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第54話 全地区制覇に白金貨

「教会からの依頼を受けて来られたということはステラさんとお知り合いとかですか?」


 おや、この流れはもしかして個人依頼? ってことは、住人への信頼度がお仕事してくれたってことか。なんかスキルとかで無駄に上がってるからな信頼度。



「ええ、よくステラさんから配達依頼を受けたりしてます。この前は子供たちと遊んだりもしました」


「そうですか、配達に子どもたちと…ちなみに一番下の子の名前はご存じですか?」


「一番下…あ、ハイネちゃんですかね。癖っ毛でほっぺの赤い」


「まあ、ハイネがあなたに自分の名前を……そうですか、でしたらギルドとは関係なくて申し訳ないのですが、わたし個人の依頼としてお願いすることはできますか?」


 おお、受付嬢の個人的な依頼かあ、こんなこともあるんだな。



「ええ、それはもちろんです。でもいいんですか? まだギルドに登録もしていないのに」


「はい、もちろんです。あのハイネが名前を伝えた人で、ステラさんが依頼を出す方でしたら大丈夫です。ハイネはああ見えて警戒心が強い子ですし、ステラさんの人を見る目は確かですから」



 うん、ハイネちゃんの警戒心の強さは知っていますとも。なんせこの服装を見て「お金はありません」とか「変な格好」とか言って切り付けてきましたからね、俺のハートを。



「申し遅れましたがわたしはカリーナといいます。依頼の内容ですが、実はわたしの兄が西地区で働いてまして、その兄に手紙を届けて欲しいんです」



ピンポーン

『クエスト<商業ギルド受付カリーナの依頼>を受けました』






「待て、ここは領主様の館だ」


 そう、ここは領主館の前。


 領主館の場所は、西大通りを一本北に入ったところ。広大な庭を高い柵で囲ったお屋敷がそれだ。で、今しがた勝手に入ろうとした俺を見るからに真面目そうな門番さんが通せんぼしたところ。ごつい体から放たれる威圧感がすごい。


 領主館には昨日配達で来たが、その時も散々怪しまれた挙句に最後まで不審者を見る目で見られ続けた。


 まあ、確かにいきなり変なピエロが配達してきたら疑わない門番なんていないだろう。サスペンスドラマだったら爆弾魔の格好だもんな、これ。



「あの、カリーナさんのお兄さんでしょうか?」


 かといって警戒を解くやり取りなんてコミュ障に求められても困る。俺にできるのは直球勝負だけ。



「なんだカリーナの名前を出すとは。カリーナの知り合いを装って俺に取り入ろうとしても無駄だ。ここは許可のないものは通すことはできん。さっさと帰るんだ」


「いえいえ、俺が用があるのはお兄さんのほうですよ。ダリンさん」


 にっこりと笑って見せる。少しは頑張ってみる。



「ひっ……お、俺に用だと。そ、そんな顔で脅そうとしても無駄だ。さっさと帰れ」



 …だから頑張るの嫌だったんだよな。コミュ障に頑張らせるとこうなるんだよ。覚えとけってんだ。ちっくしょーめ。



「いや、ですから、カリーナさんからお兄さんのダリンさんに手紙を預かってきたんですよ。ほら、これ」



 もう変化球はなし。手っ取り早くカリーナさんから預かった手紙を見せる。やっぱ直球が一番だ。


 門番のダリンさんは俺の出した手紙を恐る恐る受け取ると注意深くあて名書きを調べ始めた。



「なんだ、本当にカリーナからの手紙じゃないか」

「ええ、ずっと家に帰ってこないお兄さんのことが心配なんだそうですよ」


「そうか、そんなに心配かけていたのか」

「たまには帰ってあげてくださいね」



 ダリンさんは数瞬の間、下を向いて何やら呟きながら考えていたが、解決したのか顔を上げる。すっきりした表情だ。


「そうだな、仕事が終わり次第帰ることにするよ。ただ今は領主様からの指示でな、ここを離れるわけにはいかないんだ。俺の代わりが今いなくてな」


「領主様からの指示?」


「うむ、これ以上は話すことはできないが、もう数日で帰れるはずだ。妹にはよろしく伝えておいてくれ。それとこれを受領書代わりに渡してくれないか。少し前に妹のために買ったものなんだが」


