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第316話 ドワーフ兄弟の実力

「なんじゃ、この珍妙な草は」

「しかも、変な気配がするぞい」


 ガガンさんとダガンさんが俺たちが運んできたキンチュウを見てはしゃいでいる。だが、ダガンさんには警戒心も見られる。ほんじゃ、ここはガガンさんにやってもらおう。


「ガガンさん、こっちの葉っぱに手を置いてみてくれますか?」

「ん? 手をじゃと? これでよいか……ぬおお、ネバネバしとる、なんじゃ、ぬおお、挟まれてしもうた」


「うおお、ガガン、大丈夫か。この化け物、離さんかっ!」


 ダガンさんがすかさずハンマーを振り上げる。


「ダガンさん、大丈夫ですよ。こうすれば……ほら」


 キンチュウの葉っぱの裏側を指で突く。


パカアア


「おおおっ、開いたぞ。ぬおっ…よし取れた」


 ガガンさんがキンチュウの葉から手を引きはがした。でもその手にはネバネバ溶解液がべったりと付着している。


「ぐぐぐ、なんじゃこれは、気持ちが悪いのう」


 ガガンさんが手を強く振るが溶解液はねっちゃりとガガンさんの手にこべり付いている。


「ガガンさん、火で熱すると取れますよ」

「おお、そうか」


 急いで炉に火を入れて手に付いた溶解液を炙るガガンさん。しばらくするときれいさっぱり溶解液は蒸発した。


 溶解液が熱に弱いということはゼン爺から聞いたことだ。


「で、この草を持ってきて何をするんじゃ?」


 ダガンさんがガガンさんの手を見て確認しながら極楽発砲水を飲む。


「これであのすばしっこい飛蛇を倒せないかなと思って」

「なに、これであの飛ぶ蛇を倒す?」


「ええ、今やってもらったみたいにこの葉には溶解液がついててモンスターを捕まえて溶かす働きがあるんですよ」

「と、溶かす!?」


 慌ててガガンさんが自分の手をクルクル回しながらくまなく確認する。


「あ、そんな早くは溶けないので大丈夫ですよ。1分や2分では何も溶けません」

「そ、そうか」


 ガガンさんを安心させたところで、このキンチュウの置き場所を相談する。


「そうじゃの、あのすばしっこいのが一番来てほしくないのは……あそこかの、ダガン」

「そうじゃな、あそこしかないの、ガガン」

 

 二人が一致して示した場所。そこは2軒のマグマ工房の間だった。


「岩魔が飛んで来んように今は行政府にも城壁にも行っておらん。で、今あのすばしっこいのが来るのがここなんじゃ。ダガンに会いに行く時にチョコチョコ出て来てかなわんのじゃ」


「じゃあ、そこに置きましょうか」



「兄ちゃん、どうだ? 来たか?」


「いや、まだ来ないな。クレオ上空からはどう?」

「うん、姿は全く見えないよ。1匹で来る? それとも群れ?」


「それはわかんない。普段は群れで行動するはずなんだけど、この街で見る時は1匹なんだよ」

「すばしっこいのが1匹だと上から見つけるのは厳しいかな」


「そっか。じゃあ、ナガちゃん休ませてあげて。視覚共有時間ももったいないし」

「オッケー」


 マグマ工房の間にキンチュウを置いてから10分。俺は癒楽房から【眼通力】で、クレオは上空からナガちゃん経由で様子を見ていたんだが、飛蛇は一向に現れない。


「はい、クレオ、種渡しとく」

「ありがと。いつか返すからね」


 ただ様子を見ているだけでは退屈なので、【採種】をしながら見ている。10分で20個の種ができたのでクレオに渡しておく。


「返すのはお金じゃなくてもいいからな。ナガちゃんの活躍の噂が広まったら星獣持ちが帰って来るかもしれんし。俺としてはお金よりそっちの方がありがたいから」

「でも、それだとわたしに得しかないからさ。なにかで返すよ」


「んー、じゃあ、ナガちゃんに体で払ってもらおうかな」

「あ゛?」


 女子力ガン積みのクレオからドスの効いた言葉が漏れる。こういうのも俺にとっては女子力に上積みされるんだよな。


「いや、ただナガちゃんに肩に乗ってもらって種あげたいだけ。あのちょっとだけ羽毛がほっぺをかすめてく感じが至福だからさ」

「あ、そういうことね。それならもっと触って撫でまわしたらいいのに」


「いや、ナガちゃんに嫌われたくないから…おっ、来た! 飛蛇が来たぞ!」


 たわいのないやり取りをしていたら飛蛇が1匹飛んできた。そのすぐ後にタイミングよくマグマ工房から出て来るガガンさん。飛蛇は瞬時にガガンさんの背後に移動して静かに攻撃の機会を窺っているようだ。


