表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

71/319

第71話 FGS公式掲示板

「あーあ、幸せなひと時が終わっちゃった〜」


 銀仮面ことウェイブが空っぽの弁当箱を見ながら寂しそうにしている。そんな姿に俺は…


「プッ、ククク」


「ちょっと、何よ、人のこと笑って」


「いや、昔の事を思い出しちゃってな」



 俺の父親は6人兄弟の2番目。兄弟が多いから親戚たちで集まる時は従兄弟がめちゃくちゃ多い。俺にも6つ離れた妹がいるが、その妹と仲が良かった従兄弟の女の子がいた。で、その子が食べることにすっごく幸せを感じる子だった。


 俺が高校の頃、十年も前のことだがよく覚えている。


 その子はなぜかいつも俺の妹の後をついて来てた。だから親戚たちが集まる場では俺たちは3人で行動してた。


 他の従兄弟? そんなもんコミュ障かつ思春期の俺が相手にできるような奴らじゃなかった。もう、みんな「世界の中心は俺だ」と言わんばかりの自己主張の強い陽キャばっかりだったし。


 だから、俺はいつも俺についてきてくれる妹と妹についてくるその子と3人で遊んでいた。


 ある時、妹とその子と3人でお弁当を持ってハイキングに行ったことがあった。その女の子はお弁当を食べるときに口元にご飯粒をつけてながら必死に食べていた。で、食べ終わると、この世の終わりかのような寂しそうな顔をした。


 で、そんな悲しそうな顔を見ていられなかった俺が自分のおかずをその子の空の弁当箱に放り込んでやると、その子は満面の笑みで俺を見て、幸せそうにモグモグしていた。


 で、その間もずっと口元には米粒が一つ。


 いつまでも俺の心に残るあったかい思い出だ。



 で、ウェイブが空の弁当箱を見る姿がその子と被って見えてしまった。そら笑うわ。口元に見えるはずのない米粒見えたし。



「いや、ちょっと昔を思い出してな。すまんすまん」


「ま、いいんだけどね」



 うん、弁当食ったらウェイブも落ち着いたらしいし。じゃ、帰るか。





「で、ウェイブはなんでこんなとこに来たんだ?」


 コミュ障の俺が進んでコミュニケーションを取ろうとするとは、もしかして俺コミュ障克服しつつあるのか?



「例の聖銀イベよ」


「聖銀イベ? そんなんあったっけ?」


「え、知らないの? じゃ、スプラはなんでこんな奥まで来てんの? スライムにやられる程弱いのに」



 うぐ、こいつ、やっぱムカつくな。



「俺はクエストで大量のブルーゼリーが必要だったからだよ。んで、変なオネエ軍人に絡まれて逃げたら奥まで来ちまったって感じ。で、聖銀イベって何?」


「ぶっ、オネエ軍人って。それ本人を前に言っちゃだめだからね、絶対だめ」



 いやいや、アレのせいでこっちは超貴重な草を採取し損なったんだから。オネエ軍人呼ばわりでどうこう言われる筋合いはないぞ。…筋合いはないが、言わないでおこう。



「それより聖銀イベって?」


「しょうがない教えましょう。聖銀イベはね…」



 ウェイブから聞くに、聖銀イベとはプレイヤーが主催するイベントで、モンスターのレアドロップをそのプレイヤーに売ると、後々聖銀と交換できるポイントが貰えるという内容らしいし。で、その時々でポイントが1.5倍になるモンスターが設定されてて、今はブルースライムのレアドロップ【ブルーゼラチン】がその対象になってるんだと。



 うん、そら、森も混むはずだ。



 聖銀への交換レートはまだ発表されてないらしく、プレイヤーはとにかくポイントを稼ぎまくることに熱中しているとのこと。



「ふうん、聖銀ねぇ」


「あら、聖銀に興味ないの? 驚きもしないし」


「だって… あ、いや」



 やっべ、思わず【聖魔のナイフ】のこと言いそうになった。マークスさんから他言するなって言われて…


 って、あ。あああああーっ!



 そういや、【聖魔のナイフ】があったじゃん。ポリゴンが消える前にナイフで触れたらドロップ2倍になるって。完全に忘れてた。



「どうしたの?」


「あ、いや、聖銀ってなんだろうなって」


「え、知らないの? もしかしてRPG初心者? 聖銀っていうのはミスリルとも言って…」



 うんうん、知ってますとも。なんせ聖銀でできた武器持ってますから。


 でも、そっか、プレイヤーがそんなイベント作れちゃうのか。FGSの自由度すげえな。イベントとかどうやって作るんだろな。



「あのさ、まさかとは思うけどプレイヤーズイベントやろうとか思ってる?」


「…え、あ、いや、思ってませんけど?」


「忠告しとくけど、あれはやめたほうがいいわ」


「といいますと?」


「運営が周知しないイベントがなんでこんなにプレイヤーに知れ渡ってると思う?」


「ああ、そう言われやそうか。なんでだ?」


「公式掲示板よ。ほとんどすべての板に広告があったわ。しかも大々的にじゃなくて、『今だけあなたに』って感じでうまい事書いてあったわ。あれはノウハウを知ってないと無理よ」


「ふうん、公式掲示板かあ。なにそれ?」


「えっ? …あ、そうだよね。見てたら知ってるはずだもんね。そっか、そういう事か」



 なんだ? 急に距離が離れた気がする。急に縮めてきたり突き放したり、やっぱややこしい奴だな、こいつ。



「で、掲示板ってやっぱ見たほうがいいのか? 情報とかたくさん載ってるんだったら見といたほうが絶対いいよな?」



「あ、え、ああ、そうね。見といても見なくてもいいとは思うけど…」


「いや、どっちだよ」



「まあ、見たかった見たらいいんじゃない?」


「じゃあ、見てみるけど、どうやって見るんだ?」



「…ステータス画面のここから入っていくと、リストがあるから、ここで板の検索かけて自分の目的の板を探したり、お気に入りに登録したりするって感じ」



 ほほう、こんなふうに行けたのか。ステータス画面って意外と奥深いんだな。


 んじゃ、早速検索かけてみるか。なんにするかな。スプラ…とか?



