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第66話 畑はいろいろ大変

 5日目は朝早めにログイン。



 宿屋を後にしたら畑に行く前に教会に寄る。


 理由は聖水の買い溜めだ。


 昨日の鍛冶で聖水を使って残量が心もとなくなってしまったということもあるが、その使い道があまりに万能過ぎるため、大量保有しておきたくなったからだ。


 畑の三人に振る舞うジュース作りなどの料理用、ポーションや美容液の調合用、鍛冶の冷却水用にネギ坊の回復用… とにかく、水を使う場合にはことごとく聖水と置き換えられてしまうのだ。つまり、聖水=水の上位互換。



 こんなのプレイヤーが知ったらFGSに聖水の一大ムーブメントが到来してしまう。もしそうなったら教会がプレイヤーで溢れることになる。ってことは、俺は教会に行きづらくなってしまう。


 つまり、買うなら今しかない。そういう事だ。



 教会で、ステラさんに挨拶し、聖水をお願いする。急な大量注文にちょっとテンパってたステラさんにマークスさんの話を振ってみる。図らずもがなキューピット役を担ったものとして二人の進捗は気になるものなのだ。


 で、結果、ステラさんはいつもと変わらない感じだった。頭から湯気も出なかった。


 ってことはマークスさんはまだ行動に移していないと。ふむ、これは俺が背中を押す必要があるのかもしれない。


 そんなことを考えながら聖水をしこたまストレージにしまい込んで畑に移動。




 なんか一日ぶりなだけなのにずいぶん久しぶりな気がする。三人とも元気か…な… って、ん? アレ誰だ?



 俺の畑を覗いている青いアイコンが複数見えるのだが? いち、に、さん、し、ご、5人の男プレイヤーたち。


「俺なんかしたっけ?」



 ここ最近のプレイを振り返ってみるが、絡まれるような覚えはない。


 唯一絡んでくるとしたら銀仮面の取り巻きたちなのだが…。5人とも見た感じ、全員が何といえない哀愁漂う貧相な雰囲気。うん、これは銀仮面の取巻き達ではなさそうだ。


 うーん、どうする。あんな入り口にいるってことは俺に用事がのかもしれない。が、俺にはいきなり挨拶なんて無理だし、かといって無視するのもいかがなものか。


 よし、ここは… 気づかないふり作戦で。



 反対側の畑をこれ見よがしに覗き込みながら移動する。意味もなく草をちぎっては眺めてみる。



ピンポーン

『特定行動により【よく見る】を習得しました』



 ちょ、やめてくれこんな時に。ビクッってしちゃっただろ。


 何気なく横目で様子をうかがうが、背後の俺の存在は視界には入っていない様子。


 そのまま男プレイヤーたちを視界に入れないようにしながら回り込んで畑に入る。畑に入る直前に横目てチラッと見たら、全員が俺を見ていた。が、俺は畑に入るまで気が付かなかった訳で、これはしょうがないことだろう。うん。あとは知らん。





「エリゼさん、ゼン爺、ミクリさん、おはようございます!」


「スプラさん、おはようございます」

「ああ、おはよう」

「おっはー」


 3人とも元気そうでよかった。昨日は顔見てジュース振舞えなかったからちょっと心配だったんだよな。



「どうですか、何か困ったこととかは?」

「特には困っとらんよ」


 ゼン爺が代表して答えてくれる。どうやら全体の管理もしてくれているみたいだ。確かにエリザさんは素人、ミクリさんはせっかち感があって管理者にはちょっと。管理向きなのはのんびりでしっかり者のゼン爺だろう。



「農屋の中のジュースは勝手に飲んでくださいね。氷とかないので冷たくはないんですけど」

「もちろん、飲ませてもらってるよ~。おいしくってさ、あれを楽しみに仕事してるって感じ」


 ミクリさんが元気に答えてくれる。そこまでおいしんでくれるなら作り甲斐があるってものだ。



 畑を見に行くと、小さな芽がきれいに列になって生えていた。朝の水やりも終わっているようで、畝の上は満遍なく黒色をしている。



「この調子なら早いところではあと5日ほどで収穫できそうじゃの。あの元気娘のおかげじゃて。それとあの娘ものう」


 ゼン爺がミクリさんとエリゼさんを見て言う。そっか、ってことはエリザさんの歌声も効果があったってことか



 にしてもたった5日か。野菜が5日とかで収穫できるとか、リアルなFGSでもここはゲーム仕様なんだな。まあ、本当に何か月もかかったら農家プレイなんてできないもんな。そっかそうだよ。