「ん? なんだ?」


 ガガンさんの背後で無音のホバリングを続けていた飛蛇が急に落ち着きがなくなる。ガガンさんへの集中が切れ、チラチラと別方向の様子を窺うようになった。その先にあるのは……キンチュウ。


「おおっ、飛蛇が引き寄せられていく」


 チラチラとキンチュウを見ていた飛蛇が、我慢しきれなくなった様子でジワジワとキンチュウに近づいていく。そして溶解液がべっとりと滲み出る葉っぱの上にとまると、脚と羽がくっついて取れなくなる。そしてそのままキンチュウの葉っぱが閉じていき飛蛇は完全に挟まれてしまった。


「キンチュウが飛蛇を捕まえた! 行こう!」




 ピギピギ ブブブ ブブブ 


 飛蛇が羽音を響かせるが、粘液が泡立ちその音も飲み込まれていく。



「ほう、こりゃまた気持ち悪いの…」

「モンスターのことを哀れに思うのは初めてじゃ」


 力なくキンチュウの葉っぱに挟まれる飛蛇を見てがガガンさん達が顔をしかめる。まあ、確かに気持ち悪い状況だし、少しだけ飛蛇が可哀そうにも見える。だが、コイツのせいでこの街が壊滅したのも事実。ここは心を鬼にする。


「これで飛蛇対策はいけそうですね。じゃ、どんどん持ってきますから、飛蛇はキンチュウたちに任せて北の壁をやりましょう!」


「そうか、ではわしらはわしらの準備をするかの、ガガン」

「そうじゃな、ダガン」


 ドワーフ兄弟がお互いを見合って口元を緩ませる。なんだ?





「はい、じゃあ、チッチャーネさん、ここにこれくらいの間隔で並べて行ってください」

「よし、わかったあ」


 デッカイとオッキイが引くリヤカーから鉢植えされた食虫植物を取り出して並べていくチッチャーネさん。2mある食虫直物たちも大きなチッチャーネさんが持つと普通の観葉植物に見えてしまう。


 北の壁の外側1mのところに2m間隔でキンチュウ、アースン、マキラ、マルサンが置かれていく。


 ちなみに獣菌鉢は癒楽房でレシピから簡単に量産することができた。レシピからだと品質は下がるが、まあ今回は問題ないだろう。



「じゃあ、今日はここに50mの城壁を作っていきましょう」


「よし、ではダガンよ、アレをやるぞい」

「ああ、ガガン、一つドワーフの力を見せつけるかの」


 ガガンさんが巨大ハンマーをを担いで壁の建設予定地に移動すると、ダガンさんも同じように巨大ハンマーを肩に乗せて移動していく。10mほどの距離を空けて互いに向かい合う。


「では、やるぞ。3,3,1」


「「ドカタル家槌術【双想顕現】!!」」



ドーーーーーーーン



 ガガンさんとダガンさんが全く同じ体勢を保ち、全く同じタイミングで同じ巨大ハンマーを振り下ろす。同時に大地に叩きつけられた巨大ハンマーは、全くズレることなく一つの轟音を辺り一帯に響き渡らせた。



ガガガガガガガガガガガ……



 数瞬の後、轟音の小さな反響が未だ残る中、地面が振動を始める。そしてその揺れは時間とともに大きくなり、立っていられないほどの揺れとなると、今度は地の底から岩が避けるような音が聞こえ、二人の間の地面が盛り上がる。


 ガガンさんとダガンさんはハンマーを打ち付けたまま全く動かない。だが、二人の見開かれた目は薄緑色に光を放ち、盛り上がる地面の中央一点に注がれている。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……



