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第91話 再び配達員

「ちょ、ちょっと、お待ち! スプラ、これはどこから持って来たんだい」


 マジョリカさんがロックオンしたのは…【巨大昆布】。南の平原に行ったときに森の湖で釣り上げた巨大昆布の切れ端だ。



「これですか? 南の森の湖で釣りしてたら引っかかっちゃって…」

「南の森の湖だって? そりゃいつのことだい?」


「いつ? えっと3日前ですけど」

「み、3日前…はあ」


 大きなため息をつくマジョリカさん。



「せめて2日前にこれが分かってたら…」


 マジョリカさんが片眼鏡を外して眉間をつまむ。



「あの、この昆布が何か?」


「スプラ、あんた薬草学の知識持ってたね。ならそれが何なのかもわかったはずだけど?」


「えっと巨大昆布ですよね…」



巨大昆布ジャイアントシーウィード

 海水で育つ巨大な海藻。モンスターの糞など有機物が大量に流入するときに発生し、水中の有機物を吸収し巨大化する。巨大化した後は水棲モンスターの餌となる。



 なんだ? ただの昆布じゃないって事か? …モンスターの糞で発生する昆布か、確かに聞いたことないな。



「モンスターの糞?」


「やっぱりわかってるんじゃないか。この巨大昆布はね、モンスター大発生のさきがけとして現れるんだよ」


「え? まじで?」


「今回おそらくそこで大量のゴブリンたちが繁殖したんだろう。たらふく食ってたらふく出したんだね。あそこの森はゴブリンの大好物の森大鹿フォレストディアの一大生息地だからね。あの肉はうまいんだ。狩りつくされてなきゃいいけど」



 森大鹿? そんなのいなかったよな。リザードドッグしか見なかったけど。



「森でリザードドッグには襲われましたけど鹿は見ませんでしたね」


「なんだって、森にリザードドッグがいただって?」


「ええ、はじめは2匹で帰り道塞いできたんで、釘を投擲したら仲間呼ばれて大変な目に遭いましたよ」


「…ずる賢くて憶病。誇り高いフォレストウルフの所業ではないね。確かにリザードドッグの習性だ」



 なにフォレストウルフって。リザードドッグよりもカッコいい響きだな。なんかブーツ作りたくなってきたぞ。



「しかし、スプラ、あんたあのリザードドッグの群れに絡まれてよく無事で…。いや、そんなことより、それが本当ならこりゃちょっとまずいことになってるのかもねえ。森大鹿がいなくなってリザードドッグ…生態系が大きく狂っちまってるっじゃないか。こうなると今回のゴブリン騒動もこの生態系の乱れが原因かもしれないね」



 生態系の乱れかあ。そういやイベントの案内にも書いてあったな。「プレイヤーの著しく偏ったモンスター討伐によって起きたイベント」だって。あ、じゃあ、あの情報も一応伝えとくか。


「あ、マジョリカさん、そう言えば商業ギルドで異人がイベントやってるって知ってました? なんでも決まったレアドロップ素材を持っていくとポイントがもらえて聖銀に交換できるらしいですよ。商業ギルド行ったときに異人がやってるの見ました」



 俺の情報を聞いたマジョリカさんの動きが止まる。



「なるほどそういうことかい」


 掛け直したマジョリカさんの片眼鏡がキラリと光る。



「レアドロップはかなり確率が低い。それこそ50や60くらい狩っても落ちないこともあるくらいだ。大量の異人たちが一か所で集中して魔物を狩りまくったら、そりゃ生態系が乱れるのも当然さね」



 ですよね。俺も散々迷惑かけられましたしね。


「だが、あの堅物の商業ギルドが異人相手だとしてもそんなイベントにホイホイ協力するとは考えられない。あのギルドに影響力を振るえるってことになると…、黒幕は限られてくるねえ」



 再びマジョリカさんの片眼鏡がキランと光る。2度目だな。



「うん、よし。スプラ、あんたさっき配達を探してるって言ってたね。至急頼みたい配達があるんだがお願いできるかい」



 お、マジか。配達できるならありがたい。東の森とかだともっとありがたい。


「はい、もちろんです」



「そうかい。じゃあ、南西地区に古臭い本屋があるんだが、そこに今から書く手紙を届けておくれ。時間はないから寄り道はなしで頼むよ。報告は不要だ」



 本屋? もしかして街の外への依頼をもらったあの本屋か? でも確かしばらく店を閉めるかもとか言ってなかったか?