 ダリンさんは大きな声でそう言うと、俺にきれいな押し花の栞を渡してきた。俺はそれを受け取ると、栞の裏に何かが貼りつけてあるふくらみを感じる。



 俺がそれに気がつくと同時にダリンさんが俺の方に一歩踏み出す。


「そのままで。このまま何も言わないでそれを薬屋の店主マジョリカさんに渡してくれないか」


 ダリンお兄さんは俺の耳元でこっそり囁いた。



ピンポン

『クエスト<領主館門番ダリンの依頼>を受けました』



 おい、ピンポン、なぜ音が小さい。そういうのいいから。





「スプラです」

「今行くよ」



 お決まりの定例文言を言い合い、マジョリカさんはいつもの片眼鏡をかけて現れる。最近、「山」「川」みたいな合言葉みたいに感じるんだが…



「いいところに来たね。このポーションを農業ギルドに届けてほしいんだよ。頼めないかい? 受領書はなし、配達が終わったらそれで終わりでいいから」


「あ、はい、いいですけど」



ピンポーン

『クエスト<マジョリカの配達依頼>を受けました』



「あ、でですね、マジョリカさんにお届け物です」


「おや、配達だったのかい。先にすまなかったね。急ぎでって言われててね、あのクソじじいに。で、今日は何を持ってきたんだい?」


「領主館の門番のダ……」


 俺がダリンさんの名前を言おうとするや否や、マジョリカさんの手が俺の口を塞ぐ。妙に肌艶のいい顔が俺の目と鼻の先に迫る。そしてマジョリカさんの鼻息が荒い。なんだこれ。



「このことを知っているのは?」

「え、えっと俺と門番さんだけです」


 もごもごと俺が言うと口を塞いでいた手が緩む。



「そうかい、じゃあこれでその依頼は完了だ。受領書は不要だよ。で、これが報酬だ」


 マジョリカさん、そう言ってカウンターに見たことのない白いコインを一枚置いた。



ピンポーン

『クエスト<領主館門番ダリンの依頼>を完了しました。報酬として契約物「白金貨」を得ました』



 ん、なんだなんだ、契約物? なんそれ。



「マジョリカさん、このコインは?」


「その白金貨は『契約物』と言ってね、使えば契約してある星獣を一度だけ召喚できるっていうものだ」

 


 うん、ごめん、突然過ぎてついていけない。えっと、星獣? なにそれ? 従魔とは違うの?



「えっと、星獣ってなんですか?」


「ああ、星獣っていうのはね、この星に太古から存在する獣の姿をした特別な生き物たちのことだ。普段は滅多に姿を見せないんだがね、人が持つ特定のスキルに反応して姿を現すことがある。信頼関係を築ければ契約することもできるんだが、星獣に遭遇すること自体が珍しいことだからね。殊に星獣と契約した事例となるとこれまで片手で数えるほどしかない。その白金貨は昔ある人物が契約した星獣との絆を宿らせたものだ。一度だけ契約者以外にその力を貸し与えるというものだよ」



 なにそれ。いきなりそんなアイテム貰っても扱いに困るんだけど…。でも、これって受けとらないと後が怖いやつのような…。いや、ここはなんとかやんわりと受け取り拒否だ。



「そんな貴重なものを、いいんですか? もったないですよ、俺なんかに」

「ああ、いいんだ。あんたを面倒なことに巻き込んじまったお詫びだよ」 


 ん? 巻き込む? 面倒なこと? って、これ厄介ごとかよ! マジか。



「巻き込むって、何かあるんですか?」

「スプラは知らなくていいよ。こっちの事情だからね」


 なら、この白金貨お返ししたいのですが?



