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第94話 キノコのオブジェと生態学者

「じゃ、わたしはここで待ってるわね」


「あ、はい、すみません」



 悪質プレイヤーから守ってくれた海坊主さんは俺のクエストにボディーガードとしてついてきてくれた。本人からは「放っておけないから」って遠慮がちな申し出だったが、俺としてはありがたい限り。二つ返事でお願いした。


 そして二人で森を進むこと15分。明らかに異質なオブジェを発見する。確か子供の頃に通った遊園地の広場にこんなのがあった。乗って遊べるコンクリート製のオブジェ。今回は少しづつ色の濃さが違う茶色いキノコが3つ並んだ感じだ。


 森の奥にこんなものがあったら余計に目を引くんじゃね?とも思うが、隠蔽されてるなら中の本人にはどうでもいい事なのかもしれない。



 一人になってキノコオブジェの前で鍵を使用すると、前回のように光に包まれる。そして光が収まると、そこにはキノコ型の小屋が3つ並んだ感じの建物が建っていた。


 前回同様、真ん中にあるドアをノックすると数拍置いて「どうそ」の声。静かにドアを開けると、ここも前回同様に奥の机に向かって書き物をしている男性が一人。



「あの、ハンゾウさんの依頼でマジョリカさんからの手紙をお持ちしました」


「…ハンゾウ。ちょっと待ってくれ」



 前回は後ろを振り返る素振りすらなかったが、今回はハンゾウさんの名前を出すと動いていた手がピタリと止まる。


 そこから再びせわしなく動き始めた手がしばらくして止まり、ペンを置いて立ち上がる男性。こちらに振り返るとどっさりと髭に覆われたむさ苦しい感じの顔からぎょろりとした目が俺を見つめた。



「手紙を受け取ろう。君はそこで待っててくれるか」


 髭男が顎で指す椅子に座って、手紙が読まれるのを待つ。



「ふむ、なるほど。生態がそこまで乱れているとは。で、背後にはあ奴らの影…か」


 手紙を読み終えた髭男が、顎の部分の髭を触りながら何かを考えてる様子。ハンゾウさん、この人のこと身分のある人とか言ってたよな。偉い人なのか?



「ご苦労。ではこれが受領書だ。それとわたしからも一つ依頼を頼みたいのだが」


「あ、はい」



「実は、この森で巨大スライムの痕跡が発見されたのだ。だが当の巨大スライムの姿は確認できん状態でな。それを確認せんことにはわしはここを離れることができん。君はあのマジョリカ氏の愛弟子と言う事でもある。その知見をもってこの森の巨大スライムの痕跡を辿ってみてはくれんか」



ピンポーン

『<植物学者??の調査依頼>が発生しました。本クエストはプレイヤーレベルに対して難易度の高いクエストとなります。受けますか?』



 なんかピンポンさんが煽ってきたんだが? 「レベル1のお前には無理なクエストだけどどうするの?」的な? そんなもん、普通なら受ける訳ないだろ。俺を誰だと思ってんだ。


 ま、とか思いつつ「受ける」を選択する。だって、痕跡とか、俺もう持ってるし?



ピンポーン

『<植物学者??の調査依頼>を受けました。この依頼の達成判断はその都度行われます』



 ん? 達成判断がその都度行われる? どういうことだ? よくわからん。わからんが…



「あの、実は、その巨大スライム、俺が討伐してしまったのでもういないです」


「…?」



 髭学者が子供のように首を傾げる。おかしいな、伝わらなかったか。



「俺が討伐しちゃったんですよ。これ、その時のドロップです」



 俺がストレージから巨大スライムのドロップ【氷青の毒心(劇)】を取り出して髭学者に見せる。数舜キョトン顔で紫紺色のバスケットボールを見つめていた髭学者だったが、その体が急にわなわなと震え出す。



「こ、これは、もしや…な、やはり【青の心】ではないか。しかし、この色は…ほうほう、氷に劇毒。極レアな属性が二つも乗っかっとるのか。なるほどのう…って、な、な、なんじゃこれはーーーー!! は? は? はあああああ?」


 髭学者が叫び終わるのを椅子に座って待ってるとようやく落ち着いてくれたようす。



ピンポーン

『<植物学者??の調査依頼>を完了しました。報酬は決定されていません』



 なんか今日のピンポンさんはいつもと一味違うよな。報酬決定されてないとかどういう意味だよ。



「す、すまんな。少し取り乱してしまったようだ。わしも長年この世界の生態を研究しておるが、【青の心】が存在するだけでも稀有な現象。王都ですら過去一度だけ顕現したにすぎんものなのだ。それに氷属性と劇毒属性という超凡属性が付与された【氷青の毒心(劇)】などと言うものがこの森羅万象に存在すること自体が信じられなくての。しかし、目の前にあるのだから信じるもなにもない。これはもう知識となった訳だ」



