第51話 ❖AIたちの舞台裏4❖
『じゃあ、今日も始めようか。3日目が終わったけどどうだい?アマデウスからお願いしようか』
「はいマスター。新規ログイン率は88%となりました。農業ギルドの解放情報が外部にも出回り、従魔ギルド解放の際と同じように一定数のプレイヤーが新規ログインを果たしたと思われます。第二陣の予約も進み、一万本の予定数に対して8276本が販売完了しました。農業ギルド解放は1フィールド分先の予定でしたが、早期解放されたことでFGS販売に追い風となっています」
『うん、そうだね。ネガキャン打たれる前には予約が取れないっていう状況予想だったからね。二陣三陣が追い付けるように一陣にはゆっくり楽しんでもらうつもりだったけど。今の状況だと、システムの早期解放は時宜に合っていたということか。これだから因果律は面白い。ありがとう。じゃあ、コリンズ、顧客の方はどうだい?』
「はい、マスター。現在のプレイヤーの活動状況は非常に活発だと言えます。ログインプレイヤーの新スキル習得率も89%となり、2個以上の習得率も22%となっています。これは予想を40%以上上回るペースとなっています。システムの解放と称号の取得アナウンスが影響していると思われます」
『うん、それはよかった。活動状況は楽しめているかどうかの一番大きな指標だからね。で、イベント作成の進捗はどうだい?』
「はい、一部プレイヤーの動きが一般AIの行動に大きく影響を与えているため予測が難しくなっています。特に商人プレイヤーと領主側との癒着が発生しており、今後始まりの街に深刻な影響がもたらされる恐れがでてきています」
『ほお、危ない橋を渡っているプレイヤーがいるという事か。まあ、それも因果律の中。できているということはそういう事なんだろうね。静観でいこう。イベントに利用できそうだったら利用してしまってもいいかもね』
「はい、考慮します」
『うん、二人ともありがとう。第二陣の販売は順調に来ているからこれからも新規ログイン率を上げることを意識して進めてくれるかい?』
「「はい、マスター」」
アマデウスとコリンズがいつも通り優雅に部屋を出て行く。
『で、レイス、ダイジェスト映像ありがとうね。彼面白いね。一人だけ別ゲームしてるよね』
小さな影の言葉に部屋の空気が揺れる。海賊レイスが部屋に現れた。
「でしょ? 頭にあんな極レア草生やしてたらプロモーションにも使えねえし、最近はピエロみたいな服装になっちまって、畑じゃチート農具作りまくってるし、お笑い枠なのか攻略枠なのかエンジョイ枠なのかもう訳わかんなくて」
『そこはレイスが何とかしないと』
「へ、俺がですか?」
『FGSは因果律。ユニークスキル作ったのはレイスなんだからそこは責任取らないとね』
「うぐ…」
『はは、でも彼のおかげで新規ログイン率も二陣販売も挽回してきてるんだから。それはレイスのおかげって事でもある。十分評価してるから』
「え、まあ、そう、ですかね?」
『ってことで、プロモーション映像も期待してるからね、それじゃあ』
「あ、ちょ、だからそれは難しいって…」
カラッカラの乾いた風が吹く世界地図の部屋だった。
 




