第42話 「子供と遊ぶ」って最高です
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ピンポーン
『クエスト<子供と遊ぶ10>を完了しました。クエスト内の行動により【投擲Lv9】のスキルが上がりました。【投擲Lv10】及びクエスト内の行動により【狙撃Lv1】のスキルを習得しました』
いやあ、子供と遊ぶってこんなに楽しいとは。石投げの遊び1回ごとにクエスト発生なんて最高ですか?
俺がハイネちゃんに連れられて教会の中庭へ移動すると、そこにはやんちゃを絵にかいたような男の子たちが待ち構えていた。そして俺が来ると早速に石投げ大会が始まる。
遠くに立てた空き缶に石を投げ、缶に当てて弾き飛ばすというだけの単純なゲームだったが、なんと子供から石を渡された時にまさかのクエスト発生。
どうやら勝負は1回勝負だったらしく、全員が投げてひと勝負が終わるとクエスト完了。いきなり【投擲Lv1】を習得する。で、再び渡される石と、クエスト発生のアナウンス。そのまま2回戦を終えると【投擲Lv2】に。で、今、第10回戦が終わったところで【投擲Lv10】となり、新しいスキル【狙撃Lv1】というものを習得した。
勝敗? もちろん全敗ですよ。だってこの子たち、ハイネちゃん以外は1回も外さないんだから。大きいお兄ちゃんなんか空き缶を壁まで弾き飛ばしてるし。俺なんて初めは缶まで届かなかったっていうのに。
まあ、そんなことよりも新スキルですよ。
「ごめん、おにいちゃんちょっとだけきゅうけい」
「ええー、しょうがないな。ちょっとだけだぞ。やすんでばっかりいたらつよくなれないぞ」
「うん、ごめんねー」
壁に寄り掛かってステータス画面をチョイチョイ。
【投擲Lv10】
物を投げることで習得するスキル。
レベルにより投擲の射程距離と精度が上がる。
ただし、威力は投擲物とその重さ、自身の筋力に依存する。
【狙撃Lv1】
極小なもの(筋力1で投擲可能なもの)を規定回数投擲し、【投擲Lv10】を満たした際に習得するスキル。
極小なものであれば、【投擲】スキルの射程距離と精度、威力が大上昇する
レベルにより射程距離、威力がさらに増す。
「ちょっ、ごめん。やっぱりもう1かいやろう」
「なんだよ、10れんぱいしたからもうやりたくなくなったんだとおもったぜ」
「やっぱりたくさんやらないとうまくなれないからな。よし、いくぞ」
そして俺は子供から手渡された小さな石粒を親指で弾く。弾かれた石粒は的になっていた空き缶を貫通して奥の木に深くめり込んだ。
「……」
「……」
子どもたちが一斉に口をあんぐりと開けて固まった。
「おまたせしました、スプラさん……って、何かありました?」
…
…
「そうですか、子供たちと石投げをしてくださってたんですね。ありがとうございました。」
1時間、夢のような石投げクエスト11連を過ごした上に、ステラさんからとても感謝されてしまった。
「いえいえ、こちらこそとても《《有意義な》》時間でした」
「あれから子供たちが石投げに夢中に取り組んでるんですよ。ものすごく熱心に」
「あ、そ、そうですか。また、機会があったら遊んであげよっかなあ、なんて」
もし、死に戻ってしまう事があったら是非ともお願いしたい。あ、いや、フラグを立てるのは止そう。ほんと嫌だから。
「もう、ぜひお願いしますね。あ、それで配達のことなんですが、先の2件に加えてもう2件増えても大丈夫でしょうか?」
「はい、もちろんいいですよ。逆にありがたいくらいです」
なんせ、その追加の2件で【配達Lv10】達成できそうですからね。どんどん行きましょう。こういう時は勢いがね、大切ですよ、うん。
「そうですか、そう言っていただけると助かります。ではまず追加分が急ぎになるんですが、こちらの聖水5本を薬屋のマジョリカさんのところへ持って行ってほしいんです」
「マジョリカさんにですか? この前届けたばかりだったような…」
「はい、何でも急に必要になったとのことで」
あ、ああ、アレか。ネギ坊のアレね。早速始まってるのか。そりゃお急ぎでしょうね。
「そうですか、わかりました。急ぎで行ってきますね」
「あとはマークスさんにこちらの物を」
ステラさんはそう言って大きめのバスケットを出してきた。ピクニック用か?
