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第67話 お姉さんとお兄さん

「おはようございます!」

「ご苦労様です!」

「いつもありがとうございます!!」



 プレイヤーがこぞって挨拶してく東門の門番さん。その門番さんにガン無視されてるのになぜかみんな楽しそう。 なんだ? 声かけるとご利益でもあるのか? 運が上がるとか?


 ご利益? 運? はっ、そんなもの… 今日の俺には最重要事項じゃないか。なにしろついさっき盛大にフラグ立てまくっちゃったからな。ここは何頼みでもしたいところ。門番さん頼みいっちょ行っとこう。



「おはようございます」


「やあ、おはよう。今日は東の森かい? 今は異人たちがこぞってスライム狩りしてるみたいだから森の中は混んでるよ、気を付けて」


「あ、は、はい。ありがとうございま…す?」


 ニッコリ笑顔で情報を教えてくれる門番さん。あれ? この門番さん、初めて話すよな? 配達もしたことないし。なぜにフレンドリー? しかも急に周りが静かになってるし。加えて、見ないでもわかるくらいバンバン突き刺さってくる視線。


 なんなんだよ、今日は。朝から変なことばっかりだな。



 とりあえず、プレイヤースキル【俺は何も気づいてません】を発動してそそくさと門を出る。すると、背後からプレイヤーたちの挨拶する声がさっきまでの3倍増しで聞こえてきた。


 もしかして声が大きいほうがご利益があったのか? ま、にしてもあんな大声で挨拶されてもな。門番さんのうんざりした顔が目に浮かぶ。門番の仕事ってのも大変だな。今度見かけたら畑のジュースでも差し入れするか。



 騒がしい東門を後にしてそのままプレイヤーで込んでいるという森に向かう。10分ほど歩いてブルースライムのいる東の森に到着する。



「なんか思ったよりだいぶ大きいなこの森」


 左右を見ても森の終わりが見えない。



「これ、もしかして東の森って南の平原のくらいの広さってことじゃね?」


 森は昨日の湖の森で慣れているからと正直侮っていた。が、南の平原がそのまま森になったと考えると…これは侮れんかもしれん。



 俺が立ち止まって眺めている間にも数組のパーティーが森に入っていく。確かにこの感じじゃ中は間違いなく混んでいるに違いない。


 これは俺もこんなところでうかうかしていられない。今日は何としてもブルーゼリーを入手したいのだ。昨日、マークスさんの本の包装を買いに行ったときに、なんとなく何か言いたそうにしていた万事屋さんがいたのだ。急がねばならないのだ。



 気合を入れて森に入ってみると、東の森は湖の森よりも広くて明るかった。鬱蒼とした感じじゃなくて手入れされた森って感じ。小さい頃よく行った公園の裏山がこんな感じだったか。あちこちにグネグネとした道があって、その付近は木が少ないから日も差し込んでいる。


 そんな森の様子に心も軽くなりハイキング気分でてくてく歩く。何組かのパーティーが道を逸れた場所でスライムを探していたが、それは無視してどんどん進む。



 こういう込んでいるところではプレイヤー同士のいさかいが起こりやすいものなのだ。コミュ障ならあえてそんな地獄に立ち入るような暴挙などしない。


 例え遠くてもプレイヤーがいなさそうなところまで移動する。それがコミュ障流処世術である。うん。



 で、進み続けること30分、だいぶプレイヤーの数も減ってきた。じゃあ、そろそろ始めますかと森の奥を見る。そして固まる俺。


 あれ? あそこにあるのって、もしかしてアレじゃね?



 【採取者の勘】によってかなり遠くまで採取物アイコンを見られるようになっているから、これまでもアイコンはいくつも発見してきた。けど、今見えるのは普通のアイコンじゃない。そう、うっすら緑のアイコン。あれだ、快癒草や爆炎草を路地販売で見つけた時のあれ。



「これはさすがに見逃せないよな」

『ゆらゆら』


 お、ネギ坊も賛成か。そうだよな、どうせ装備するんだもんね、君。じゃあ、採取しちゃいますか。


 そそくさと移動して採取開始。【精密採取】もあるし何が取れるやら、楽しみだ。




「あらん、そんなとこにアイコンあったかしら?」


 いつの間にか後ろにいた人から声をかけられる。振り返ると、ごつい体の軍人さんが人差し指を顎に当てて首を傾げていた。金髪のベリーショートに迷彩柄のカーゴパンツとブーツ。そしてぴっちり黒タンクトップ。うん、ズィ・アメリカンアーミーだ。


 …にしても誰?