 さて、じゃあ、俺はジュースを作り足しておきますか。



ピンポーン

『特定行動により【料理Lv1】のレベルが上がりました』



「じゃあ、ジュース作っておいたので自由に飲んでくださいね。あと無理せず適度に休憩も取ってください。のんびりでいいですから」


 畑で作業中の三人に声をかける。すると、エリザさんが一人駆け寄ってくる。



「あの、スプラさん」


「はい、なにかありました?」


「いえ、大したことではないのですが、昨日から異人の方がずっと畑の周りでこちらを見ているようなのですが…今日は人数も増えてましたのでちょっと気になって」



 ああ、そっか、そりゃエリゼさんも気になるよな。リアルだったらストーカーとして通報できるレベルだもんな、あれ。


 畑の柵の向こうでこっちを指さして何か話し合ってる一団。俺が言うのもなんだが貧相な装備によって一段と怪しさを増している。しかもそれが異人って言うんだから住人からしたら怪しさ全開だろう。



 さすがにこれはエリゼさんのためにも話しておかないとダメか。嫌だけど。すごく嫌だけど。



「じゃあ、ちょっと話してきますね。エリゼさんは気にしないでいつも通りやっててください。もし怖かったら農屋に入っててくださって構いませんから。安全第一でお願いします」



 心配そうなエリゼさんを背にして畑を出る。そして、今度は柵の前で試合前のスポーツ選手さなからに円陣を作ってる貧相な一団に近寄っていく。



「あ、あのう…」


「ちょーっと、ごめんさいね。はいはい、あんたたちこんなところにいたら迷惑でしょ。GMコールされたいの? さっさと行くよ、ほら、何してんの、行くって。ウラ、さっさと行けよ、このやろう」



 …なんか怖い女の人に追い散らされていったんだけど。これ、どんな状況?


 怪しい集団を追い散らした女の人がこっちを見てニッコリして手を振ってくる。うん、怖いです。



 畑の方を見ると、エリゼさんが穏やかな笑みで控えめに手を振ってくれていた。はあ、なんか癒される。ありがとうエリゼさん。


 そのエリゼさんはゆったりきれいなお辞儀をして畑に戻って行った。


 なんかよくわかんないけど、エリゼさんの安心した様子を見れてよかった。頑張った甲斐があった、うん。



 とりあえず気持ちを切り替えて東門へと向かう。今日の大仕事はブルースライム狩りだ。



 ちなみに今回は配達はなし。さっき【広範囲収集】で調べたんだけど、東の森方面どころか、街の外への配達すらなかったから。


 まあ、でも大丈夫だろう。配達バフなしでリザードドッグも毒ガエルも倒してきたんだし、スライムくらいでは流石に危険はないはずだ。って、ん? いや、これフラグになったりしないよな。流石にないよな…?



 ちょっとだけ心配になったから道具屋に寄って簡易テントを買っておく。さらに一角亭にお弁当も買いに行く。一角亭に入ったらなんとさっきの怖い女の人が何人かで楽しそうに盛り上がってた。もちろん、弁当だけ買って見つからないようにそっと店を出てきた。


 たぶんいい人なんだろうけどね。ちょっと苦手なだけ。


 で、最後にストレージの武器も確認する。



【投擲釘】×31

【毒釘】×13

【毒毒釘(聖)】×8

【注入釘(毒)】×68

【注入釘(劇毒)】×1


 

 うん、流石にこれだけあればブルースライムの20や30、楽勝だろう。フラグではない。決してフラグではない。



 途中、東地区の大通りも通ったが、ゴザ販売では普通の野菜しか売ってなかった。まあ、でも金ならあるので、全種類の半数をまとめ買いしておいた。美容液が片付いたらゆっくり料理でもしてみよう。



 教会の前を通り過ぎてしばらく行くと東門が見えてくる。なんか今日は門番さんに挨拶していくプレイヤーが多い。でも、門番さんガン無視なんだけど?


 いや、何がどうした?





❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖


おっれはレイス~♪

か~いぞくだ~♪


こ~れでもい~ちおうGMだ~♪

こぞうのお守り役じゃないぜ~♪


(レイスカラオケ中)


――――――――――――――

◇達成したこと◇

・聖水購入

・野菜購入

・習得【よく見る】



◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 職業:中級薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+3)

 敏捷:1(+14)

 器用:1

 知力:1

 装備:ただのネックレス

 :聖魔のナイフ【ドロップ増加】

 :仙蜘蛛の道下服【耐久:+3、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気)】

 :飛蛇の道下靴【敏捷+14】

 :破れシルクハット

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【正直】【薬の基本知識EX】【配達Lv10】【勤勉】【逃走NZ】【高潔】【依頼収集】【献身】【リサイクル武具】【採取Lv10】【採取者の勘】【精密採取Lv3】【調合Lv10】【匙加減】【投擲Lv10】【狙撃Lv2】【鍛冶Lv6】【調薬Lv4】【団粒構造Lv2】【農地管理Lv4】【農具知識EX】【料理Lv1】【広範囲収集】【遠見】【工作Lv1】【釣りLv1】【木登り】【よく見る】new!

 所持金:約730万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]



◎進行中常設クエスト:

<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

〇進行中クエスト:

●進行中特殊クエスト

<シークレットクエスト:万事屋の悩み事>

<エクストラ職業クエスト~マジョリカの愛弟子>



◆契約◆

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★☆☆☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】



《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ






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