】【狙撃Lv2】【鍛冶Lv9】【調薬Lv10】【団粒構造Lv2】【農地管理Lv4】【農具知識EX】【料理Lv1】【広範囲収集】【遠見】【工作Lv1】【釣りLv1】【木登り】【よく見る】【自動照準】【下処理】【火加減】【創薬Lv4】

 所持金:約1045万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]


◎進行中常設クエスト:

<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

〇進行中クエスト:



◆契約◆

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★☆☆☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【氷華草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】



《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ


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