 重苦しい地響きが続き、地面はさらにせせりあがる。そしてその高さが15mほど、4階建てビルの高さになったところでようやく止まる。



 パラ パラパラ パラパラパラパラ ゴロゴロゴロ



 せせり上がりが止むと今度はその隆起した地面の表見がパラパラと剥がれ落ちていく。ところどころの大きな石も落ちていき、徐々にそれは姿を現す。


 すべての不要物が剥がれ落ちた時、そこには高さ14m程の巨大で美しい城壁が誕生していた。



「どうじゃ、これがドワーフの力じゃぞ、スプラ」

「そうじゃぞ、一気に作り上げられるのは異人だけではないということじゃ」


 ダガンさん、ガガンさんが肩で息をしながらドヤってくる。しかし、これだけ大迫力な場面を見せられてはただただ感嘆するしかない。やっぱ、ドワーフってスゲーわ。だが……


「ガガンさん、ダガンさん、岩魔来ます!」


「はっは、特別頑丈にしてやったからの、岩魔の2体や3体ではびくともせんわい」

「ふん、この城壁に触れる前にわしがガツンと弾き返してやるわい」


 ダガンさんが城壁の外側に仁王立ちする。だが、俺の危険察知が異常事態を知らせて来る。


「岩魔来ます! その気配、およそ10体!」


「な、10体じゃとーー!!」

「ムガン様、それは反則じゃー!!」


 慌てて城壁の裏に身を隠すドワーフ兄弟。じゃあ、今度は俺たちの番ってことだな。


 俺はリュックからそっとチク坊を取り出す。



『チュ?』



❖❖❖レイスの部屋❖❖❖


「先輩、スプラさんが例の新種を飛蛇対策に使うようですよ」

「んー、ま、まあ街の中だけでやる分には大丈夫だろ」


「おお、見事に飛蛇が捕食されました。こんなのをもし外に出ちゃったら生態系に激震が走りますね」

「そうなりゃアマデウスの嬢ちゃんとコリンズは冷や汗ものだろうな」


「え、先輩、他人事っすか?」

「まあ、よく考えたら、生態系も、環境バランスもちゃんと担当がいるんだしな。俺はあくまで小僧のいい絵を撮るカメラマンに過ぎん」


「へえ、そうなんすね……あ、ドワーフがあんな技を繰り出してますけどカメラマン的には美味しい絵ですよね」

「あああああーーっ、こんな小僧にしか再現性のないもん使える訳ねえだろ!」


「家名持ちドワーフが信頼度MAXで使う固有スキルですもんね」

「コラーーーッ!! DN、GN!! お前ら酒で信頼度持ってかれてんじゃねー。お前らが本気出したらバランス崩壊するだろが!!」


「うわ、来た!ゴーレム10体っす。MNの方もやばいっすね。信頼度逆張りっすから、相当ヘイト溜めてますよ」

「小僧にとっちゃ相性最悪の精神異常だもんな……ん? なんだ、小僧、何する気だ? 早まるなよ、早まるんじゃないぞ…」


「あ、これはスプラさん、やらかす流れっすよ、先輩」

「小僧、駄目だぞ! やるなよ! やるなよ! 絶対やるなよ!」


「(先輩、それは人間世界では“やれっ”ってことっす……)」



―――――――――――――

◇達成したこと◇

・キンチュウの対飛蛇の実用化成功

・食虫植物を北の街にどんどん運び込む

・ドワーフ兄弟の【双想顕現】に感動する

・岩魔10体を察知

・チク坊を取り出す



◆ステータス◆

名前:スプラ

種族:小人族

星獣:アリオン[★☆☆☆☆]

肩書:マジョリカの好敵手

職業:多能工

属性:なし

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:1

耐久:1(+33)

敏捷:1(+53)

器用:1

知力:1

≪武器≫ (決断の短刃─絆結─)※筋力不足

≪鎧≫ 仙蜘蛛の真道化服【耐久+33、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気・粘着)】

≪足≫ 飛蛇の真道化靴【敏捷+53】

≪アクセサリー≫ 道化師の自然派キャリーセット


◆固有スキル:【マジ本気】

◆スキル:

特殊──【逃走NZ】【危険察知NZ】

保有──【品格】【献身】【騎獣術】【依頼収集】【念和】【土いじり】【熟達の妙技】【眼通力】【薬草の英知】【劇毒取扱】【特級毒物知識】【独り舞台】【鉱物学】【超速読】【解読術】【土壌知識】

成長──【秘薬Lv10】【石工Lv10】【配達Lv10】【一夜城Lv10】【投擲Lv10】【狙撃Lv10】【料理Lv10】【コーチングLv10】【カッティングLv10】【融合鍛冶Lv6】【散弾狙撃Lv5】【解析鍛冶Lv4】【特殊建築Lv4】【高級料理Lv4】【魔力操作Lv4】【ルーティンワークLv3】【採土Lv3】【極意の採取Lv2】【上級採掘Lv1】【瘴薬Lv1】【レザークラフトLv1】【裁縫Lv1】【空間描画Lv1】【コスパ料理Lv1】

耐性──【苦痛耐性Lv3】


◆所持金:約4540万G

◆従魔:ネギ坊[癒楽草]、チク坊[護針獣]

◆称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【不思議ハンター】【不思議開拓者】【巨魁一番槍】【開拓者】【文質彬彬】【器用貧乏】



■【常設クエスト】

<定期納品:一角亭・蜥蜴の尻尾亭・腹ペコ熊の満腹亭……>

■【シークレットクエスト】

<太皇太后の想い> 第二の街復興と独立国家建設

・行政府 0/1

・鍛冶工房 3/2

・薬房 1/2

・住居 0/10

・城壁 北側に10メートル



◆星獣◆

名前:アリオン

種族:星獣[★☆☆☆☆]

契約:小人族スプラ

Lv:20

HP:310

MP:445

筋力:48

耐久:46【+42】

敏捷:120

器用:47

知力:69

装備:

≪鎧≫ 赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鞍【耐久+12】

≪アクセサリー≫ 赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

◆固有スキル:【白馬誓魂】

◆スキル:【疾走Lv8】【足蹴Lv2】【噛み付きLv3】【水上疾走Lv1】【かばうLv10】【躍動】【跳躍Lv3】【二段跳び】【守護Lv10】



◆従魔◆

名前:ネギ坊

種族:瘉楽草[★★★★☆]

属性:植物

契約:スプラ(小人族)

Lv:1

HP:10

MP:10

筋力:3

耐久:3

敏捷:0

器用:6

知力:10

装備:

≪葉≫【毒毒毒草】

≪葉≫【爆炎草】

≪葉≫【紫艶草】

◆固有スキル:【超再生】【分蘖】

◆スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

◆分蘖体:ネギ丸【月影霊草】ネギ玉【氷華草】ネギコロ【天雷草】


名前:チク坊

種族:護針獣[★☆☆☆☆☆]

属性:依存

契約:スプラ(小人族)

LV:1

HP:20

MP:410

筋力:5

耐久:4

敏捷:14

器用:12

知力:14

装備:なし

固有スキル:【僕を守って】■■■■

スキル:【逃走】


名前:ペン坊、ミケ坊、タツ坊(岩っ子班)

種族:岩魔[★☆]

属性:岩

契約:スプラ(小人族)

LV:1

HP:555

MP:33

筋力:255

耐久:255

敏捷:3

器用:3

知力:3

装備:なし

固有スキル:【岩食】

スキル:【叩き潰しLv1】



◆生産セット◆

・大地の調合セット



◆特殊所持品◆

・魔剣の未完成図面



◆所有物件◆

・農屋

・野菜畑(中)、フルーツ畑(小)、食虫植物畑(小)

・癒楽房(格式Ⅲ)

・極凰洞



◆契約住民◆

・ミクリ【栽培促進】

・ゲンジ【高速播種】

・チッチャーネ【味見】【原種進化】

・デッカイ【益虫使い3】&オッキイ【益獣遣い3】


◆お手伝い◆

・ガガン【双想顕現】

・ダガン【双想顕現】

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― 新着の感想 ―
どうせ読み続けても最後に又スキルが消えたり人間関係がリセットになるんだろうなってよぎるんだよな
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