「こちらは?」
「え、あ、その。いつもお世話になっているマークスさんにちょっとした食べ物を作ったのでそれを届けてほしいんです」
へえ、食べ物ねえ。へえ。
「わかりました。ただ、1つお願いがあるんですが、配達は同時にではなく1件ずつ終えていきたいんですが可能ですか?」
「1件ずつですか? わたしは構いませんが、スプラさんが面倒では? ついでに行ける場所ですのに」
それがうちの【マジ本気】ったらクエスト終了ごとに【配達】をレベルアップさせるものですから。【勤勉】スキルでパワーアップしちゃってから手が付けられなくて、すみませんねえ。
「いえ、1件ずつの方がありがたいんですよ。配達時間はだいぶ速くなりましたからご迷惑はおかけしないと思いますので」
「迷惑だなんて… 配達していただけるだけでも助かってますのに。では、まずマジョリカさんのところからお願いしても?お急ぎのようでしたから」
「はい、わかりました」
俺は教会を出ると大急ぎで薬屋へ向かう。配達時敏捷+27の俺はすでにかなり速くなってきているので普通にプレイヤーを追い越して行く。2度見3度見されても一瞬で視界から消えていくからだんだん気にならなくなってきた。これはありがたい。
「スプラです」
「おや、早いね。ブルーゼリーがもう確保できたのかい?」
「いえ、ステラさんから配達を頼まれまして」
俺は聖水5本をカウンターへ置く。
「おや、もう届けてくれたんだね。ありがとうよ。じゃ、これを持っておいき」
マジョリカさんはそう言って受領書を書いてくれた。
「あの、マジョリカさん、立て込んでいるのに申し訳ないんですが、薬草の納品をお願いしてもいいでしょうか?」
「おや、薬草を持ってきたのかい。どれ、見せてみな」
俺は頭の上のネギ坊に【爆炎草】を千切ってもらってカウンターに置いた。パンと言う音がしたが聞かなかったことに。マジョリカさんの視線? うん、ものすごい圧がありましたよ。
本当は【毒毒毒草】も渡したいんだけど、千切ったアレ触ったらヤバそうなんだよな。あのボーナスステージの強そうな黒犬が一撃だったもん。流石にその勇気はない。まあいつか俺も【劇物取扱】を習得したらチャレンジしてみよう。今は、この【爆炎草】だけでいい。きっと高額なはずだ。これで装備購入でぶっ飛んでしまった所持金を回復するのだ。
「…スプラ、これをどこで手に入れた?」
なぜかマジョリカさんが獲物を見る猛禽類の視線が俺を射抜いてきた。
あれ? お金マークの目になるはず…あれれ?
マジョリカさんは目を細めて【爆炎草】を見つめている。快癒草の時とはちょっと違った張り詰めたような表情だが。
「この前と同じ東地区の路地で見つけましたが、何か?」
「はあ…、彼処の住人は一体何なんだろうね、ったく。快癒草に続いてこんな物まで… 残念だが、スプラ、これは買い取れないよ」
「え? そうなんですか。実はまた高額なんじゃないかと期待したんですけど」
「まあ高額っていや快癒草よりも高額なんだがね。この【爆炎草】は国の法律で個人間の売買が禁止されているんだよ」
ぐ、まさかの御禁制扱いだった件。…ネギ坊、お前の右腕は王国御禁制植物に指定されてるぞ。
❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖
だー、問題起こすなって言ってるだろ!
まあ、しかし子供と遊ぶクエストなんて教会の無償ボランティアのはずだったしな。
まさかマジ本気とシナジー起きるなんて。
くっそ、HNがこの段階で心開くなんて計算できっかよ。
こりゃ、あと演算チップ2つは増やさねえとだな。
しっかし【狙撃】かあ、小僧、こりゃ本格的な攻撃能力持っちまったか。よし、それならさっさとブルースライム狩って美容液作りやろうぜ、な。
…
MJよ、そこは爆炎草を回収して欲しかったが…ま、できねえよな。お前の権限越えてるもんな。
小僧使うなよ。絶対に使うなよ。ホントだぞ。ホントに使うなよ。
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◇達成したこと◇
・子供と遊んで習得【投擲Lv10】【狙撃Lv1】
・マジョリカに【爆炎草】の買い取りを断られる
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
職業:中級薬師
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1(+5)
敏捷:1(+16)
器用:1
知力:1
装備:ただのネックレス
:聖魔のナイフ【ドロップ増加】
:仙蜘蛛の道下服【耐久:+5、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気)】
:飛蛇の道下靴【敏捷+16】
:破れシルクハット
固有スキル:【マジ本気】
スキル:【正直】【薬の基本知識EX】【配達Lv6】【勤勉】【逃走NZ】【高潔】【依頼収集】【献身】【リサイクル武具】【採取Lv10】【採取者の勘】【精密採取Lv3】【調合Lv1】【匙加減】【投擲Lv10】new!【狙撃Lv1】new!
所持金:少額
称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】
従魔:ネギ坊[癒楽草]
◎進行中常設クエスト:
<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>
●進行中特殊クエスト
<シークレットクエスト:万事屋の悩み事>
<エクストラ職業クエスト~マジョリカの愛弟子>
〇進行中クエスト:
<クエスト:武器屋マークスの個人的な依頼>
◆契約◆
名前:ネギ坊
種族:瘉楽草[★☆☆☆☆]
属性:植物
契約:スプラ(小人族)
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1
敏捷:0
器用:1
知力:5
装備:【毒毒毒草】
:【爆炎草】
固有スキル:【超再生】【分蘖】
スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】