『該当するスレッドは見つかりませんでした』



 ですよね~。自意識過剰な自分が恥ずかしい。じゃあ、恥ずかしいついでに、銀仮面…とか?



『該当するスレッドが2件見つかりました』



 げ、マジか。こいつ。有名なのかよ。あ、いや、こいつの事だから、きっとストーカーとか迷惑プレイヤーとかそんな感じだろ。



「ちょ、なんか今、わたしのこと検索かけてない?」


「え、いや、違うよ」



 そう、俺は銀仮面としか検索していないからな。銀仮面がウェイブとは限らんし。銀仮面くらい他にもいるだろうし、なんならモンスターにもいるかもしれん。



「い、言っとくけど、スプラの事も書いてあるんだからね。わたしそれ見て面白そうだから追いかけてたんだから」


「え、俺?」



 俺のことが掲示板に書かれてることも驚いたけど、今、こいつしれっと面白そうだったから俺を追いかけてたって白状したよな?



「言っとくけど、公式掲示板じゃプレイヤー名は本人の許可なく使えないからあだ名とかで呼ばれてるの。だから『スプラ』とかで検索しても出てこないから」



 ぐ、何だかこいつにすべて見透かされてる気がしてきた。なんだ、なんなんだいったい。



「『ピエロ』で検索かけてみたら? スプラの板は『ピエロ』か『小オヤジ』で出てくるわよ」


「…小オヤジ?」



 ピエロはわかる。そのまんまだし。でも小オヤジとは?



「中年みたいな恰好した小学生ってことみたいよ」


「……」



 おい、運営! こんな誹謗中傷を放っておいていいのか! レイス! お前の古着のせいで俺は小オヤジとか呼ばれてるぞ!! 何とかしろや!



「掲示板なんて碌なもんじゃないな」


「そう、掲示板なんて碌なもんじゃないのよ」



 なぜか俺と並んで黄昏るウェイブ。もしかしてこいつも同じ感じなのか。いや、俺はストーカーなんてしてないし、嫌がらせなんかもしていないし、一緒にされるのはちょっと勘弁だぞ。



『ゆら!』


「あ、ごめんね、ネギちゃん。お姉ちゃんちょっとおかしくなってたみたい。元気にお遊びしようね~」



『ゆらゆら!』


「なんか森の様子が変らしい」



 なんかネギ坊の索敵能力が敏感になってるな。もしかしてさっき俺が死に戻りかけたから頑張って危険察知してくれてるのか?



「ネギ坊、もしかしてモンスター?」


『ゆら~』


「ん? なんだあれ?」



 ネギ坊が頭をピチピチやってくる方向を目をやると四角いものがいくつも落ちている。


「あ、これ【魔好香】じゃん。まだ使ってないみたいだけど。なんでこんなもんが何個も落ちてるんだ?」



『ゆら!』


「え、今度はこっち?」



バキバキバキバキ ボキボキボキ



 木をなぎ倒しながら何かがやってきた。




❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖


お、おう。なんだよ、いきなりこっちに話しかけるなよ。ビビるだろ。


ま、さすがに「小オヤジ」はよくねえよな。


ていうか、誰が中年じゃい。俺は20代の設定だぞ、こら。


しゃーない、いろいろまとめて担当に業務改善提案してやろっかな。



――――――――――――――

◇達成したこと◇

・FGS公式掲示板の事を知る。

・エゴサして痛い目を見る。

・公式掲示板など見るまいと決意する。

・未使用の魔好香を見つける。



◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 職業:中級薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+3)

 敏捷:1(+14)

 器用:1

 知力:1

 装備:ただのネックレス

 :聖魔のナイフ【ドロップ増加】

 :仙蜘蛛の道下服【耐久:+3、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気)】

 :飛蛇の道下靴【敏捷+14】

 :破れシルクハット

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【正直】【薬の基本知識EX】【配達Lv10】【勤勉】【逃走NZ】【高潔】【依頼収集】【献身】【リサイクル武具】【採取Lv10】【採取者の勘】【精密採取Lv3】【調合Lv10】【匙加減】【投擲Lv10】【狙撃Lv2】【鍛冶Lv6】【調薬Lv4】【団粒構造Lv2】【農地管理Lv4】【農具知識EX】【料理Lv1】【広範囲収集】【遠見】【工作Lv1】【釣りLv1】【木登り】【よく見る】

 所持金:約730万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]



◎進行中常設クエスト:

<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

〇進行中クエスト:

●進行中特殊クエスト

<シークレットクエスト:万事屋の悩み事>

<エクストラ職業クエスト~マジョリカの愛弟子>



◆契約◆

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★☆☆☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】



《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