 俺があれこれ思い出してる間にさらさらと手紙をかき上げたマジョリカさん。最後に封筒の縁をペロリと舐めて封をする。


 そういや、婆ちゃんも生きてた頃こうやって封筒舐めてたよな。



「あ? なんだいその変な目は」

「あ、いえ、何でもないです。ちょっと昔の事を思い出してただけで」


「ふん、まいいよ。とにかくこれを急ぎで届けておくれ。場所は…」

「あ、場所はわかると思います。でも開いてなかったどうしたらいいです?」


「大丈夫、開いてるはずよ」


 

 うーん、ま、マジョリカさんがそう言うなら開いてるんだろうな。じゃあ、うっとおしいプレイヤーたちをぶっちぎって配達してきますか。依頼の連鎖とかでまた東の森に行けるかもしれんしな。



ピンポーン

『クエスト<マジョリカの配達依頼2>を受けました』





「こんにちは」

「はい…、おや、あなた様は」


 本屋の白髪白髭の老紳士。俺に南の平原への配達依頼をくれたあの人だ。



「今日は配達に来たんです」


 早速マジョリカさんの手紙を取り出して差し出す。



「はて、手紙です…か…。…ここではなんですのでこちらへ」



ピンポーン

『クエスト<マジョリカの配達依頼2>を完了しました。報酬は未定です』



 老紳士は手紙を見た途端にサッと表情が変わる。さっきまで穏やかな老紳士だったはずが、なんだろ、こう、ちょっと近づき難い経理部のお偉いさんみたいな雰囲気になってしまった。


 急に緊張感が増してきたが、こういう人には無駄なことは言わないほうがいい。ここは何も言わずについていく。何も言わないでついていくが、ついていきながらさっきのピンポンさんが急に言い出した「報酬未定」って言葉が気になってしょうがない。どういうことだ?



「こちらへ」


 愛想なく勧められた椅子に座ると、対面の席に座って手紙を読み進める経理部長。なんか経費の監査をされてるようで胃が痛くなりそうだ。



「なるほど、承知しました。そうでしたか、あなたがマジョリカ様の愛弟子候補、いえ、今は愛弟子…でしたか」


 経理部長が鋭い視線で俺を上から下へ、下から上へとゆっくり観察する。なんだ、俺、これから尋問でもされるのか。



「申し遅れました。わたくしハンゾウと申します。詳しくは申せませんが、マジョリカ様とは親しくさせていただいております」


「あ、はい、…わたくしスプラと申します。異人をやっております」



 なんだよ、「異人をやっております」って。ってか、リアル過ぎてこっちもリアルになっちまうだろ。やめてくれ、こういうの。あ、クソ上司の顔がよぎった。



「ま、そう緊張されずとも大丈夫でございます。ですが、時間もないとのこと、早速本題に入らせていただきます。実は先日手紙を届けていただいた方が、今、東の森の調査に出ております。それで、その方にこのマジョリカ様の手紙を届けていただきたいのです」



 え、マジ? この人今、東の森って言った? え、そんなことってある?



「え、あ、確か研究されてる息子さん…でしたっけ?」


「いえいえ、滅相もございません。先日はスプラ様の身の上を存じておりませんでしたのでそう申し上げたまでで。本来は高いご身分のお方でございます」



 は? 高い身分? 


「まあ、そこはあまり詮索なさいませんように。礼儀なども気になさるお方ではございませんのでご安心ください」


「あ、はあ、はい」



ピンポーン

『クエスト<本屋ハンゾウの配達依頼2>を受けました。<マジョリカの配達依頼2>の報酬が引き継がれました』




❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖


ほう、HZがここで絡むか。うん、悪くねえ。悪くねえぞ。


MJにHZか。となると、俺もやることが変わってくるかもしれねえな。


ちと準備だけはしとくか。


――――――――――――――

◇達成したこと◇

・マジョリカに巨大昆布について追及される。

・受注:<マジョリカの配達依頼2>

・完了:<マジョリカの配達依頼2>

・本屋ハンゾウに手紙を渡す。

・本屋ハンゾウから東の森への配達依頼を受けて舞い上がる。

・受注:<本屋ハンゾウの配達依頼2>



◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 肩書:マジョリカの愛弟子(EX)

 職業:上級薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+3)

 敏捷:1(+13)

 器用:1

 知力:1

 装備:ただのネックレス

 :聖魔のナイフ【ドロップ増加】

 :仙蜘蛛の道下服【耐久:+3、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気)】

 :飛蛇の道下靴【敏捷+13】

 :破れシルクハット

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【正直】【薬の基本知識EX】【配達Lv10】【勤勉】【逃走NZ】【高潔】【依頼収集】【献身】【リサイクル武具】【採取Lv10】【採取者の勘】【精密採取Lv3】【調合Lv10】【匙加減】【投擲Lv10】【狙撃Lv2】【鍛冶Lv7 】【調薬Lv10】【団粒構造Lv2】【農地管理Lv4】【農具知識EX】【料理Lv1】【広範囲収集】【遠見】【工作Lv1】【釣りLv1】【木登り】【よく見る】【自動照準】【下処理】【火加減】【創薬Lv2】

 所持金:約845万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]


◎進行中常設クエスト:

<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

〇進行中クエスト:



◆契約◆

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★☆☆☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】



《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ


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