第83話 一角亭は一角亭
一角亭に入ると店員さんに奥の個室に案内されてしまった。ざわつく周りの目は全力スルーして、とりあえず案内されるままに個室に入る。
「スプラ君、いらっしゃい。待ってたわよ。異人さんのお客さんはたくさん来るのにスプラ君は全然来ないから。この前やっと来たと思ったらお弁当くれだなんて。早々に帰っちゃって女将さんが寂しがってたわよ」
「え、そうだったんですか。なかなか忙しくて…」
水とメニューを持ってきてくれた店員さんが軽口を叩いてくるが、これで今日も弁当目的だとは言えなくなってしまった。食べていくことが確定した訳だが、まあ急いでるわけでもないし、ゆっくりしていこう。個室だし。
「じゃ、女将さんのお任せでいいよね?」
軽口店員さんが持って来たメニューを引っ込める。
は? ちょっと? 一角亭のお任せなんていくらすると思って…
「そうしときなって」
店員さんがウィンクして去っていく。それに対して何も言えないコミュ障な俺。まあ、前と違って金ならあるし? 物資不足だからってまさか100万とか言わんだろ。…言わんよな?
それに個室ってのがありがたい。どんな料理が来ても周りを気にすることなく食べられるからな。
この見た目に豪華な料理並べてたら流石に悪目立ちが過ぎる。慣れたとは言え、これでも周りからの視線はいつも感じているのだ。プレイヤースキル【俺は何も気づいていません】のスキルレベルがどんどん上がっているからなんとかなっているだけなのだ。
「あいよ、お待たせしたね」
「あ、マーサさん」
ステータス画面見てたら懐かしい声が。なんと女将さんのマーサさんが直々に料理を運んできてくれた。
なんだろ、よくわからんけど、すごく嬉しいんだが。これがマーサさんの魅力なのか。
「元気だったの、スプラ君」
マーサさんが俺の向かいに座って笑顔で聞いてくる。
「あ、はい。いろいろ忙しかったですけど、なんとか無事に来てます。今のところは」
「そう、よかったよかった。マークスんとこやステラちゃんのとこで配達頑張ってるってことは聞いてたよ。子供たちの世話までして真面目に頑張ってるってね。ステラちゃんもマークスもあんたの事褒めてたよ」
へえ、そうなんだ。なんか、そんな風に思ってもらってるとは知らなかった。でも嬉しいもんだな。
「そうそう、スプラ君は大丈夫なのかい? 南のほうが物騒なことになってるみたいじゃないか」
「あ、はい。俺は大丈夫…ですかね。そういえば今日はお客さん少ないみたいですけど、もしかして一角亭さんも材料不足とか?」
「いやいや、うちは地産地消でやらしてもらってるからね。南からの物資が止まってもそこまで影響はないよ。お客が少ないのは物資が高騰してるから、みんな食事は安く済まそうって腹みたいだねえ、ほら、うちはそこそこの値段するだろ?」
「そうですね、でもその分おいしいですから」
「おやまあ、かわいい事言ってくれるね。まあ、うちは材料費を買い叩かないからね。だからそれなりに値段が張る。でもそのおかげでこういった不測の時でもきっちりと納品してくれる。うちはこういう信頼をなにより大切にしてるんだ」
なるほど、さすがマーサさんだな。
「ところで、スプラ君も南のゴブリン退治に行くのかい? 異人の冒険者たちはみんなそんな話をしてたけど」
「あ、いえ、今のところはないですかね。今、武器もないですし、俺って見ての通り強くないんですよ」
「おや、そうかい? 特に弱そうには見えないけどねぇ」
マーサさんそんなこと言ってくれるんだ。優しいな。
「まあ、俺の戦い方は遠くからを釘を投擲して魔物を倒すってやり方なんで。釘の在庫がなくなると戦えないんですよ。だから物資不足だと、俺はちょっと難しんです」
「あら、なんだい、スプラ君は釘が欲しいのかい。釘ならあるよ、うちに。この前裏の倉庫を増築したときのやつがだいぶ余ってたはずさ。ちょっと待っておくれね」
マーサさんが立ち上がって奥へ消えていく。マジで釘もらえるのかな。それならすごいラッキーなんだけど。
とりあえず、女将さんお勧め料理を堪能しながらマーサさんが戻るのを待つ。
しっかし滅茶苦茶うまいな。なんだこの柔らかい肉。A5和牛かよ。食ったことないけど。