「えっと、俺はこの白金貨を受け取って何をしたらいいんでしょう?言っときますけど何もできないですよ」

「別に何もしなくていいよ。ただ、もしもスプラの身に危険が迫ったらそれを使いな」


 はい、危険ごとでしたー。ちょっとお、クエスト報酬が危険に迫られる事とかマジか。



「で、危険というと?」

「万が一にってことだからそんな怖がらなくていいさ」


 いやいや、知っての通り俺って紙耐久っすよ。「危険=死に戻りリセット」なんですけど? いや、マジのマジかよ。



 腕を組んで考え事にふけり始めたマジョリカさん、もう俺の事は視界に入っていないようだ。一言二言声をかけてみるが考え込んだまま動かない。しかたないので白金貨をストレージの奥底にしまって薬屋を出ることにする。


 で、薬屋を出てふと思う。



「芋づる式配達依頼探しが終わってしまった」



 街の外への配達依頼探しの芋づる式クエストが薬屋で終了してしまった。仕方ないので再度スタートの農業ギルドへ戻ることにする。ただ報告もあるので商業ギルドと教会に寄って農業ギルドへ移動する。




ピンポーン

『クエスト<アイザックの配達依頼>を完了しました』



ピンポーン

『クエスト<マジョリカの配達依頼>を完了しました。特定行動により【広範囲収集】のスキルを習得しました』



 最後に農業ギルドマスターのアイザックさんに依頼の報告すると、同時にマジョリカさんの配達も受け渡しされ依頼が完了。マジョリカさんがクソじじい呼ばわりしてたのはアイザックさんだったらしい。ギルドマスター同士で仲が良い様子。で、なんかスキル習得したみたい。



【広範囲収集】

【依頼収集】を持つ者が60分以内に街の全区画で個別の配達依頼を受注し完了することによって習得するスキル。

 街中で発生する個別の配達依頼を全て一度に確認できる。



 なんかものすごいハードルの高い条件をものすごいたまたま達成していたらしい。こんなもん条件知ってなきゃ絶対に無理だろ。って知ってても無理だ。個別依頼の配達で? 全地区を1時間以内? はあああ?


 でも、その高いハードルに見合ったスキルの効果。読む限りは期待できる。これはすぐに使わねばなるまい。



 『広範囲収集』っと。


 スキルを使うと、俺の目の前に始まりの街の丸い地図が浮かび上がる。地図の中には赤色の点があちこちで点滅している。それぞれの点を選択すると、その場所で受けられる依頼内容の詳細が示される。配達物に配達先、それに報酬がその場で分かるようになっていた。



「なにこれ、すっごい便利」


 他にも灰色の点がいくつかあるが、こちらは選べないようだ。なにか条件があるのかもしれない。


 それじゃあ、赤い点滅を全部調べてみましょうか。街の外への配達はあるのかな?



❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖


お、契約物か。イベントアイテムだな。

たしかイベント概要のα版が届いてたよな。


ええっと、白金貨白金貨っと…お、あった。


…うーん、白金貨かあ、MJ、さすがにこれはやりすぎだ。

小僧を殺す気か。


でもそっか【マジ本気】(ユニーク)のこと知らねえもんな、MJの奴。


小僧、頼む! 死に戻る前に楽しそうな調合と鍛冶と畑の絵を撮らせてくれ!



――――――――――――――

◇達成したこと◇

・受注 <商業ギルド受付カリーナの依頼><領主館門番ダリンの依頼><マジョリカの依頼>

・完了 <領主館門番ダリンの依頼><商業ギルド受付カリーナの依頼><教会ステラの依頼6><アイザックの依頼><マジョリカの依頼>

・マジョリカから星獣の説明を受け「白金貨」を貰う。

・習得【広範囲収集】


◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 職業:中級薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+4)

 敏捷:1(+14)

 器用:1

 知力:1

 装備:ただのネックレス

 :聖魔のナイフ【ドロップ増加】

 :仙蜘蛛の道下服【耐久:+4、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気)】

 :飛蛇の道下靴【敏捷+14】

 :破れシルクハット

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【正直】【薬の基本知識EX】【配達Lv10】【勤勉】【逃走NZ】【高潔】【依頼収集】【献身】【リサイクル武具】【採取Lv10】【採取者の勘】【精密採取Lv3】【調合Lv10】【匙加減】【投擲Lv10】【狙撃Lv1】【鍛冶Lv3】【調薬Lv3】【団粒構造Lv2】【農地管理Lv4】【農具知識EX】【料理Lv1】【広範囲収集】new!

 所持金:約735万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]



◎進行中常設クエスト:

<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

〇進行中クエスト:

●進行中特殊クエスト

<シークレットクエスト:万事屋の悩み事>

<エクストラ職業クエスト~マジョリカの愛弟子>



◆契約◆

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★☆☆☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】



《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


≪雇用≫

エリゼ

ゼン

ミクリ

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