 さすが学者というだけあって話がよくわからんが、まあつまりは「驚いちゃった」という事なのだろう。



「あと、巨大スライムならまた作れると思いますよ」


「…?」



 俺の言葉に純真無垢な顔で首を傾げる髭学者。いやいや、髭モジャ男の首を傾げる絵面はそんなに需要はないと思うぞ。



「たぶん、巨大スライムが生み出されたのっていくつもの【魔好香】を一気に使ってスライムを集め過ぎた結果だと思うんで。なんなら今からでもできるかもしれないですよ。【魔好香】持ってますし」



 でも討伐できるかどうかは知りませんけどね。ウェイブがいてくれたら確実に討伐できるんだけど。あ、でも毒釘持ってないし討伐できたとしてもドロップに属性つけるのは無理だな。



「そ、そんな単純なことで巨大スライムが生まれると。いや、スライムの特性を考えればないとも言えんか。いやいやそれでは多くの個が消滅するということに…いやだが、常識で測れぬからこそ生態もわかっておらんとも言えるか…」



 またよくわからん事をブツブツ言い出した髭学者。俺としては外で海坊主さんを待たせてる手前早く終わらせたいのだが。これは【氷青の毒心(劇)】見せたのは藪蛇だったか?



「あの、俺、外に人を待たせてるんで、取り敢えずもう行っていいですか?」


「あ、いや、そ、そうだな。あ、ではその者もここに連れてこればもう少し話せるか?」


「あ、まあ、本人が良ければですけど」




「じゃ、その巨大スライムができちゃったらわたしが討伐しちゃったらいいのね」


「お主、わかっておるのか? あの伝説の巨大スライムであるぞ。それを一人で討伐するとか正気か?」


「やだ、もう、お髭のオジ様ったら。心配してくださるお気持ちは大切に頂いときますけど、こう見えてスライムの相手は上手なの。心配なさらないで」


「お、おう。そ、そうか」



 海坊主さんのウインクに2歩ほど後ずさる髭学者。AIにも脅威として捉えられるって…海坊主さん凄えな。



「じゃ、決まりね。決まったなら早速行っちゃいましょ!」


 海坊主さんが腰をクネクネさせながら髭学者に迫ると、髭学者はそそくさとドアに向かう。そしてドアを開けると部屋は光に包まれ、光が収まると目の前には森とキノコオブジェ。全員で一気に外に出たらしい。



「この先に丁度よいくらいの広場がある。そこへ行くとしよう。森の木々は大切にしたいのでな」


 髭学者の後について行くと急に視界が広がり日だまりになった広場に出た。




「じゃあ、やりますね」

「ああ、よろしく頼む」

「いやん、年甲斐もなく緊張しちゃうわん」




 俺はストレージから【魔好香】×5を取り出す。これで拾った【魔好香】は全てなくなるが、明日の美容液分のゼリーは確保してある。次の納品も一週間もあればゼリーくらいならなんとかなるだろう。


 地面に並べた5個の魔好香から紫色の煙が朦朦と立ち上る。これ、広場じゃなかったら視界が完全に煙で覆われてたな。髭学者ナイス。



「あらあら、これはまたウジャウジャと…」


 海坊主さんが集まってくるスライムたちを見て気持ち悪そうにしている。確かにスライムって数匹程度ならまだ可愛げがあるが、大量に出てくると人によってはトラウマものかもしれんな。



 それからも四方八方から地面を覆い尽くすようにして集まってくるスライム。そしてついにそのスライム達に変化が現れた。



❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖


巨大スライム? あんなもん、バグなんだから珍しいに決まってるだろ。

そうそうバグなんて起こってたまるか…いや、起こるんかい。


魔好香なあ、本来あれって5個もいっぺんに使えるようものじゃねえもんな。

領主側が横流ししたことでバグが確定で起こせるようになっちまったか。


流石にこりゃ因果律とか言ってられんな。

早急に対応するかね。


――――――――――――――

◇達成したこと◇

・受注:<植物学者???の調査依頼>

・完了:<植物学者???の調査依頼>

・髭学者に【氷青の毒心(劇)】を見せてビビらせる。

・魔好香×5を使用する。




◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 肩書:マジョリカの愛弟子(EX)

 職業:上級薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+3)

 敏捷:1(+13)

 器用:1

 知力:1

 装備:ただのネックレス

 :聖魔のナイフ【ドロップ増加】

 :仙蜘蛛の道下服【耐久:+3、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気)】

 :飛蛇の道下靴【敏捷+13】

 :破れシルクハット

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【正直】【薬の基本知識EX】【配達Lv10】【勤勉】【逃走NZ】【高潔】【依頼収集】【献身】【リサイクル武具】【採取Lv10】【採取者の勘】【精密採取Lv3】【調合Lv10】【匙加減】【投擲Lv10】【狙撃Lv2】【鍛冶Lv7 】【調薬Lv10】【団粒構造Lv2】【農地管理Lv4】【農具知識EX】【料理Lv1】【広範囲収集】【遠見】【工作Lv1】【釣りLv1】【木登り】【よく見る】【自動照準】【下処理】【火加減】【創薬Lv2】

 所持金:約845万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]


◎進行中常設クエスト:

<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

〇進行中クエスト:



◆契約◆

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★☆☆☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【氷華草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】



《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ


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