「えっと?」


「あらん、かわいいじゃない。もしかして小学生? あ、でも小学生はFGSできないわよね。じゃあ、中学生かしら?」


 なんか軍人さんがオネエ言葉で話してくるんだが? 昔のアメリカ映画で見たことあるな、こんなの。ってか、採取時間かかりすぎだろ。まだかよ。



「あらあ、あなた帽子破れちゃってるじゃないの。お姉さんがチョイチョイって直してあげるわよぉん」


 オネエ軍人さんが近寄ってくる。おい、採取、早く終われ!



「あららん。ほらもう、そんな破れた帽子なんか被ってるから草が入っちゃってるじゃないの。だめよ~、男の子は身だしなみちゃんとしないとぉ」


『ゆら~』


 あ、こらネギ坊、このタイミングで『草じゃないよ~』とか要らん事言わなくて…



「…おい、今この草しゃべったんじゃねえか?」


 おおおお、なに? いきなりドスの効いた男声とか、なに? 何事? ちょっとタンマ。待って。くそ、早く終われよ採取!


 オネエからオニイへと変化した軍人さんの手が俺の破れシルクハットに迫る。あかん。他人のアバターには何もできんとわかってても怖い。



ピンポーン

『格上のプレイヤーからの接触がありました。【逃走NZ】が発動できます。発動しますか?』


 え、あ、じゃあ…あ、でもまだ採取が、あ、でも逃げたい。でも採取物も気になる。



「ちょっとだけその草の話聞かせてくれないかしら?」


 ひいいい、ドスの効いたオネエ言葉はさすがに無理です。ごめんなさい。



『…発動』



 心の中で悲鳴と共に発動を念じると、軍人さんのごつい体が線になる。ついでにうっすらアイコンも線になる。くそ、悲しい。


 そして逃走した先はなんと… 森だった。


 うん、知ってた。だって広いもんねこの森。




❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖


おーおー、こりゃまた濃いのが出てきたなー。


なんだよ、コリンズもこんなの担当してたのかよ。

涼しい顔しやがって、本当は苦労してんじゃねえのか、アイツも。


しゃーねえ、今度愚痴でも聞いてやるか。


「あー、もしもし一角亭さん? 持ち帰り弁当一つお願いできる? え、できない? …なんで?」



――――――――――――――

◇達成したこと◇

・門番に挨拶。

・森で軍人さんに出会う。

・【逃走NZ】発動。

・激レア草を採取し損なう。



◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 職業:中級薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+3)

 敏捷:1(+14)

 器用:1

 知力:1

 装備:ただのネックレス

 :聖魔のナイフ【ドロップ増加】

 :仙蜘蛛の道下服【耐久:+3、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気)】

 :飛蛇の道下靴【敏捷+14】

 :破れシルクハット

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【正直】【薬の基本知識EX】【配達Lv10】【勤勉】【逃走NZ】【高潔】【依頼収集】【献身】【リサイクル武具】【採取Lv10】【採取者の勘】【精密採取Lv3】【調合Lv10】【匙加減】【投擲Lv10】【狙撃Lv2】【鍛冶Lv6】【調薬Lv4】【団粒構造Lv2】【農地管理Lv4】【農具知識EX】【料理Lv1】【広範囲収集】【遠見】【工作Lv1】【釣りLv1】【木登り】【よく見る】

 所持金:約730万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]



◎進行中常設クエスト:

<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

〇進行中クエスト:

●進行中特殊クエスト

<シークレットクエスト:万事屋の悩み事>

<エクストラ職業クエスト~マジョリカの愛弟子>



◆契約◆

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★☆☆☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】



《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ






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