想像A5和牛に舌鼓をうっていたらマーサさんが戻ってきた。
「あったよ。ほら、これでどうだい?」
【釘】×496本
建築用に作られた鉄釘。打ち込んだ後に錆びることで抜けにくくなる。
マーサさんが持ってきてくれた木箱の中にはずっしりと釘が入っていた。想定外の量にビビるが、マーサさんはいい笑顔。本当にもらっても良さそうだ。
「こんなにいいんですか?」
「ああ、ただ余ってたやつだから気にしないでちょうだいね。こんなんで使えそうかい?」
「勿論です。じゃあ、ありがたくいただきます」
木箱に山盛りの釘をストレージに仕舞う。マーサさんはウンウンと頷いて嬉しそうだ。
「女将さーん、注文入りました~」
「あいよ、今行くよ。じゃあね、スプラ君。ゆっくり食べてってね」
「ありがとうござます」
マーサさんは小走りで駆けていった。なんかマーサさんにはお世話になりっぱなしだな。あ、そうだ、畑の野菜ができたら真っ先に持ってこようかな。うん、それくらいはさせてもらおう。
それからおすすめメニューを全て平らげ、お腹も心も満たされてから気がつく。
「あれ? お会計ってメニューから先払いするんじゃなかったっけ?」
帰る時に店員さんにお会計をお願いすると、なぜか袋に段積みされたお弁当を渡された。
いや、お会計…。
…これは今度持ってくる野菜を厳選しないといけないな。ゼン爺にお願いしてみるか。
❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖
くっそ、なんで小僧だけこんないい思いしてるんだよ。
俺の方が頑張ってると思うぞ。
ほら、こんなにたくさん美容液についてのお問い合わせをいただいて…
だー、なんでこの俺が美容液の問い合わせ処理してんだよ。
作ったの俺じゃねえってのに。
くっそ、あの女どもいい加減にしろ…してくれないかな。
――――――――――――――
◇達成したこと◇
・一角亭でお任せ料理をいただく
・入手【釘】×496本、一角亭弁当×5
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
肩書:マジョリカの愛弟子(EX)
職業:上級薬師
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1(+3)
敏捷:1(+14)
器用:1
知力:1
装備:ただのネックレス
:聖魔のナイフ【ドロップ増加】
:仙蜘蛛の道下服【耐久:+3、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気)】
:飛蛇の道下靴【敏捷+14】
:破れシルクハット
固有スキル:【マジ本気】
スキル:【正直】【薬の基本知識EX】【配達Lv10】【勤勉】【逃走NZ】【高潔】【依頼収集】【献身】【リサイクル武具】【採取Lv10】【採取者の勘】【精密採取Lv3】【調合Lv10】【匙加減】【投擲Lv10】【狙撃Lv2】【鍛冶Lv6】【調薬Lv10】【団粒構造Lv2】【農地管理Lv4】【農具知識EX】【料理Lv1】【広範囲収集】【遠見】【工作Lv1】【釣りLv1】【木登り】【よく見る】【自動照準】【下処理】【火加減】【創薬Lv2】
所持金:約860万G
称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】
従魔:ネギ坊[癒楽草]
◎進行中常設クエスト:
<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>
〇進行中クエスト:
◆契約◆
名前:ネギ坊
種族:瘉楽草[★☆☆☆☆]
属性:植物
契約:スプラ(小人族)
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1
敏捷:0
器用:1
知力:5
装備:【毒毒毒草】
:【爆炎草】
固有スキル:【超再生】【分蘖】
スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】
《不動産》
畑(中規模)
農屋(EX)
≪雇用≫
エリゼ
ゼン
ミクリ
 




